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うたかた  作者: たき
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隣の芝生(2)

姉は派遣会社に勤めていて、派遣スタッフと企業をつなぐ営業職をしていた。


結婚してもそれは変わらず、なかなかハードなスケジュールで仕事、家事、育児をこなしていた。

時々、保育園に私が2人に変わってお迎えに行くこともたまにあったが、極力姉は育児に手を抜かなかった。


「私は母親に慣れないかもしれないけど、家族にはなりたいから。」

と、本当にカナタくんを優先した。

優しくも厳しくたくましい姉にカナタくんは心を開いている感じだった。


ジュンタさんはのんびりしている感じではあるが、彼もカナタくんを大事にしているのがわかる。

正直、最初は姉がこの人のどこに惹かれているのかわからなかった。

姉の家に行くと常にいるのかいないのかわからないくらいふわふわした感じの人で、大丈夫か心配になった。


ある日、カナタくんが友達と喧嘩をしてケガをして帰って来た。

その日の夜に相手の母親がかなりの剣幕で家に訪問しに来たとき、カナタくんの話をしっかり聞いて、


「一方的にこちらが謝るのは違いますね。確かに手を出したのはこちらが先だったようですが、私達が本当の父親、母親ではないのがおかしいとからかったとカナタが言っています。」

そうジュンタさんが言ったのを、たまたまカナタくんのお迎えをして姉の家にいる時に聞いた。


「手を出したのはそちらなんですよね。謝らないのはおかしいですよね。」

と、その母親が言った際にも、


「手を出したことは謝ります。」

と、頭を下げた。


カナタくんがなかなか謝らなかったので、


「ご家庭の環境が良くないんじゃないんですか?」

と、相手の母親が嫌味を言った。


「それはどう言った環境の事でしょうか?」

相手がかなりヒートアップしているテンションに比べて、ジュンタさんは冷静なトーンで話す。


「本当の親子では…両親とも違うって伺っていますが…。それはちょっとね…。」

その人はかなりイライラしているのがわかった。

私も正直聞いていて腹が立った。

カナタくんのいる前でする話でもない。


「確かに違いますが、私はカナタを大事にしていますし、妻も同じです。カナタには手を出したことは悪いことだと伝えます。ただ、人を貶めることは言わないし、しないようには日頃から伝えています。大人が子供の前で言って良いことと悪いことの分別はしていただけるとありがたいと思います。子供は良くも悪くも大人の真似をしますから。」

と、ジュンタさんは冷静な口調で話す。

そして、カナタくんに目線まで降りて、


「どんなに相手に嫌なことを言われたりされたりしても、手を出すことで相手も自分も傷つくんだよ。今回はカナタは手を出してしまったけど、ダメだと思う?ダメだと思うならどうしたらいいかな?」

と、尋ねた。


「ごめんなさい。ユウトくん、痛かったよね、ごめんなさい。」

と、カナタくんは泣きながら謝っていた。


相手の母親は居心地が悪くなったのか、


「謝るんならいいけど、あまりユウトに関わらないで。」

と、憤慨して出ていった。


私はちょっとスッキリしたし、ちゃんと父親なんだなぁ…と漠然と思った。


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