ラウレータの小さな冒険 ⑥
『ラウレータは、王都に詳しいんだな』
『最近、ぶらぶらしている。私、此処で産まれたわけじゃない』
『そうなのか?』
甘いものを食べ終えた後に、そんな会話を交わす。
レルジミーは私が王都で生まれ育ったわけではないことに驚いた様子だった。考えてみると私はスラファー国にやってきてからそんなに時間は経っていない。
ロージュン国に居た日々の方がずっと長いのに……すっかり私はスラファー国に愛着を持っている。
昔は……私が今よりもずっと小さかったからというのもあるけれど、こんな風に街をぶらつくなんてことはなかった。お母様が居なくなってからはずっと、お母様にまた会いたいってそればかり考えていた。
お母様と再会出来てからは、良い意味であんまり深く考え込むことってなくなった気はする。だからこそ、なんだろう、外にも目を向けられるようになったというかそんな感じもする。
『そう。最近、来た。よく、ぶらぶらしてる。だから、ちょっと、詳しい』
単語がうろ覚えなので、大分カタコトになってしまっているかもしれない。やっぱり自分が普段使っていない言葉を喋るのって難しい。
簡単に言葉を話せてしまえているお母様って、凄いなと改めて思った。お母様は頭の回転が凄く速い。それに、理解する力が多分凄い。
お母様の凄さを実感すると、ただいつも嬉しくなる。急に笑ってしまって、レルジミーには不思議そうな目で見られた。
『母親のこと、考えてた』
『お母さんのことが大好きなんだな……』
そう言ったレルジミーの表情が、少しだけ曇った気がした。もしかしたらお母さんと何かあったのかもしれない。
ただそれに気づいたからといって、出会ったばかりの私が何か聞こうとするのも何だか違う気がした。私だったら会ったばかりの人にぺらぺら話せないし、そんな話をしたくないという人もきっと居ると思うから。
『うんっ。それより、レルジミーは、どこ行きたい?』
私はレルジミーにお母様の話をしすぎても、向こうが嫌な思いをするかなと思って話を変える。
『……どこでも』
『じゃあ、お勧め、連れてく』
私はそう言って、レルジミーを連れて図書館に向かうことにした。私は図書館が大好き。
いつもはお城の図書室に連れて行ってもらうことも多い。お母様とディオ父様はよくそこにいる。お城に行くことが多いから、王都の一般開放されている図書館じゃなくてお城の図書室を利用している。ただ二人とも本を読むことは好きだから、王都の図書館に行くこともある。
私もね、たまに行くの。
色んな人がいて、色んなことをしているの。そういう来館者たちのことを観察するのも楽しくて大好き。だって面白いもん。
あとは単純に沢山の本が並んでいて楽しい。それにね、お母様もディオ父様も本が好きだから、こういう本が沢山並んでいるところに行くといつも嬉しそうな顔をしているんだ。
そう言う二人を見るのも大好きなの。
『図書館か……』
『うん。国外の人も、利用可。私も一緒だから、余計に大丈夫』
私はそう言って笑いかける。
はっ、でも図書館に連れてきてしまったけれどレルジミーが本を読むのが嫌いだったらどうしよう? 嫌な場所に連れてきちゃったかもしれないとそれだけは心配になった。
『今更だけど、本、好き?』
『嫌いじゃない』
『なら、良かった。嫌なら、別の場所行く』
好きじゃないという言い方なので、もしかしたら嫌かな? と思ってそう言った。
だけどレルジミーは首を振る。
『大丈夫。ただ、此処の言語、読めるか分からない』
『あ、そうか。じゃあ、えっと……私が読む!』
そこまで思い至っていなかった。そういえばそうだ。他国から来たならば、読む方も出来ない可能性があるんだ。
お母様が当たり前みたいに沢山の言語を読んでいて、私も学んでいるからそれが当たり前みたいな感覚になってしまっていたかもしれない。
『あとは、並んでいる本を眺める、楽しいよ?』
私がそう言ったら、レオジミーは小さく笑って頷いてくれた。
私はレルジミーの手をひいて、図書館内を案内することにした。お母様も昔、図書館で働いていたからお母様と同じようなことが出来ているんだってなんだか嬉しかった。
ちゃんと案内は小声でしている。
だって、図書館では勉強している人も多いから、その邪魔はしたくない。図書館は騒ぐ場所では全くないもん。
『……小さいのに、こんな本も読んでいるのか?』
私が案内を進めていると、驚いた表情をされた。魔術に関する物とか、言語の物とか、確かに私ぐらいの子だと読まない人多いかも? 私はお母様と一緒に沢山読んでいるけれど。
『私、本、読むの好きだから』
レルジミーの問いに私はそれだけ答えた。




