連理の枝(1)
姉は頑張っているものの、衰弱しているのがわかる。
頑張ると言いながら、姉自身鼓舞しているのだと思う。
「年明けには2分の1成人式が学校であるんだって。早いね、シオリさん。」
ジュンタさんは優しく話しかける。
少し前にかなり痛みがあり、麻薬を調整してもらい姉は少しだけ穏やかに眠っている。
立って歩くことも難しくなり、一日の大半ベッドで横になっている。
「一人一人発表するんだよ。カナタ、張り切ってるからね。シオリさん、体調良くて許可が出たら一緒に見に行こうね。」
少しだけ未来の話を希望なのか祈りなのか、ジュンタさんはゆっくり優しく話している。
私は時々泣きそうになり、その度に病室から離れた。
「イチハ、シオリちゃん、今少し起きてるよ。」
カナタが病室の外にいる私に声をかけた。
私は何とか気持ちを落ち着けて病室に戻る。
「イチハ、カナタ、遅く…ならないうちに…気をつけて…帰りなさいね…。寒いから、暖かく…しなさ…いね。」
姉は息苦しそうに体全体で息をしながら、声を何とか絞り出していた。
そんなときですら私達の心配ばかりする姉に、
「シオリちゃん、イチハはちゃんと連れて帰るから心配しないで。明日もまた来るね。」
カナタは気丈に答えた。
何も言えず姉の手を握る私の手を取り、病室を出た。
「父さんと2人にしてあげて。」
カナタは私の顔を覗きながら、少しだけ笑う。
「きっと今日も遅いと思うから、先にご飯食べとこ。イチハ、大丈夫?」
私の手を握り、私を見上げる。
「手、恥ずかしいんじゃないの?」
私はカナタに話しかける。
「今はいいの。イチハがちゃんと歩けないから引っ張ってるだけ。」
うつ向きながら彼はそう言うと、早足で歩き始める。
私に出来ることをするしかない。
「早く帰ろう。コンビニでおでん買おう。」
私は少しでも姉に安心してもらいたい。
週末は両親が泊まりでこっちに来る。
姉の体調がかなり悪くなり、出来るだけ長く側にいれるよう姉の家に両親が泊まっている。
ジュンタさんと順番に休みながら姉の側にいるみたいだ。
この1ヶ月くらいそんな感じで家族が常に緊張している状態で、特に母は参っていた。
私も仕事を終えると姉の家に行き、母の側にいた。
「お母さん、少しでも寝て。連絡あったら起こすから。」
仕事終わりで姉の家に行くと、夕ごはんの片付けをしている母がキッチンにいた。
「イチハもご飯食べるでしょ。」
母がひどく疲れているのがわかる。
「自分で出来るから、少しでも横になってて。片付けもするから。」
私が母を休むように促す。
「何かしてないと落ち着かないから。父さんはカナタくんとお風呂に入ってるからね。そろそろ上がって来ると思う。」
そう言いながら、私のご飯の準備をする。
私は母にかける言葉が思い浮かばなかった。
会話のないリビングにテレビから漏れる音がひどく耳についた。




