表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/96

女性が生きやすい環境づくり ㉒

 その日の午後のうちにドーデンは人を連れて監禁された女性を救いに向かった。私は直接、その場にはいかない。



 私は自身で魔術を使うことはできない。魔道具を使えば役に立てる可能性はあるけれど、逆に足手まといになる確率の方が高い。やはりこういうのは得意な人がやるべきだわ。




 適材適所という言葉がある。

 一番適切な場所に人を振り分けられれば、それだけ素早く何事も終わらせられるもの。




 『知識の花』と呼ばれている私は、自分で表立って行動を起こすより解決するために人にお願いすることが多い。私一人だけでは手に抱えられる程度のことしか解決できなくても、誰かの力を借りたらこれだけ多くのことが出来るのだ。そう考えると本当に、人とのつながりというのは大切なものだわ。





 私はドーデンたちが行動を起こしている間、いつも通り過ごす。

 上手く行くだろうかという不安はないわけではない。だけれども――私はドーデンたちならば問題なく対応が出来ると信用している。もし難しければ追加で人をやるだけだもの。

 失敗した時の場合も考えて人材の手配も既に終えているわ。結果が分かるまでの間は別の作業をしてもらっているの。





 私は今、翻訳作業を進めている。

 単純に私はこの作業が好きだから、やらせてもらっているの。

 図書館に勤めていた時も行っていたことだけど、やっぱり言語に触れるのは楽しい。

 どんな言葉で翻訳をするかによってニュアンスも大きく変わってしまうから、そのあたりも考えて進めているわ。




 カウディオには。「クレヴァーナは『知識の花』と呼ばれるようになってもそういうところは変わらないね」と笑われたっけ。




 私自身は少しずつ変化はしているとは思っている。私が『知識の花』と呼ばれるようになって、様々なことは変わっている。ああ、でもそれでも――変わらないものは確かにカウディオの言う通りいくつもある。




 翻訳の仕事を私が今もやっていることは――時々、周りに驚かれることだ。

 そのような仕事は別の人に任せればいいとそんな風に言われたこともある。だけどそんなことを言われても私が好きでやっていることなのだ。それに……世の中に“そのような仕事”などと呼ばれるものは一切ない。

 どんな仕事を誰がやったって構わないと、少なくとも私は思っている。





 翻訳は、頭の中で組み合わせていくのが楽しい。

 それに私が翻訳した本を、どこかの誰かが――楽しんで読むというのを想像すると、それだけでなんだか面白いなと思ってしまう。




 『花びら』と呼ばれる子たちが他国で活躍するのも、私が翻訳した本が色んな人の手に巡り巡っていくことも――二つとも私の世界が確かに広がっていくことと言えるから。翻訳の仕事も私を証明する行動の一つなのよね。





 何冊かの本を、いくつもの言語で翻訳するという作業を並行して行う。

 同じ書籍の翻訳作業をするのに、別々にやったのでは時間がかかってしまうもの。それにこうやって複数の言語に翻訳する作業はより一層その言語への理解が深まる。

 その瞬間がまた楽しくて、ついつい時間を確認せずに熱中してしまったりする。




「クレヴァーナ様、ずっと部屋にこもっていたのでは身体に悪いですよ」

「あら、もうこんな時間なのね」




 心配した侍女に声をかけられ、時計を見て驚く。



 思ったよりも時間が経過していた。私がこうやって部屋にこもって作業をしてしまうことは度々あるので、時折こうやって侍女達が声をかけてくれるのだ。

 それにしてもまだドーデンは帰ってきてないわね。




 対応に時間がかかっているのかしら……?

 緊急の連絡が届いていないことからも上手くはいっているとは思うのだけど、どうなのかしら?




 私自身も監禁されている人を助け出すなどというのは初めてのことなので、どのくらい時間がかかるものなのかなどがぴんときていなかったりする。

 こういう状況が何度もあるものではないほうがいいけれど、対応にどのくらいの時間がかかったか、どんな想定外のことが起こったかなどの情報を纏めておけば後々役に立つと思う。




 ドーデンたちが帰ってきたら、まずは対応を行ったことを労わり休んでもらうことが先だけど……落ち着いたら色々確認を取りたいわね。




 私はそんなことを考えながら部屋を出て、気分転換に屋敷の中庭に向かうことにする。

 ずっと座りっぱなしだったから、少し歩いておきたかった。

 運動不足は体に悪いと知っているので、適度に身体を動かすことも怠らないようにしている。




 歩きながら手入れをされて綺麗に咲きほこっている花を見ると、自然と笑みがこぼれた。




 私が『知識の花』と呼ばれているのもあって、以前よりも庭に植えられている花は増えたらしいの。庭師の人達も、気合を入れて美しい花を咲かせているのだと聞くわ。

 あとは私やラウレータが花を見るのが好きだからというのもあるだろうけれど。

 そうしてしばらく花を見ていると――待ち望んでいた報告がようやく届いた。





 ドーデンは無事に対応を終えたようだ。とはいっても色々後処理があるから、本人が報告に来るのはもう少し後のようだけど。





 私は急ぎの報告を聞いて、一先ずほっとする。

 監禁されている人たちを助け出すという難しい対応を終わらせてくれたのだから、後は私が預かって対応をしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ