表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【9/10二巻発売・コミカライズ企画進行中】公爵夫人に相応しくないと離縁された私の話。  作者: 池中織奈
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/96

街をぶらつく ①

 カウディオ殿下が街を後にしてから、少しが経つ。私の日常は変わらない。ゼッピア達からはカウディオ殿下を案内したことで何か変わったりしなかったのかと聞かれたけれど、不思議なことを言っているなぁと思った。



 今日は休日。



 仕事が休みの日も、私は基本的に図書館に行って本を読むことが多い。でも今は外に出ることを咎められることもなく、自分で稼いだお金で自由に買い物が出来る。最初の頃は何処に行くのがいいのだろうかと悩んでいた。

 生活に必要なものを買いに行く以外の選択肢を最初は選べなかった。だけど、ゼッピア達に誘われて色んな場所に行った。そういう外出に慣れてくると、一人で色んな場所に赴くようになる。




 お気に入りのお店も増えていく。




 お出かけする度にお気に入りの場所が増えていくというのは嬉しいことだった。なんていうか、ワクワクした気持ちになる。

 本で読んだことを実践してみたり、私にとって実家を追い出されてからの暮らしは初めてのことばかりなのだ。




 おすすめされた飲食店で一息をついたりもする。

 コーヒーを飲みながら一息ついて、購入した本を読んだりするのも楽しい。あとは街の地図は覚えているので、探索をしたりしている。地図の情報が更新されていない場所を見つけるとメモしておいた。更新が追い付いていない状況だと何かあった時困るかもしれないから。




 ルソアさんに相談して、治安維持を行っている騎士たちの詰所に報告はしておいた。




 今日は最近オープンしたばかりというカフェに一人で来ている。視線を向けられることはあるけれど、故郷にいた時のような嫌なものではない。



 私は眼鏡をかけて、胸もつぶしたままで、目立たないようにしているつもりだけど私の見た目はやっぱり目立つようだった。

 それでも嫌な視線ではないので、特に気にならない。



 ……こうやって過ごしていると、実家にいた頃のような視線を常に向けられていたのはおかしかったのだなと改めて実感する。故郷にいた頃の私は限られた世界しか知らなくて、本を読むことで知識だけはあったけれど――私にとってはああいう視線を向けられるのは当たり前だった。私は今の状況が不思議な気分になるけれど、今の方がきっと普通なんだろうなとも感じている。




 カフェで一息つきながら、今、読んでいるのはこの街の歴史について書かれているものだ。

 歴史というのも読むのが面白いものだと思う。

 過去に生きていた人たちの軌跡。彼らの行いが、今を作っているのだ。

 それに街の歴史の本は様々な種類がある。一つの出来事に重点をおいたものもあれば、分かりやすく簡潔に起こった出来事について短くまとめられているものだったり、色々なのだ。



 しばらくそうして過ごしていると、お客さんが並び始めたので別の場所に向かうことにした。




 次は何処に行こうか。

 そう考えながら、歩く。




 周りを見渡すと、本当に色んな人たちがいる。

 あの人は前も同じお店に行っていたなとか、あの人は図書館に何度も訪れているなとか……。話したことはないけれど見知った顔の人もよく見かける。

 あとはすっかり知り合いになった街で暮らす人たちに声もかけられる。




「クレヴァーナちゃん。今日は休みかい? うちに寄って行かないかい?」

「はい。じゃあお邪魔します」



 花屋の店主の女性に話しかけられて、寄り道をすることにする。



 色とりどりの花がそこでは売られている。時折購入しては、部屋に飾っていたりもするのだ。

 自分の家を好きなように飾るのも楽しい。よっぽど珍しいもの以外は、花を買うのにそんなにお金はかからない。だからついつい購入してしまったりする。

 安いからと、綺麗だからと買いすぎている感じはあるけれど、生活を圧迫するほどではないのでいいかなと思っている。

 まぁ、此処にきているのは店主と話すのが楽しいからというのもあるけれど。





「クレヴァーナちゃんは本当に綺麗だよねぇ。それで恋人がいないなんて不思議だよ」

「そうですか?」

「ああ。うちの息子とかどうだい?」




 そんな風に言われることは度々ある。私はほとんど屋敷で過ごしていて、人と会うこともなかったので気づかなかったけれどモテているらしかった。

 恋はしてみたいとは思っている。だけど……もし、仮に誰かとそういう関係になるのならば、ちゃんと自分で決めたいなと思っている。



 実家では親の決めたことに従うのが当たり前だと思っていた。だからそのまま元夫に嫁いだ。そして言われるままに離縁されて、実家から追い出されて――私は自分で選択をしていなかった。

 今はそうではなくて、自分で決めることが出来る。

 だから周りから言われたからではなくて、自分がそうしたいからと行動出来ればいいと思った。




 親しくなった人から紹介された人と会ったりすることは挑戦している。とはいえ、恋と呼ばれるような感情は今の所芽生えていない。だから大抵は、ごめんなさいと振ることにはなる。

 何度かそれを繰り返していると、紹介されたり告白されたりする数は少し減った。


嫁ぎ先の公爵名、変更しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] クレヴァーナが王弟と話して自分の能力を認識できたり、街の人たちと仲良くなったり、悪評を知っていてもそのフィルターを通して見ない人、悪評を知らずに普通に見てくれる人たちと接することでやっと本…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ