隣の芝生(12)
時々、ジュンタさんが私を送ってくれた。
姉が彼を好きなのがなんとなくわかる。
彼は本当に穏やかで人に寄り添って行動をする。
人の事を優先してしまうため、時折、仕事で振り回されているようだが、それを彼は嫌と思っていないようだった。
「イチハちゃん、いつも本当にありがとう。休みに毎回大丈夫?仕事もまだ始めたばかりで疲れてるんじゃない?」
ジュンタさんは私に話しかける。
「お姉ちゃんに会いに行くのは私がしたいからしてるんですよ。お姉ちゃんのために何かしたいんで、気にしないでください。仕事は大変ですが、やりたいことが出来ているので、今のところ楽しいです。」
私はジュンタさんに答える。
「そう言うところはシオリさんに似てるね。シオリさんも楽しそうに仕事をしていたから。なんか…だね。」
ジュンタさんは少しだけ目を細めた。
「ジュンタさんの方は大丈夫ですか?」
私は少しジュンタさんの顔を見た。
薄暗いせいなのか少し疲れているように見える。
「まぁ、大丈夫ではないよ。シオリさんが大好きだからね。不安がないわけではないけど、シオリさんに会うときは時間を大切にしたいと思ってる。ただ、純粋に彼女の事を思っていたいんだよ。その時間はね。体の方はぼちぼち大丈夫。」
切なそうにポツリポツリ話す。
その横顔が切なかった。
姉を想いその気持ちを大事にしている彼をすごいと思った。
強く純粋に想われている姉が羨ましくもある。
姉は美しく、強く優しい。
迷ったり悩んだりしたら姉にいつも相談に乗ってもらっている。
その度に私は自分がごく普通で姉には敵わないと思っている。
「お姉ちゃんは幸せですね。ジュンタさんがちゃんと思ってくれて、本当に幸せだと思います。」
私はジュンタさんの背中に呟いた。
大事にお互いを想い合っていることが、私には嬉しくもあり羨ましくもあった。
「シオリさんは僕にとっては本当に大事な人だから、幸せであって欲しい。その瞬間まで幸せにしたい。」
彼はある程度覚悟をしているのだと思った。
私にはまだその覚悟はない。
夏になり、ブライダル業界は少しだけ閑散期に入る。
全くの暇ではないけれど春に比べると少しだけ落ち着く。少しずつ仕事を覚えてきて、楽しさも大変さも痛感していた。
最近は姉の体調がさらに不安定になり、しゃべるのもままならない日が増えた。
休みはできる限り会いに行った。
「この前仕事でお客様についてもらって良かったって、初めて言われたんだよ。サポートがメインだったんだけど、対応を誉められて、式もすごく良かった。」
私は寝ている姉に報告した。
以前に来たときより様々な管が増えて、呼吸も補助してもらっている。
「…イチハ、楽しそうで…良かった…。イチハが羨ましいな…。イチハみたいに素直にもっとしたかったな…。頑張って、頑固なところが私にはあるから…。」
姉はそう言うとまた、目を閉じた。
少しだけ姉の目尻に涙が溜まっている。
私はそれをゆっくり拭った。




