女性が生きやすい環境づくり ⑮
相談窓口の稼働が始まった。
告知に関しては大々的にしてもらっている。新聞に挟んでもらったり、あとは王都内でも有名な人通りのある場所で宣伝絵などを貼ってもらったり。
花びら達の人脈は凄くて、画家とつながりを持っている子もいる。私も花びらの子から紹介された画家に家族の絵を描いてもらったりなどもしている。
その画家の方に依頼をしたの。
魔道具を使って、お忍びで相談窓口をのぞきにいったりもしている。ラウレータも同じように魔道具で分からないようにしてある。
手を繋いで歩く私達の後ろには護衛たちの姿もある。とはいえ、お忍びで来ているから護衛たちも周りに悟られないようにしてくださっているけれど。
「お母様、早速人が居るね」
ラウレータが小さな声でこっそりと言う。
お忍びで来ているから、敢えて声を小さくしているみたい。可愛いわ。
ラウレータの言うように相談窓口の建物にやってきている女性が早速いて、私は嬉しくなった。
まだ稼働したばかりだからどんどん人がやってくることはないだろうけれど……、本当に困っている女性が訪れやすいように出来ればと思う。
「そうね」
「皆、困っているのかな」
「生きていれば何かしらの悩みを皆、持つものだわ。それを自分では解決できない時には、誰かに助けを求めるのがいいの。だからラウレータも本当に困った時は一人で解決しようとしないようにね」
私はラウレータに向かってそう笑いかける。
離縁する前の私は周りに何を言っても仕方がないと受け入れて、今の状況は当たり前だと受け入れて――そのままにしていた。でもそうやって何も変わらないと受け入れる必要も、全て一人でなんとかしようとする必要も全くない。
自分の弱みを誰かに見せることを躊躇する人は少なからずいると思う。でもそんな風に思い躊躇う必要はなくてもっと周りに頼っていいのだ。
ラウレータのことは母親として私は守るけれど、いつか私が手を差し伸べられない状況がくるかもしれないから。
「うん! 私、困った時はちゃんと周りに相談するよ」
ラウレータは頷いてにこにこと笑う。
私の可愛い娘はこれから大人になっていく。その時にラウレータが生きやすいように、もっとこの国を良くしていきたいなと思った。
相談窓口をのぞいた後は、ラウレータと二人でカフェへと向かうことにした。
美味しいカフェが最近出来たと花びら達から教えてもらったの。そういう細かい情報も花びら達は網羅しているから凄いわよね。
王都だけではなく、色んな街に花びら達は散らばっているから情報収集を頼むとすぐに教えてくれて本当に助かるわ。……ただ私が問合せをすると今行っていることより、私の方を優先してしまうみたいだけど。緊急じゃないものもそうだから、嬉しいけれどあんまり必要以上に問い合わせはしないようにしているわ。
カフェまで歩く間、ラウレータはずっとにこにこしている。
その笑顔を見ているだけで思わず私も笑みがこぼれる。
祖国にいた頃よりもスラファー国にやってきてからのラウレータは楽しそうで、自然な笑顔が多くて嬉しくなる。
祖国では無理をさせてしまっていた。私のことで気を遣わせてしまっていた。
この国ではラウレータは気を遣う必要もないのだ。それがただ嬉しい。
カフェへとたどり着いて、二人席へと案内される。
メニューを二人で見ながら、何を頼もうかと相談する。
「お母様、私、これが食べたい」
「じゃあ頼みましょう」
そんな会話を交わして注文をする。ラウレータが注文したいというので、お願いした。
一生懸命、注文をするラウレータを店員の女性も笑顔で見ていた。
注文の品が届くまでの間に店内を見渡す。
出来たばかりのお店だと聞いていたけれど、客入りがとてもいいわ。それだけ美味しいのかしら? それとも店主の人柄がいいとか?
店員の質は少なくとも良さそうだわ。それに店内の小物などが可愛くて、雰囲気が良い。
だけれども女性向けに振り切っているわけではなく、落ち着いた雰囲気もある。
相談窓口が軌道に乗ったら、事業は何かしらしたい。その場合だとこういう飲食店がいいのかしら。それとも女性だと手先が器用な人も多いから洋服店などでもいいのかもしれない。
ただ女性だからとか、男性だからとかでどういう職種がいいなんて決めつけるべきではないとは思う。
そのあたりは相談窓口に来た相談者から話を聞いてからにはなるだろうけれど。
「お母様?」
私が考え込んでいるとラウレータに不思議そうに声をかけられる。
「少し考え事をしてしまっていたわ。ねぇ、ラウレータはお店をやるとしたらどんなものがいい?」
「お店? んー……、本屋? あとはお菓子屋さんとか?」
ラウレータに問いかけてみれば、そんな答えが返ってきた。




