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【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

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女性が生きやすい環境づくり ⑨

 伯爵はモートナさんの父親の登場に、目を見開く。

 まさか、聞かれているなど思ってもいなかったのだろう。というよりも誰も聞いていないと思っていたからこそ、そういう態度をモートナさんにし続けていたのだと思う。




「どうしてこちらに?」

「……モートナに呼ばれてね。伯爵、モートナへの態度はどういうことなんだい?」

「……意見の不一致がありまして、少し荒い口調になってしまっただけですよ。貴方も聞いているでしょう? モートナが私と離縁したいと言っていることを。子供もいるにも関わらず離縁をしたいなどと言っているのです。私が幾ら説得しても納得してくれず、申し訳ないです」



 伯爵は申し訳なさそうな表情を作って、モートナさんの父親へと告げる。これで騙せるとでも思っているのだろうか。……今までこうやって周りを騙して、欺いてきたのだろう。

 今回も――自分の素の部分を見られたにもかかわらず、騙して、乗り切ろうとしている。




「そうやって白を切るつもりなのか。伯爵のことを私は誤解していたようだ。伯爵の言う通り、モートナが一時的に離縁を申し出ているだけだと思っていた。何かしら気に病むことがあって、そのために先のことなど考えずに声を上げていると……。でもそうではなかったのだと確信した」



 モートナさんの父親がそう言い切ると、伯爵の表情が強張る。

 ちなみにモートナさんは、その母親に庇われている。




「――モートナの、妄言を聞くつもりなのですかな? 離縁した所で、本人の傷になるだけであるというのが分からないのですか? それにモートナは子供達を連れて行こうとしていると聞いています。女性一人で、どうするというのですか? 実家に戻るとでも?」



 丁寧な口調だけれども、何処か咎めるような言葉。

 きっとこうやって強い口調で言えば、モートナさん一家は押し黙るだろうとそう思っているのだろうか。



 一瞬、モートナさんの父親は押し黙りそうになっていた。……多分、基本的に人が良い人だからこそ、こういう風に強い口調で言われることに慣れていないのだろうなと思う。



「その点に関しては何も心配はいりません。私が責任を持って、モートナさんのこれからの生活を保障しますから」



 私はモートナさんの父親と、伯爵の間に割って入ってそう告げる。



 にこりと微笑みかける。こういう時は余裕を見せた方がいいもの。焦った様子はモートナさん達に不安を与えてしまうもの。




「貴方が『知識の花』と呼ばれて、陛下たちの覚え目出度いことは知っている。しかしだからといって、夫婦のことに口を出すのはどうかと思いますが」




 夫婦の事に口を出すなとでもいう風に、厳しい口調の伯爵。私のことが本当に気に食わないのね。それにしても口出ししてほしくないというのならば、きちんとモートナさんの話に耳を傾ければよかったのに。

 モートナさんだって、伯爵がきちんと話を聞いてくれるのならば離縁をこれほど強く望まなかっただろう。

 ――だから言ってしまえば、自分の意見だけを長年貫き通そうとした伯爵の行動の結果だ。





「私は夫人が新しい一歩を踏み出そうとしているのを手助けしようとしているだけですわ。その行動は彼女の意思であり、私が彼女を助けようとしているのも私の自由」



 モートナさんの離縁をしたいという選択も、私のモートナさんを手助けしようとする選択も――それぞれの自由なのだ。



「なっ――!! 調子に乗るな!! 王弟殿下に担ぎ上げられているだけの存在が!!」



 私の言った言葉がよっぽど気に障ったのだろう。



 これだけ短慮なのにこれまで周りにその本性を知られなかったのは、ただその機会がなかったからなのか。それとも流石に離縁などという伯爵にとっても想定外の、我慢が出来ないことだったからだろうか。

 そのまま伯爵は手をあげて、あろうことか殴り掛かろうとしてくる。



 全く、こうやって手をあげようとするなんて信じられない話だわ。先ほどもモートナさんに同じような真似をしようとしていて、私にそれが届くと思っているのかしら?

 当然、魔道具により弾かれたわ。

 正直に言うと叩かれたという事実があった方がやりやすいけれど、それは流石にしない方がいいもの。私も痛いのは嫌だと思うから。




「伯爵。この場のやり取りは全て魔道具で記録しておりますわ。それにこの場には信頼の出来る第三者を控えさせておりますの」

「なんだと――!?」

「そのように声をあげるのはやめてくださいませ。モートナさんに離縁されることを不服と思っているようですが、貴方が何を言おうともこれは決定事項ですわ。私が彼女の背中を押しますもの」



 逆上している伯爵に向けて、ただ微笑みかける。



 伯爵にとっては私はカウディオの後ろ盾があるからこそ、強気な様子を見せているだけに見えるのかもしれない。私が幾ら結果を出していてもそのように言われるのは、少し心外だなと思う。

 やっぱりまだまだ私を証明するというのは、継続していかなければならないわ。




「それと伯爵の言動に関しては正しく伝えますから、行動を改めない限り伯爵の再婚も難しくなるのではないかと思いますわ」




 また伯爵の表情が強張る。私に手を出そうとして、やっぱり弾かれる。本当に暴れているわね。

 伯爵が再婚が出来ないのならば、跡取りをどうするかの相談もしないと。伯爵位から引いてもらって、他の方に代えるということも必要になるかもしれないわ。モートナさんの子供を伯爵位に就けることもできるだろうけれど、そのあたりは本人の意思を尊重したいもの。



「そのように暴れてもこれからの未来は変わらないわ。……伯爵を大人しくさせてもらえるかしら」



 私は伯爵に向かって告げた後、虚空に向かって告げる。

 そこには魔術師がおり、彼が伯爵を一旦拘束してくれた。流石にこれだけ暴れられたら困るものね。



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― 新着の感想 ―
[一言] 往生際が悪過ぎるww
[一言]  よく今までバレませんでしたね? こんだけ短慮かつ短気で…外面だけは一流だったのか。
[一言] 本当にこんな短絡的な人物がどうして今までバレなかったのだろう? 伯爵の親とか出てないけど知ってたのだろうか? 王族に手を挙げるって自殺願望あるとしか思えない。
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