連理の枝(5)
私は少しの間、虚無感に襲われた。
実際、仕事をしていれば充実しているのだが、仕事以外は家に籠るようになった。
身体がだるく、休みは気がつくと終わっていた。
今日も起きたのは早かったが、起き上がれず既に昼過ぎになっていた。
「そろそろ起きよう…。」
ノロノロと身体を動かし、洗面所にいき顔を洗う。
洗濯機を回し、冷蔵庫を覗くとバターと牛乳、水くらいしか入ってなかった。
もともと料理はしないのでそんなものと思い、ギリギリ見れる格好で外に出た。
コンビニにするかスーパーにするか悩んでいたら、背後にドンッと衝撃があった。
「イチハ、不細工な格好だなぁ…。」
カナタが私にぶつかってきた。
「えっ、学校は?」
私が尋ねると、
「今日から春休み。」
もう、そんなになるのか…と思った。
年が明けて四十九日の法要があった時に会って以来、私は姉の家に行けていない。
仕事はそこまで冬は忙しくなかった。
むしろ今の方が忙しい。
ただ、体も気持ちも動かないでいる。
「だらだらしてるなぁ…今からどっかに行くの?いっても、どうせその格好じゃコンビニかスーパーだろ?」
カナタが話しかけ続ける。
「なんで、うちに来ないんだよ。シオリちゃんがいなくても、来ればいいだろ。」
カナタは少し怒りながら訴えていた。
私はどうして良いのかわからなかった。
姉がいないあの家に私はいて良いのだろうか。
姉が大事にしていた人達だと本当に思う。
私も大事だったが繋いでいてくれた姉がいない。
どう接して良いのか、時間が空くほどわからなかった。
「俺と父さんがイヤなのかよ…。」
私のシャツをクシャッと力なく握る。
「イヤじゃないよ。カナタもジュンタさんも大事だよ。」
私はシャツを掴んでいるカナタの手を握った。
「イチハ、また、ご飯一緒に食べよ。」
カナタは私の手を握り直した。
1度自宅に戻り服だけ着替えて、姉のレシピノートを持ってカナタとスーパーに行った。
最初は何を話せば良いかお互い言葉を探っていたが、スーパーに入って買い物をしていたら自然と話ができた。
「ひき肉って書いてあるけど…牛肉オンリー?豚肉との合挽き?」
私が悩んでいたらカナタが合挽きのパックをかごに入れた。
「シオリちゃんは合挽きで6:4の割合だったよ。」
カナタは姉と買い物をしていたのだろうと思った。
「いつも適当だった。牛肉だけだったり、合挽きだったり…さすがに鶏って選択肢はなかったけど…。」
とりあえず、こねて焼けば良いと思っていた。
「イチハ、本当に料理しないからなぁ…。」
カナタが笑っていた。
私達は少しずつ話すペースがスムーズに戻っていた。
付け合わせのいんげんとニンジンや卵とパン粉と牛乳を買って、スーパーを出た。
夕方にはまだ早い感じの時間で人がまばらな状態の歩道を2人並んで帰った。
だんだん春になっているのか日差しが暖かかった。




