連理の枝(2)
その日の夜遅く、ジュンタさんから連絡が入った。
姉が危篤で家族に来てもらいたいとの事だった。
急いでタクシーを呼び、準備をする。
カナタくんを起こし、両親と一緒に病院に急いだ。
暗い廊下を急ぎ、姉の病室に近づくと看護師がバタバタと急いでいた。
病室に入ると姉は眠っていた。
正解に言うと動かず、横になっていた。
その隣でジュンタさんが手を握りながら何かに祈るように力なく座っている。
父も母も姉の側に寄り、腕や頬をさすっている。
「…シオリ…シオリ…。」
母は消え入りそうな声で泣きながら姉の腕をさする。
父はその母を支えるようにして、姉の頬に手を置いた。
私はあまりに気持ちが追い付かず、足がすくんだ。
「イチハ、シオリちゃんの近くに行こう。きっと、イチハの事待ってるから。」
カナタが私の手を引き、姉側まで誘導した。
動かない姉を見て私はただ静かに泣いた。
姉は明け方静かに息を引き取った。
雨とも雪とも言えないボタボタとしたみぞれが窓に当たって、水滴になりこぼれ落ちる。
窓際に行き、手で1度窓のくもりを払う。
姉は病室でキレイにしてもらっている。
母は小さくなり泣いていて、父は手続きをしにその場を離れた。
ジュンタさんは泣き腫らした目を眼鏡で隠し、カナタと手を繋いで立っていた。
カナタは今まで我慢していた分、激しく泣いていた。
一通り帰る準備ができ、病院を後にする。
私は憔悴しきった母を父と支え、姉の家に向かう。
耳が塞がったようにすべての音がくぐもって聞こえる。
「お母さん、私、仕事に行ってくるね。今から準備する。」
私は姉の家に着くと洗面所に向かい、顔を洗った。
「休めないの?」
母は私の背中に声をかけた。
「今日も結婚式があるから。私が手伝ってもらいながらだけど、担当している方の式だからちゃんとしないと。お姉ちゃんに怒られるよ。」
私は止まってしまったら動けないような気がして、急いで準備をした。
リビングの横にある和室で姉は横たわっている。
「イチハ、シオリにお化粧してあげて。」
母が私にそう言った。
まだ余裕のある時間。
泣いてもまだ大丈夫な時間があった。
目の下のクマに薄くコンシーラーを塗り、薄くファンデーションをつける。
淡いオレンジとピンクのチークをふんわり頬にのせた。
眉頭はパウダーで書き、眉尻はペンシルで少しだけ足した。
ベージュに近いブラウンで自然に見えるよう瞼をなぞった。
筆を動かす度に、涙が目に溜まるのがわかる。
リップを塗ろうとしたら、
「イチハちゃん、ちょっと待って。」
と、ジュンタさんが私の横に座った。
「最期に良いかな?」
彼はそう言うと姉と唇を重ねた。
泣き腫らした目からまた涙が溢れていた。
「シオリさん、ずっと愛してるからね。」
彼は姉の耳元で囁いた。
私は彼に口づけをされた唇に淡い色のリップを付けた。




