39話 じゃあ、また……
大きな笑い声、ガヤガヤと騒がしい冒険者ギルドのドアが開く。
足取りが軽く元気なミルト、ぶっきらぼうのロジェ、笑顔のミレーラが入ってくる。
ジェマは三人が一緒にいる事を不思議そうな顔で眺めると、声を掛けた。
「ミルト……おかえりなさい……」
ミルトは元気よく敬礼をしておどけてみせる。
「ただいま戻りましたぁ」
そんなミルトを無視して、ジェマは笑顔で二人に話しかける。
「ロジェとミレーラさんも会えたみたいで、良かったわ」
「で……どうしてミルトが一緒なの?」
自分の中で一番理解できない疑問をぶつけるジェマ。
「さっき光聖教会であったんですぅ」
笑顔で答えるミルトをジェマが睨んだ。
(こいつ……二人の邪魔したな……)
「ミルト、こっち来て、仕事を手伝ってくれる?」
「えぇー、ちょっとジェマさん、引っ張らないで下さいよぉー」
ジェマはミルトの手を引いて奥に消えて行った。
ロジェとミレーラは席に着くと料理や飲み物を頼んだ。
頼まれた料理がテーブルに届けられるとロジェがグラスを掲げた。
「今回の事件を無事に解決できたお祝いだな」
「そうですね」
ミレーラもグラスを掲げると、ロジェのグラスに軽く当て、二人は静かに乾杯した。
ロジェは周りを見渡すと懐かしを感じていた。
「それにしても……色々なことがあったな……」
「そうですね……そういえば……ここから始まりましたね……ところでロジェ、この前の戦い、私が倒れている時に……どさくさに紛れて、私の胸を触りましたよね」
ミレーラは頬を膨らましてロジェを睨む。
ん?そんなことあったか……そういえば……ミレーラに魔力を注ぐとき…………
目が泳いでるロジェ。
「あっ!? あれは……仕方なく……」
「うふふふふ、冗談ですよ」
ミレーラは、そんなロジェを見てお腹を抱えて笑った。
ロジェもミレーラを見てホッとしたのか笑っていた。
「おっ、ボッチじゃないか。ミレーラちゃんも、元気だったか」
大声で声を掛けてきたのはガランだった。
「ガラン、どうしたんだ? 今日はいつもより早いじゃないか」
ロジェが茶化したように返事を返す。
ミレーラも会釈をする。
「ガランさん、こんばんは」
「いやーー、強力な魔物が出なくなったみたいで、門の警備は今日で終わりなんだよ。退屈だったが稼ぎが良かったからな。ガッハハ」
ガランは横のテーブルドカッと座ると大口を開けて豪快に笑った。
「貴様!!」
ロジェに向けて、叫ぶものがいる。
驚いたロジェが目を向けると重厚な鎧を着た騎士、レイナルドが立っている。
レイナルドが真直ぐにロジェ向かって来ると威圧的な態度で詰め寄って行く。
「貴様!! この間のゴブリン討伐祝勝会になぜ来なかった!!」
「祝勝会……ああ、あの日は色々あって大変だったんだ……」
ロジェは何を言われるのかと思ったが、大して事ではないことに苦笑いをしながら答えた。
「そんなもの知らん!! 私が誘ってやったのに……」
相変わらず威圧的な態度で腕組をしながら、怒鳴るレイナルド。
「うるせーぞ!! 女男!!」
酔いが回り始めたガランが声を荒げた。
レイナルドの眉がピクリと動く。
「貴様……」
「なんだ、聞こえなかったか? おい、女男!! 俺が楽しく飲んでるのに邪魔だから消えろ!」
レイナルドの顔が引きつっていく。
「貴様……女男だと……私はどう見ても女だろうが!!」
レイナルドがガランに詰め寄り胸ぐらを掴んだ。
「ふん、どこが女だ……男にしか見えないだろうが」
ガランは小馬鹿にしながら鼻で笑った。
喧嘩になりそうな二人をミレーラが仲裁に入る。
「まあまあ、お二人とも……」
ガランがチラリとミレーラに目線を向ける。
「ミレーラちゃんみたいに可愛らしいなら、『女』だとすぐわかるのになぁー、ガッハハハハ」
口を尖らせながらレイナルドを馬鹿にした目で見ると、ガランは大げさに笑った。
レイナルドの顔は怒りに満ちて行くのが分かる。
「…………貴様!!!! そこまで言うなら、見るもの見せてやる」
そう言うと重厚な鎧を脱ぎだすレイナルド。
「レイナルドさん……ちょっと、ちょっと」
焦るミレーラがレイナルドを止めるが、構わず上半身の鎧を脱いだ。
上半身の鎧を脱いだレイナルドは、服の上からも十分過ぎる程に分かる、『ふくよかな二つの果実』を隠し持っていた。
「ふん、どうだ。これでも男と言うのか貴様!!」
ガランはレイナルドの二つの果実に啞然とし、口を開けたまま言葉を失った。
ギルド内を歓声が沸き起こる。
「スゲー」
「最高だぁ!!」
「いいぞー脱げ脱げ」
その状況に我に返ったレイナルドが恥ずかしそうに胸を隠す。
「(しまった……)お前達、見るんじゃない。私は見世物じゃないぞ!!」
恥ずかしがるレイナルドはロジェの方をチラッと見る。
ロジェは驚いた様子で、ポカンとしてレイナルドを見つめていた。
(きゃぁぁぁぁぁ、ロジェが見ている。いやぁぁぁぁぁ)
動揺と恥ずかしさで顔を真っ赤にしたレイナルドは、脱ぎ捨てた鎧を着ると大剣を手に取った。
「ボッチ……今見た事を忘れてもらう……記憶を消せ!!!」
ロジェに切っ先を向けるレイナルド。
「え!?」
あっけに取られるロジェに対して、レイナルドの大剣が襲い掛かる。
「「ガキーーーン」」
激しい音と共に、ロジェの目の前でガランの斧がレイナルドの剣を防いだ。
ガランが斧を構えて笑っている。
「おうおうおう、喧嘩なら俺が買うぜ!!」
レイナルドが殺気を込めてガランを睨む。
「貴様……邪魔するなら死ぬぞ!!」
ガランは興奮して意気揚々と斧を構えた。
「面白れぇ、やってみろ!!」
ガランとレイナルドがそれぞれ武器を振り下ろした。
次の瞬間、二人を間に炎が湧き上がった。
「お前ら……何をやっておる……暴れるなら、外でやれ!!!!」
ギルド長ヘレンが鬼の形相で二人を睨んだ。
何事も無かったかのように、いつも通りの賑やかさに戻るギルド。
ロジェとミレーラも食事を取っていた。
ジェマがコツコツとヒールを鳴らし近寄ると二人のいる席についた。
「二人とも……お疲れ様でした。兄さんの失踪事件……無事に解決できたわね」
安心したように微笑むジェマ。
「ああ、色々あったがな……」
ロジェも感慨深げに呟く。
ジェマは笑顔でミレーラ話しかける。
「ところでミレーラさん、これから冒険者はどうするの?」
「……出来れば続けて行こうと思います……大変な目や怖い思いもしましたが……騒がしくて、楽しい人が沢山いて……この雰囲気が好きなんです」
ミレーラは幸せそうな顔で微笑んだ。
「そうね、確かに騒がしい奴らは多いけど……あはははは」
ジェマはギルドの端で正座させられ、ヘレンに怒られているガランとレイナルドをみて笑った。
ミレーラはハッとしてロジェに顔を向ける。
「……そうだ……ロジェにお願いがありました」
「ん……お願い?」
「これから定期的にクライン城に通わなければ行けないのですが、その時に護衛をお願いできませんか?」
「クライン城に……?」
「はい、コーデリア様にお会いする用がありまして……」
「コーデリア様に!? だったら、俺もコーデリア様に会う用があるから、毎回一緒に行くってのはどうだ?」
ロジェはニッコリと微笑んだ。
「はい、ありがとうございます」
ミレーラはロジェの言葉に満面の笑みを浮かべた。
ギルドを出る二人。月明りが二つ並んだ影を照らし出していた。
ミレーラの家に着く。
「それじゃあロジェ、これからも、よろしくお願いします」
「ああ、それじゃあ……また」
ロジェは振り返ると手を振って歩き出す。
ミレーラも手を振ると、ロジェの姿が見えなくなるまで、幸せそうな顔でいつまでも背中を見送っていた。
「あっ!? 西門の通行証を返してもらうの忘れてました……」
ミレーラは口に手を当て驚き、戸惑っていた……。
ボッチ剣士と奇妙な依頼 完
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