表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/96

ラウレータの世界 ⑦


 お母様の話が、徐々に増えていく。

 ……お母様は、活躍をなされている。私はそれを聞くのが嬉しい。



 でもレナリ以外の人たちは、私の耳にお母様の噂を入れないようにしているみたいだった。ただお母様のことを噂しているのは聞いた。



 この国では悪い噂だらけのお母様が、それだけ隣国で活躍しようとしているなんて信じられないらしい。お母様の凄さを知っている私からしてみると、お母様にとっての正しい評価がやっとされるようになったんだなって思う。

 でもそれは私がお母様のことを正しく知っているからで、皆、分かってないからそんなことないって勝手に決めつけているのだ。

 そういう人たちはお母様の凄さを実感したらわっと驚くだろうなと思う。




「それにしてもこの国にまで噂が広まっているというだけでも、クレヴァーナ様の凄さがよく分かりますね」

「うん。私のお母様は本当に凄いのよ。でもこの屋敷に居た頃のお母様は、あんまり自分から何かをしたりとかしなかったの。隣国で活躍しているお母様はそうじゃないみたい」



 屋敷に居た頃のお母様は、あんまり自分から何かしようとしていなかったように思える。凄いお母様なら、きっと何かやろうとすればもっと出来たと思う。でもお母様は全て受け入れているかのように笑っていただけだった。



 ……もしかしたら今のお母様と、私の知っているお母様は結構変わっているのかもしれない。

 私もお母様が居なくなった後から、身長が伸びて、出来ることも変わって――今の私を見たらお母様もびっくりしちゃうかもしれない。

 だから離れている間にお母様が変わったことも、普通のことだと思う。



 でもきっと素敵な風に変わっているんだろうなとは勝手に思っているの。



「離縁されてから何らかの心境の変化でもあったのかもしれないですね。お嬢様の話では、クレヴァーナ様は外にもあまり出られていなかったのでしょう?」

「うん。お母様は基本的にずっと屋敷の中にいたと思う」

「その話を聞いてから、私、クレヴァーナ様の話を集めてみたのですけれど……、クレヴァーナ様は自分から外に出なかったというのもありますが、出させてもらえなかったのも大きいみたいです。悪い噂の流れているクレヴァーナ様を外に出すわけにはいかないとされていたと聞きました」

「……そうなの?」

「はい。クレヴァーナ様はこちらに嫁がれる前から、悪い噂が流されていたようですけれど……、外に出てもないクレヴァーナ様の悪い噂が流され続けているのはおかしなことだとは思います。こちらに嫁がれる前の噂も、そうなのかもしれないです」




 私はお母様がシンフォイガ公爵家でどう過ごしていたか知らない。この屋敷からシンフォイガ公爵家までは距離があって、まだ小さい私はそこに行ったことはない。



 でもお母様は結婚する前から嫌なことを言われ続けていたのかなって思うと、悲しい気持ちになる。

 私はお母様のことが大好きで、今すぐにでも抱き着きたいってそんな気持ちになる。

 お母様は色んなことを知っていて、凄い人で。私はその優しい笑みが大好きで。

 だけど、私は……お母様のことで知らないことがきっと沢山あるんだろうなと思った。




「そういう状況は辛いことが多かったのではないかと思います。この国ではクレヴァーナ様にとってそういう状況が当たり前だったように思えることを考えると……、こんなことは言わない方がいいかもしれませんが隣国に行けたことはクレヴァーナ様にとって良いことだったのかもしれないと思いました」




 レナリの言葉に私は頷く。



 私はお母様に戻ってきて欲しいとは思っていた。お母様が隣に居てくれたらとも思った。

 でも隣国でのお母様は生き生きしているように聞こえた。それこそこの国に居る頃よりずっと。

 そう考えると確かにお母様にとって良かったのかもなって思う。



「ねぇ、レナリの集めてきてくれた噂のお母様は凄く楽しそうなの。色んなことをやっていて、それを成功させていて凄いなって思うの。……お母様は色んなことに夢中で、私のことを忘れていたりしないよね?」




 お母様はきっと私に会ったら抱きしめてくれると思っている。優しい笑顔を浮かべてくれるとそう思っている。

 でも何かに夢中になったら別のことを忘れてしまったりって、私もたまにするもん。


 お母様が活躍していることは嬉しいけれど、お母様が私のことを忘れていたら悲しいなってそう思ってしまった。

 お母様が凄いことは嬉しいことなのにな。




「お嬢様、大丈夫ですよ。お嬢様の知るクレヴァーナ様はそんな方ではないのでしょう? 私はクレヴァーナ様と対面したことはございませんが、お嬢様がそれだけ慕っている方ならそんなことにはならないですよ」



 レナリがそう言って笑ってくれて、少しほっとする。



「うん。ありがとう。レナリ」



 私はそう言って、決意をするように続ける。



「お母様に会えた時のために、やりたいことのリスト作るわ」



 お母様に次に会えた時に、お母様と一緒に何をしたいかまとめておこうとそう思った。




 相変わらず私の周りにはお母様の活躍を信じない人が多い。お母様が王様の弟と仲良くしているからそういう噂が出回っているなんて言う人もいるぐらいだった。

 でも他の人がなんといおうと、レナリが私の話を聞いてくれて、お母様の活躍を教えてくれるから私は嬉しかった。




 そしてそうやって過ごしているある日、


「クレヴァーナがロージュン国に来るらしい」



 お父様がリネ母様にそう言っている言葉を聞いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ