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【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

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女性が生きやすい環境づくり ⑩


「ふぅ……」



 モートナさんは一息をついて、椅子に腰かけている。



 あのモートナさんの夫である伯爵を大人しくさせた後、モートナさんはほっとした様子を見せていた。

 本性を露わにした伯爵を見て、モートナさんの両親は完全に彼女の味方をしてくれるようになったようで、そのことも良かったと思う。

 やっぱり実際にどうであるのかというのを示さないと理解してくれない人というのはいるもの。



「クレヴァーナ様、本当にありがとうございます。私一人だったらこんな風に行動を起こすことなど出来なかったと思うわ。それにお父様達を味方に付けるのも……一人では難しかったと思いますの。……本当にこれから離縁して、新しい生活が始まるのだと思うと不思議な気分だわ」



 モートナさんはそういうけれど、私はそんなことはないと思う。



「いいえ、きっと貴方は私と出会わなかったとしても立ち上がったと思うわ。どんなに時間がかかったとしても、モートナさん自身が決めたことだもの。私はその背中を押しただけだから。それにこれからの生活の方が重要だわ」




 そう、あくまでもモートナさんが自分の意思で立ち上がったからこそこういう状況が出来上がっているのだ。

 私の言葉を聞いて、モートナさんは嬉しそうな表情をする。



「クレヴァーナ様の言葉を聞くと、これからきっと大丈夫だってそういう気持ちでいっぱいになるわ。私はやっぱりいつか、クレヴァーナ様のようになりたいと思うから。クレヴァーナ様の力を借りながらでないと今はまだ生活できないかもしれませんけれど、いつかちゃんと一人で何でもできるようになりたいと思うの」



 良い表情をしているなと私は思わず笑ってしまう。


 私はこうやってモートナさんの表情が輝いているのを見ると、嬉しい気持ちになった。モートナさんは前向きに、これからのことを考えている。



「モートナさんがこれから自立できるように私もサポートするわ。こうやって大きな選択をする際は、周りの人に幾らでも助けてもらえばいいの。私だって離縁された後に、周りの人たちに助けられたからこそ今があるの。もちろん、誰かにずっと依存しなければ成り立たない関係性というのは問題だけれど」




 モートナさんがずっと私を頼りっきりだったら問題だとは思う。そういう関係性だと結局将来性がないというか、崩れてしまうものだと思うから。

 私はモートナさんのような女性が居るなら、手助けできるようにはしたいなと改めて思ったけれど――そのあたりの仕組みはきちんと考えないといけないかもしれない。




「ええ。もちろん。ふふっ、私も……クレヴァーナ様のようになれたらって想像しただけで、とても楽しい気持ちでいっぱいになっているの。なれるかしら……?」

「なりたいという気持ちがあればなれると思うわ。私もこれからもなりたい自分になるために頑張るつもりなの。だから、一緒に頑張りましょう」

「……クレヴァーナ様は、まだなりたい自分になれていないと?」



 モートナさんは不思議そうな顔をする。



「ええ。だってなりたい姿ややりたい事というのは更新されていくものだわ。目標が一つあったとして、それを叶えても、その次が出来るでしょう? 私が人生を懸けてやろうとしているのは、私自身を証明し続けることなの。まだまだ、それは終わっていないわ」



 私がそう告げると、唖然とした表情をモートナさんは浮かべる。



「……凄いわ。クレヴァーナ様は満足していないのね。だからこそ『知識の花』としてずっと活躍し続けている。私も――同じように満足せずに行動し続けます。そしたら、クレヴァーナ様のようになれると思うから」

「そうね、私は……もっと色んなことを成し遂げたいとそう思っているのだと思うの。もっと私がどういう人間か世界に証明し続けたいって。私にも大きな分岐点があったわ。クレヴァーナ・シンフォイガであった過去を隠して、別人として生きることも出来た。でも私が選択したのは過去も全て抱えたまま自分を証明することだったの。それを選択したのだから、出来る限りやり遂げようとそう思っているだけだわ」




 こうして口にしてみると私のやりたいことはそれだけなのだ。

 私は自分を証明することをこれからも成し遂げていくとそう決めている。



「……私も、同じように目標を見つけたいです。一生涯の目標でも見つけられたら、きっとクレヴァーナ様のように輝けると思うから。そういう私で居られたらきっと私は自分のことをもっと好きになれて、子供達も私を誇りに思ってくれると思うの」



 そうやって決意を口にするのは、これから頑張ろうって自分に喝を入れているのかも。



「ええ。何か見つけたら教えてね」



 私がそう言ったら、モートナさんは笑った。



 モートナさんのような離縁したくても出来ないとか、何かしら事情があってやりたいことが出来ない人。そういう人たちってきっと世の中には私が出会えていないだけでいると思う。

 そういう人たちの背中を押せるように、色々と案をまとめてみよう。

 モートナさんの生活が落ち着いたら、その意見も聞きながらがいいかもしれない。




 モートナさんはこれから忙しくなる。――私はモートナさんがどんなふうにこれから輝いて、どんなことを成し遂げていくのかとそれを考えるだけで楽しみで仕方がない。


本日、書籍発売しました。よろしくお願いします(2024年10月10日)

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