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【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
番外編

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ラウレータの世界 ②

「奥様は悪いことをしたので、ラウレータ様と一緒にはいられなくなったのですよ」


 身の回りの世話をする侍女はそんな風に言って笑った。



「もっと良い、母君がこれから出来るはずですから」


 お父様の周りのお兄さんたちはそういって、まるでその方がいいとでもいう風に笑った。



 ……どうして。なんで。誰も、お母様が居なくなったことを悲しんでいないのだろうか。



 私はお母様が居ないことが、寂しかった。

私に向かっていつも笑いかけていたお母様。なんでも知っていて、私が何かを出来ると褒めてくれた。お母様は私に向かって、優しい目をいつも向けていた。他の誰が何と言おうとも、私はお母様が大好きだった。



 なのに……誰も、その気持ちを一緒に感じてくれない。

 お父様だってそうだ。……お父様はお母様のことで何か考えてはいるみたいで、たまに難しい顔をしていた。でも結局、お父様はやっぱり私の言葉よりも他の人の言葉の方を聞く。

絵本の中で読んだ結婚というのは、好きだからするものだった。お母様が読んでくれたお姫様の絵本の中の……幸せな結婚とは多分、お父様とお母様のものは違ったんだろうなって思う。

でも……幾ら幸せな結婚じゃなかったとしても、いなくなったことを悲しむどころか喜んでいる様子を見るのは嫌だった。

 だったらなんで、お父様はお母様と結婚したのだろう。




 仕方がなかったと、そんな風にお父様の周りのお兄さんたちは言っていた。でも六年も結婚していたって聞いた。私が生きているよりも長い時間。なのに……その間になんでお父様とお母様は仲良くなれなかったんだろう……?




 私は悲しい気持ちになりながらも、誰一人、お母様が居ないことを悲しまないことを変だなと思った。だって私だけしかお母様のことを悲しまないなんて、酷いと思う。

 私が泣いたら、お母様に帰ってきて欲しいと言ったら、帰ってきたりしないかなと期待した。

だから本能のままに泣いたりした。でも……誰もがもっと良い母親が出来るってそればかり言うのだ。私が帰ってきて欲しいのはお母様なのに。

 皆からしてみると、お母様よりもずっと良い人がいっぱいいるんだって。お母様に育てられたのが可哀想って言う人もいた。それは私が決めることなのに。どうして皆、お母様が“悪い母親”だったなんて決めつけるんだろう。





「お父様、お母様はね、とっても優しかったよ。私はお母様が大好き」

「……そうか」




 お父様も、結局なんだかんだ私の言葉を本気にはしていないというのは分かった。

お父様はお母様が居なくなってから、私の元へ前より来るようになった。お母様のことを避けていたみたい。というか、お父様の周りのお兄さんたちが近づかないようにしていたみたい。……それに私が子供だから、どんな母親でも慕うんだってそう決めつけてた。




 確かに私は子供だけど、色々考えているんだよ。お母様が周りに嫌われていたとしても、それがなんなのと正直思う。だって周りがどういっても私にとってはたった一人の、大事なお母様だもん。

 そういう気持ち、私が大きくならないと理解してもらえないのかな。

 私がお母様のことばかり口にしているのを、新しい母親が欲しいのだと勘違いされてしまった。

 おそらく周りからしてみれば、私は新しい母親が来たら落ち着くと思われているようだった。




 お母様よりも、他の人の方が母親に相応しいと周りは言う。もっと良い母親がいるのだと、そんな風に口にする。

 だけど、新しくお母様候補としてやってくる人たちがお母様よりいいなんて全く思わなかった。




 ……お父様にすぐに再婚してほしいと周りは言っていたみたい。

 お父様はどうやら女の人に人気みたいだった。

 それはお父様がかっこよくて、女の人たちはお父様と結婚したいかららしい。




 侍女や騎士達はお父様のことを褒めていた。お父様のことを皆好きみたいで、だからこそお父様には良い人と結婚してほしいらしい。

 お父様はまた結婚をするなら私が嫌がらない相手がいいと思ってはいるみたいだった。




 ……私はお母様以外は要らないと思っているので、正直お父様が他の人と結婚をするならば誰でもいいなぁと思っていた。でも嫌な人も多かった。

 私がお母様の娘だから、何を言ってもいいと思っているらしい。



「貴方のお母様は悪女ですものね。だからこそ、こんなに躾がなってないんですわ」




 ……面と向かってそういう悪意のある言葉を言われた時は、びっくりした。




 今まで私の周りにいた大人の人たちは、私自身に対してそんな風に直接言う人は居なかった。でもなんというか、新しいお母様候補の人たちは、私に対してそういう風に嫌な感情を持っている人が多そうだった。

 私にそういうことを言った人は、当然、お父様と結婚は出来なかった。

 そして、周りの侍女達には「ラウレータ様は奥様とは違いますから」なんて、よくわからない慰め方をされた。




 ……お母様はそういう風に言われても当たり前みたいな言い方に、お母様は私が想像していたよりもずっと、悪意のあるものを向けられ続けていたんだなって気づいた。

 お母様は私と一緒の時に、笑っていた。そういう嫌な言葉を向けられたりしていたなんて分からないぐらいに、優しかった。



 お母様はずっと、そういう言葉とかを向けられながらもずっといつも通りだった。それってお母様にとって、そういう風に嫌われていたことが当たり前だったのかな……ってそう思った。


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― 新着の感想 ―
[一言] いやもう本当、周りの人達は何を見てるんでしょう。 噂は噂、近くにいたらその人となりが分かるのに。 周りの大人達は結局確かめる事もせず、子供に間違った知識を押し付ける。 ラウレータは自分でち…
[一言] 誤字ってたのにコメント投稿してたw この家の使用人達もですけど、私はこの国には手を差し伸べる必要が無いと思うんですよねー。酷過ぎて
[気になる点] ラウレータが賢いのが、クレヴァーナの薫陶宜しきを得た影響が大と言うのは良いですね。 そこら辺、誰か解ってくれた人(クレヴァーナへの悪評が不自然と思う人)が、過去に、ラウレータ以外にも居…
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