ラウレータの世界 ⑩
「元奥様のこと~とある使用人side~」の部分、一部修正してます。
お母様とカウディオ様――ディオ父様は結婚式を挙げた。
花嫁衣裳のお母様はとても綺麗で、周りの人たちに沢山お祝いされていたの。
スラファー国にやってきてから、私には知り合いが沢山出来たの。お母様やディオ父様が私のことを紹介すると、皆が皆、笑顔で話しかけてくれるの。
それでいてお母様にね、「娘さんと一緒に暮らせるようになって良かったです!」と言っている人も多かった。お母様は私のことを沢山周りに話していたんだって。離れている間も、大切な娘だって。
私はそのことを知ってとても嬉しかった。だってね、お母様が私のことを忘れたりしないでいてくれたことだもん。
そういえばスラファー国にやってきてから私は驚いたことがあったの。
それはね、お母様が私に手紙やプレゼントを送ろうとしていたこと。それらは送り返されちゃってたんだって。
しばらくしてからお父様からそのことに対する説明の手紙が来ていた。お父様の下についていた人たちはお母様から届いた手紙などを私に渡さないようにしていたらしい。私のものを勝手にそういう風にするのって正直嫌だなって思う。
スラファー国にやってきてから、お母様がこれまで私に送ろうとしていた手紙やプレゼントをまとめてもらえたのは嬉しかった! 私もね、お母様に渡したいなって思っていた手紙をお母様に渡したの。
お母様はね、それを見て驚いていた。そして嬉しそうに笑っていた。
「ありがとう。ラウレータ。貴方から手紙をもらえるなんて嬉しいわ」
そしてお母様は私の書いた手紙を読んでくれて、宝物だと言って大切にしまいこんでくれたの。
「私にとってもお母様の書いた手紙は宝物なの! お揃いだね」
「ええ。そうね」
お母様は私の言葉に笑ってくれる。
お互いが書き留めた手紙が宝物でお揃いって、とても嬉しいことだと思うの。
この国に来てから私は自分から望んでお母様について回ることが多い。
お母様は「退屈するかもしれないわよ?」と困ったような表情を浮かべながらも、許可してくれたの。
びっくりしたことにお母様は時々危険な場所にも自分から向かったりするって聞いた。流石にそういう所には私はついていかせてもらえないみたい。
だから私が見ているのは、王城で研究をしたり話し合いをしているお母様の姿や屋敷に呼んだ生徒たちに知識を教えるお母様の姿なのだ。
集中して何かの作業をしているお母様。私には何をしているかさっぱり分からないけれど、きっとそれを行うことで何かの結果につながるのだろうなと思う。
厳しそうな男の人と一緒に話し合いをしたりしている。それはスラファー国の問題を解決するための会議なんだって。お母様についていきたいとは言ったけれど私がそんな場に居ていいのかなと少し思った。でもお母様は「大丈夫よ」と言って笑ってくれて、周りの大人たちも「クレヴァーナ様の子供だから」と受け入れてくれた。
お母様が生徒たちに教える場で、私はちょこんと座ってその様子を見ていた。生徒たちは私のことが気になるのか、ちらちらこちらを見ていた。私が手を振ったら笑顔になってくれて嬉しかった。お母様が教えている知識について、私はあんまり理解出来なかった。難しいことばかりだった。もっと勉強して――いつかお母様の見ている世界を私も見られるように、知識を蓄えたいなと思った。
お母様もディオ父様も子供である私がそういうのについていくと退屈するんじゃないかと思っていたみたいだけど、そんなことはなかった。
だって――今のお母様のことをもっと沢山知りたい。それに少しの間、離れていなければならなかったから……お母様とずっと一緒に居たいって思う。なにより周りの人たちが皆、お母様のことが大好きなんだって分かって嬉しくて仕方がないの。
私の大好きな、自慢のお母様。
とても凄いのにこれまで正しい評価を受けてこなかったお母様。
――目の前にいるお母様は、本当に眩しいぐらいに輝いている。
「私のお母様は本当に凄いの!!」
私がそう言った言葉に周りは頷いてくれる。そして私の知らないお母様の行ってきたことを教えてくれる。
お母様は自分が行ったことを凄いなんて思ってなかったりする。お母様が簡単に行ったことでも、他の人にとっては凄かったりするのに。だからそういう話については他の人から聞く方が多い。
お母様のことをどんなことでも聞けるのが嬉しい。それを教えてくれる人たちのほとんどがお母様のことを大好きなのが嬉しい。
私が幾らでもお母様のことを語っても、皆、笑顔なの。
これまでレナリにしかこうやってお母様のことを話せなかった。でも今は色んな人に話せる。
私のお母様がどれだけ凄いかって。どれだけ私がお母様のことが大好きなのかって。
それを思う存分喋れることが嬉しくて仕方がなくて……私はスラファー国にきてから、ロージュン国に居た頃よりずっとお喋りになっている気がする。
お友達も沢山増えた。
同年代のお友達がこうやって増えていくのも楽しい。
あとね、お母様と一緒におでかけもするの。ディオ父様も一緒なことは多いけれど、二人でおでかけも沢山している。
私にとってお母様と再会してからは、楽しいことばかりしかない。
「お母様、今日は一緒に寝ていい?」
「ええ。もちろん」
私は一人部屋を与えられているけれど、こうやってお母様と一緒に寝たりするの。ディオ父様も一緒だよ。
「お母様、大好き」
私がそう口にすると、お母様が笑みを浮かべて「私もよ」と笑って抱きしめてくれる。
――私の世界は、お母様への大好きって気持ちで溢れている。
これからも私はお母様が隣に居て、笑っていてくれればそれで幸せなのだ。
ラウレータ視点、一旦ここで終わりです。次はまた別の話です。




