表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/96

ラウレータの世界 ④


 その人はよく、私に話しかけに来るようになった。隣にはお父様も居る。

 お父様は見たことがないような優しい目をしている。




 その人の名はキーリネッラ。

 明るい茶色の髪の、お母様とは雰囲気が違う人。どちらかというと可愛い雰囲気の人。




 お父さんはこういう人を好きなんだなぁと思った。

 これまでやってきた新しいお母様候補の人たちよりも、ずっと話はしやすかった。



 私がお母様のことを本当に大好きだということは納得してくれない。キーリネッラさんは子供が好きみたい。それでいて小さい子は幸せであってほしいって思っているみたい。お父様のことを慕っていて、とても前向きな人。



 お花みたいに明るい笑みで、お母様とは雰囲気が異なる人。

 多分、周りから嫌がられたりしたことはないのだろうなって、そう思った。




 キーリネッラさんも、お父様も――、私がキーリネッラさんを受け入れることを望んでいた。というより、お母様よりもキーリネッラさんを嫌がるなんてありえないとそう思っているみたい。

 キーリネッラさんは悪い人ではないとは思う。お母様のことを表立っては悪くは言わない。私の言葉を受け入れはする。……でもそれだけなのだ。




 周りから聞いた通りのお母様を想像している。幼い子供は母親を好きなのは当然だから……、お母様しか私が知らないから……他の人を嫌がっているだけだとそう思われているのだと思う。

 ただお父様はキーリネッラさんが好きで、私に受け入れて欲しいとそう思っているのはすぐに分かった。




 誰一人、私が嫌がることを望んでいなくて。そもそも嫌がった所でお母様が帰ってくるわけではない。

 だから他の嫌なことを言ってくる人たちよりはずっといいとそう思った。




 ――それに私がキーリネッラさんを受け入れれば、お父様は嬉しそうに笑うのだ。

 私が見たことのないような顔をしていて、それが少しだけ寂しく思った。でも……、お父様が笑っているのは嬉しかった。




 キーリネッラさんは、よく話すようになってからもやっぱり私の思っていることなどは理解してはくれない。

 キーリネッラさんが屋敷によくやってくるようになってから、周りの雰囲気がよくなっている気はする。皆、キーリネッラさんのことが好きみたい。私も嫌いではないけれど、やっぱりお母様が居たらなぁとそればかり思ってしまう。




 屋敷にもう居ないお母様のことを私はいつも考えている。

 お母様は今、どうしているだろうか。




 周りの人たちはお父様と別れたお母様はまともな暮らしを出来ていないはずだってそんなことを言ったりしている。

 私が子供だからこそ、そういうのを理解出来ていないからって思っているみたい。お母様が居ないからこそ、そういう噂を流せるみたい。



 ……お母様は私と一緒で、屋敷の外にはあまり出たことがない。お母様自身もそう言っていて、知識を知っているだけだって言っていたけれど、きっとお母様ならどこでだって生きていけるんだろうなとは思った。




 私はお母様が凄い人だって知っている。

 沢山のことを知っていて、優しくて、綺麗な私のお母様。そんなお母様のことを知らない人ばかりだけど、私のお母様はずっと凄いのだ。

 お母様は何処で何をしているんだろう。……お母様が新しい生活に夢中で、私を忘れたらどうしよう。会った時に、私のことをお母様が覚えていなかったら……。そうなったら悲しいと思う。




 お母様から手紙なども届かない。お母様から手紙が届いたら、すぐに返事をするのになと思う。誰かに手紙を書くなんて私はしたことないけれど、お母様に手紙を書けたらきっと楽しいだろうなとも思った。




 私は屋敷の使用人に、お母様から何か連絡が来てないかと聞いたりもした。困った顔をしていた使用人の顔を見て……、お母様からの手紙がもし届いていても私に渡されることはないのかもしれないとも思った。

 お父様やその周りの人たちは私がお母様と関わり続けることをきっとよく思っていない。

 私がキーリネッラさんを好きになって、お母様のことを忘れて、そうやって過ごすことをきっと望まれている。



 でも幾らそう望まれても、私はお母様のことをきっとずっと忘れはしないだろうって思った。




 私がキーリネッラさんと仲良くなれば、その分、周りが嬉しそうにしている。その方がきっと平和だから、そうした方がいいと思った。

 私が大人になった時にお母様に会うためにも、受け入れていると思ってもらった方がきっと良かった。私自身、キーリネッラさんのことが嫌いじゃなかったというのもあるけれど。



 私が受け入れているからと、お父様は益々キーリネッラさんとの距離を縮めていった。



 お父様ってあんまり誰かとくっついたりするのが好きではないと思ったけれど、キーリネッラさんには近づいている。

 キーリネッラさんと一緒に二人で喋るのは、お母様と話すのとは違う感覚。キーリネッラさんは基本的に明るくてなんだか友達と話しているのがこういう感じなのかなと思った。



 そうやって過ごしている間に、キーリネッラさんとお父様が再婚した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まだ幼いって言える年齢の娘に、こんな事を思わせてたとか本当に不愉快な国ですねー
[一言] キーリネッラかキーラネッラかどっち?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ