第4話
加速に伴う肉体の負荷。
高速で過ぎ去っていく景色。
機体から伝わる激しい振動とエンジンの音。
戦場に来たという感覚が俺に歓喜をもたらす。
「ハッハー! 最高の気分だぜ! このままクソッタレの魔術師どもをぶち抜いてやる!」
『ハイク・ヒーデルト二等兵。あなたは作戦行動から逸脱しています。補助機能の破壊も許可されていません』
ルイナの生意気な発言に俺は苛立ち、半壊した液晶画面に何度も蹴りを入れた。
「クソ野郎が、俺に、指図、すんじゃ、ねえッ!」
『落ち着いてください。あなたは冷静さを欠いています。任務遂行のためにはまず――』
「そもそも俺の名前はライド・ノートンだ! 何度も間違えるんじゃねえよッ!」
怒鳴った直後、俺は肌のひりつきを感じた。
殺意だ。
誰かに狙われている。
長年の経験で培った察知能力は、ここが既に殺し合いの場であることを示していた。
「魔術師だ。来やがったぞ」
『それは勘違いです。索敵センサーには何の反応もありません』
「うるせえッ! 俺には分かるんだよォ!」
俺は言い返しながら射撃を開始した。
何もない空間で血が弾けた。
穴だらけになった魔術師が回転して落ちていく。
ルイナは平坦な口調のまま謝罪した。
『最新式の隠密魔術ですね。判断を誤りました。申し訳ありません』
「気にすんな。失敗は誰にでもある」
突如、前方に魔術師の軍勢が出現する。
何らかの術で隠れていたのだろう。
連中は俺を包囲するように飛行し、こちらの迎撃に注意しつつ距離を詰めてくる。
『待ち伏せです。総数はおよそ二百。こちらの作戦が漏洩していたようです』
「情報戦ではよくあることだろ。構わず皆殺しだ」
『無謀です。味方機との合流を優先してください』
「指図すんなって言ったろ。こいつらは俺の獲物だァッ!」
俺は魔術師どもへの攻撃を始めた。
飛んでくる術を躱しながら奴らを蜂だらけにしていく。
放つ弾は俺の知るものより威力が弱いが、それを補うように射撃スピードが高い。
魔術を弾く防壁や囮弾も搭載されており、なかなか面白い性能だった。
俺は窓を叩いて大笑いする。
「ハハッ! 意外と小回りが利きやがる! 実験機も悪くねえなあ!」
『撃墜数五十を突破――判断力、反応速度、操縦技術いずれも測定不能。新兵のレベルを超越しています』
「当たり前だろうがっ! 俺は世界最強のパイロットだ!」
そうして俺は魔術師の部隊を殲滅すると、ついでに奴らの基地を爆破してから悠々と帰還した。