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【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

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女性が生きやすい環境づくり ㉔

「クレヴァーナ、お疲れ様」



 女性たちを救い出した後、カウディオからそう言って労わられる。

 今回の監禁されている女性を助け出そうとする行動は基本的に私は指示を出しただけだった。だから頑張ったのはどちらかというと、ドーデンたちだ。



「頑張ったのはドーデンたちだわ」

「そんなことないよ。そもそもこれだけの人が動いたのは君が行動を起こした結果だよ。『知識の花』と呼ばれるようになってもクレヴァーナはまだまだ自分のことを過小評価しているね」




 くすりっと笑ったカウディオにそんなことを言われる。




「そう?」

「ああ。少なくとも監禁されている者達が救われたのは君が居たからだ。クレヴァーナが気づき、そして君に助けるだけの力があったからだ。クレヴァーナが『知識の花』と呼ばれていなければ、『花びら』達が動かなければ、君が明確な指示を出さなければこんな風に事態が収束することはあり得なかった」



 真っすぐに私の目を見つめ、カウディオが続ける。

 その赤みがかった茶色の瞳が、私は好きだ。私を見つめるその瞳を見ていると、ドキドキする。




 彼の目は、いつだって私のことを信じている。

 ――君が望むのならばきっとなんにでもなれる。

 そう、あの日いってくれたのと、同じ視線。






「『花びら』達が才能を開花させ、活躍出来ているのも全てクレヴァーナの働きだ。君という存在が居なければ、埋もれたままの者達も多かっただろう。だからもっと、自分の行動を誇っていい。尤もクレヴァーナが自分自身を褒めないのなら、私が褒めるだけだが」



 そんなことを言われて、私は思わず笑ってしまった。




 カウディオの言葉はいつだって私の心にすっと入ってくる。私は昔よりも自分のことを正しく評価出来ていると思っていたけれど、カウディオからするとまだまだみたい。

 もっと私は凄い。私のおかげでこうなった。

 そんな風に思った方がカウディオにとっては嬉しいのかしら? でもそんな私を想像はなかなか出来ない。





「ふふっ」

「どうしたんだい?」

「自分を評価すると考えて、私が不遜な態度をしているのを思い浮かべてみようとしたの。例えば私のおかげで助かったなんて助けた人たちに言っていたら、ちょっと問題かなと」

「事実だから、何も問題はないだろう」

「本当に? カウディオが私にそういう言葉をかけ続けたら、私もそういう風になってしまうかもしれないわよ?」

「それならばそれで、新しい君の一面なだけだろう。それに例え不遜な態度に変化したとしても、クレヴァーナはクレヴァーナで、問題のある行動はしないだろう。それに……もし君が間違った方向に進みそうなら、私が止めるから」




 私の問いかけに、カウディオは相変わらずの涼しい顔で告げる。

 本当にそうなったとしても構わないと、心から思っているのだろうなと思う。




 カウディオは私ならなんだって出来ると、そう心から思ってくれている。そう、背中を押してくれるから私は今のように自信を持って行動を出来るのだなと改めて感じる。




 やっぱり私が今の私で居られるのはカウディオが居てくれるからだ。

 私が例え失敗しても、間違った道を進もうとしても――彼は私に手を差し伸べ続けるだろう。失敗したら、私の背を押す。間違った道に進もうとしたら、行動で私を止めようとする。

 ――それが分かるから、私は安心して、ただ自分のやりたいように行動が出来るのだ。





「ありがとう、カウディオ。……あなたのそういうところが私は、大好きなの」



 私は思ったことをそのまま告げる。




 ラウレータは、いつも私に「お母様、大好き」と笑いかけてくれる。その様子を見ていると、私ももっとカウディオに気持ちを伝えようとそう思って、こうやって伝えることも以前より多くなった。その度にカウディオは――嬉しそうに笑う。今も、私の好きな笑みを浮かべて、口づけを落としてくれた。

 改めて好意を伝えるのは恥ずかしい気持ちにはなるけれど、こういう顔を見られるならいくらでも伝えたいと思う。





「カウディオ、監禁されていた人たちに関しては責任を持って対応をする予定だわ。でもそれ以外に私はやりたいことがあるの」

「やりたいこと?」

「他にも同じような大変な目に遭っている人が居ないか国中を調べたいの。女性だけではなくて、男性も含めてね。こういう風に理不尽に自由を奪われている人が居るのなら、出来るのならばきちんと対応はしたいわ」




 私がそう言い切ると、カウディオは答える。







「君は本当に止まることを知らないね。でもそれがクレヴァーナらしい。私も国内でそういう人たちが居るのは問題だと思う。国の事業として調査を進める方がいいだろう」

「そうね。その形で進めるわ。それらの法整備を上手く出来れば……女性が生きやすい環境づくりも出来るだろうから。やることが盛りだくさんだけど、私、頑張るわ。だから、見ていてね、カウディオ」





 私がこれから成すことを、私が私を証明し続ける様を――カウディオに一番見て欲しいと、私はそう思っているから。



 私の言葉に、カウディオは頷いた。




 ――それから私は早急に国内の状況を、調べられるだけ調べた。それで自分が解決できる部分は解決し、並行して女性が生きやすい環境づくりや、こういう事態が起きないための法整備を進めて行ったのだった。

 後にこの行動によって、私は女性の躍進に貢献したとさらに勲章をもらうことになるのはその時の私はまだ知らない話である。


一旦『女性が生きやすい環境づくり』は此処で終わりです。

想像以上に長くなり過ぎたので、次話からは別の話になります。

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― 新着の感想 ―
ここまで来るとやっぱり祖国では咲かなかった花なんだなって思ったり
タイトル、女性が生きやすい環境づくり㉔でいいのでは?
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