私を証明するということ ④
私の存在は人目を引いて、目立つらしい。
だから私の行動一つ一つが、周りにとっては良い意味でも悪い意味でも目立っているようだ。
だから色んな影響を私は人に与えている。それこそ良い影響も、悪い影響も様々だと思う。
それでも立ち止まるわけにはいかないので、私はただやれることをやっている。
実際に現場に赴いて、実践を行えることもとても良いことだ。実際に問題の起きている場所に赴くからこそ見えてくるものも沢山ある。
クレヴァーナ・シンフォイガという悪女を否定していた人たちが徐々に変わっていく。感謝の言葉を口にしてくれる人も多い。
基本的にはカウディオ殿下が贔屓しているだとか、私がカウディオ殿下と親しくしているからこそ評価されているだとか思われないように自分を証明する時はカウディオ殿下が居ない場所で行うことが多い。
スラファー国の陛下たちとも挨拶をしたのだけど、彼らは「そこまで気にせずに一緒に行けばいいのに」などと言われた。……陛下たちは、私が使える人材だからこそこうして私が証明すること、カウディオ殿下と親しくしていることも許してくださった。王妃様には「貴方がカウディオの足を引っ張るようなら認められなかったけれど、良かったわ」と言われた。
寄りかかるだけの環境で、カウディオ殿下を頼ってばかりであったら問題だったのだろうなと思う。この国はカウディオ殿下の周りにいる人物としてそういう人を求めていない。
……私がこうやって自分を証明しようとしなかったら、私は彼らに認められなかっただろうなと思う。
私は魔物討伐の場にも、同行した。これは私がその場で魔物に有効な魔術式を提案することが出来ると自分で思ったから。難しいかもしれないけれど、そういう知識で役に立つものがあればと……そう考えたのだ。
とはいえ、私は自分で魔術は使えず、かろうじて魔道具は使えるだけでそれだけ。戦う力なんてもたない。だから足手まといになる可能性はあった。だけど……戦う力がなかったとしても役に立てたら、事業に出来る可能性も高まるもの。
魔術が使えなかったとしても、それでも魔術式を読み解ければ出来ることがあるのだとそれを示せたら……これまで何も出来ないと嘆いていた人たちだって出来ることが増えていくのだ。
私はこれまで自分には何も出来ないとそう思っていた。そういう環境から抜け出して、出来ることが増えていくと本当に心がうずくのだ。
カウディオ殿下は魔術を使える方なのだけど、私の教えた魔術式を理解し、すぐに実行できるのが凄いと思う。
「クレヴァーナの説明は本当に分かりやすいね」
「カウディオ殿下が優秀だからだと思います。私の説明を理解出来ない方も多いですから」
私の魔術に関する知識は理論上のものだ。実戦に基づいたものでは全くない。だからこそ、私の説明では理解出来ない人もそれなりにいる。……これからのためにももっと誰にでも理解が出来る形で説明出来るようになりたいなとそう思う。
既存の魔術式を分解して、組み合わせて、新しいものとして生み出すことも進めている。
ただあくまで魔術の使えない私の進めているものなので、実戦で使えるかどうかは魔術師たちに確認を取ってもらいながらになるけれど。
人に害を及ぼすような凶暴な魔物を見たのは初めてだった。
だから最初は怯んだりしたけれど、観察していればそれがどういう特性を持つ魔物か、どういうものが有効かというのを知識からひっぱり出してくることが出来た。魔物を観察することに慣れてくると、その場で新しい魔術式を作り出すことも出来るようになっていた。
……普通は簡単に魔術式を理解したり、その場で組み合わせることは難しいらしい。
魔物討伐に同行していた魔術師たちにも驚かれてしまった。
おそらく私は記憶力や読解力が人よりも優れているのだろうというのは、こうやって自分を証明するために行動をしているとよく分かる。
魔物討伐に同行することで、野営などの経験もした。私が大切に育てられた貴族令嬢だったならば、こうやってついていくことは出来なかっただろう。最初は色々と足手まといな面もあったけれど、少しずつ出来ることが増えていき、討伐隊の人たちからも認められていくことが嬉しかった。
そうやって自分を証明しながら、エピスの街にも顔を出した。私に悪意を持って接する人が居ないとは限らないので、仲良くなった騎士たちを連れて向かった。
私の噂が街にも出回っているからか、街を出る時とはまた違う雰囲気になっていた。
私に対して気まずそうにしている人もいれば、心配をして話しかけてくる人もいる。ゼッピア達には手紙は送っていたけれど、直接会うのは久しぶりだった。私が元気に過ごしていることを知って、嬉しそうにしていた。
ゼッピア達と話すのはとても楽しかった。
もちろん、私が何をしたとしてもクレヴァーナ・シンフォイガという悪女として見ている人もいないわけではないけれど、それでも私の存在証明は少しずつ進んでいると言えるだろう。
私の噂を信じてしまったと、謝罪をする人もそれなりの数が居た。私はそれに関しては許した。とはいっても以前と同じような関係性ではいられはしないけれど。
そして王都に戻った後は、また活発に私は動き出した。
そうやって過ごしているうちに、いつの間にか一年もの月日が流れていた。




