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33話 再戦

 重い沈黙を破るように切り出したのはミレーラだった。


「ロジェの持つ剣に強力な魔力を感じます……」

 聞いている誰もが、彼女の言葉の意味を理解できずに茫然(ぼうぜん)としている。


「その魔力は、化物となったコーデリア様から奪った魔力だと思います……」

 静寂の中、ミレーラの言葉が一筋の希望へと(いざな)い始める。


「奪われたことで『悪魔』が復活したのなら、力を返すことが出来れば……」


 クルムの頭にはマリオンの『ある言葉』が浮かんでいた。


「あの悪魔は、『体の力が復活を阻止した』と、『力が弱まった』と言っていた。その『力』が……奴から奪った魔力だとしたら……」


 ロジェが厳しい表情で呟く。

「俺たちがあの悪魔を復活させてしまった……」


「だが……この剣を奴に突き刺すことが出来れば……奪った魔力を注ぎ込んで……元のように封印できるかもしれない……」


「…………でも、封印出来たとしても、コーデリア様が、あの化物に戻ってしまいます……」

 ミレーラは悲痛な顔で黙り込む。


 クルムが意を決したように立ち上がる。


「コーデリアを斬ってくれ……あの子なら必ず、自分のことより多くの者達の命を大切に思うだろう……コーデリアの魂を救ってやってほしい」

 覚悟を決めたクルムの眼光は、そこにいる者達を見据えていた。


「分かった……」

 ロジェは、クルムの覚悟を無駄にしないように、覚悟を決めた。


「あの悪魔の魔力が完全に回復していない今がチャンスだ……すぐに出発になる」

 ヒュームの胸には力強さの裏に憂心(ゆうしん)があった。


「ああ、もちろんだ」

 ロジェもまた、心に潜む恐怖を抑え込み答えた。


 ヒュームが静かに作戦を練り始める。

「我が結界であいつを縛る……だが、長くはもたないだろう。ミレーラ殿、光魔法で攻撃は可能か?」


「上級魔法での攻撃ならば可能です」


「ミレーラ、以前、俺を回復した魔法は上級以上だったんだろう?」


「……はい、神級魔法です」


「上級以上も使えるのか!?」

 ヒュームは驚き、思わず立ち上がる。


 沈んだ表情のミレーラ。

「……でも、あれが初めての成功でした。今まで一度も成功したことはありませんでした……」


「……光の攻撃魔法だと、上級の1つ上、超魔法。成功すればチャンスも増えるだろう……。賭けになるが……」


「賭けてみよう。正直、全部が賭けみたいな戦いだ。なら、俺はミレーラを信じる」


「ロジェ……分かりました。やってみます」

 ミレーラは覚悟を決め、(うつむ)いた顔を上げた。


「準備が出来次第、出発だ」



 部屋を出たクルムがヒュームに声を掛ける。


「ヒューム殿、冒険者ギルドに援軍要請を出すか?」


「……それは辞めた方が良いでしょう。エルトン殿やオレクのように、あの悪魔から瀕死のダメージを受けると、傷が回復しても意識が戻らない……無駄な犠牲を増やすことになる」


「そうか……分かった。君たちに頼んだ」

 クルムはヒュームの手を取り、力強く握手を交わした。




 城のエントランス


 三人が準備を終え集まっている。


「ミレーラ殿、これを持って行くと良い」

 クルムがミレーラに箱を差し出した。

 差し出された箱には、首飾りが入っていた


「これは?」


「これは、コーデリアの母が持っていた物だ。魔力を補助してくれる」


「そのような大切な物を……」


「無事に戻り、返してくれれば良い。……あの悪魔を倒してくれ」


「…………分かりました。最善を尽くします」

 ミレーラの胸には小さな白い鉱石が付いた首飾りがキラリと光る。


「よし、行こう」

 三人は恐れや不安を(ぬぐ)い去るように、足早に魔窟の森へと向かった。



 魔窟の森


 悪魔マリオンは、森が開けた場所【ギャップ】の岩の上に座っている。

 眼前には多くの魔物の死骸が転がっている。


 三人は樹々の影から様子を伺っていた。


 マリオンが不意に立ち上がり、腕を振り上げると、炎が立ち(のぼ)り、死骸を全て焼き尽くした。


 上空より三人の前に降り立つマリオン。


「予想より早かったのう。邪魔なゴミは綺麗に消えもうした。これで戦いやすかろう。さあ、(わらわ)を楽しませて見せよ」


 ロジェが斬りかかるが、障壁に阻まれ攻撃は届かない。


「ホーリーレイ」

 すかさずミレーラが魔法を放つ、またも障壁に阻まれる。


「その程度かえ?」

 マリオンは踊るよう二人の攻撃を防いでいる。


(隙を作らねば、攻撃さえも当たらない)

 ヒュームは印を結ぶ。

「火炎撃」

 マリオンに向けられた右手から、炎が噴出する。


 今だ――

「……第一ノ剣……高速剣」

 横からロジェが斬りつけると、障壁を破壊し、マリオンはたまらず両手で防御をした。


「凄まじい剣技よのう。我に防御を取らせるとは」

 両手で防御したままのマリオンの背後から、無数の刃が飛び出ると、ロジェに襲い掛かる。


「第十ノ剣――素戔嗚(スサノオ)

 超高速で動く全て刃を(かわ)しながら、超越した動きでマリオンに斬撃を加える。

 そのスピードはマリオンをも凌駕(りょうが)していた。


「おーっほほほほ、面白いのう。貴様」

 ロジェの斬撃がマリオンに無数の小さな傷を付けていた。


 ロジェはマリオンから距離を取る。


「はぁ、はぁ、はぁ」

 体力の消耗が激しいのか、息遣いが荒ら荒しくなる、

 だが――マリオンは余裕の表情を浮かべたまま、楽しげだ。


「先ほどの技……まるで時間を超えているような剣技じゃ。実に面白いのう、もっと妾を楽しませておくれ――ん!?」


 不思議そうなマリオンが振り返ると背後に巨大な扉が出現していた。



 数秒前

 ロジェがマリオンを引き付けている間、ヒュームは距離を置き、白い紙で陣を(えが)いた。

 二本指をマリオンに向けると術を唱える。

地獄閻魔(じごくえんま)


「ドドドドドドドドド」


 地響きが起きるとマリオンの背後に扉が現れる。



 ゆっくりと扉が開くと、閻魔が現れ、マリオンを炎の鎖で捕縛する。

 ガラガラとなる鎖は、マリオンを扉の中に引き()り込もうとした。

 ――だが、マリオンは抵抗し引っ張り返す。


 ヒュームがロジェに叫ぶ。

「今がチャンスだ」


 その時、力の均衡に耐えきれず、炎の鎖が千切れた。

「貴様も、なかなかの術を使いよる」


 扉が消えて行く中、ロジェはマリオンの胸に剣を突き立てた。

 しかし、剣はマリオンの胸に突き刺さる事なく弾かれた。



 何っ!?……剣が……弾かれた……だと……

 ロジェはマリオンの力に捕まり、宙に浮かんでいる。


「貴様ら、この剣で何か企んでおるな」

 弾かれた剣をマリオンが拾う。


「ほう……妾を封じていた魔力を感じるのう……なんと物騒な物じゃ」


 力で抑え込まれるロジェの体から血が流れていく。


 ミレーラはその中、呪文を唱えながら、文字を(つづ)り魔法の準備を終えた。

 両手をマリオンに向ける。


「「超魔法 ホーリークロス」」


 無数の光る十字架が空中を覆うと、キラリ輝いた瞬間、無数の光が放たれた。


「ぎゃぁぁぁぁ」

 一斉に放たれた光は、叫び声を上げるマリオンを貫く。

 下を向いてガクッと崩れるように両膝をついたマリオンが動きを止めた。


「やった……のか……」

 マリオンの力から解放されたロジェが、ゆっくりと立ち上がる。


 動かないマリオン。


 ロジェは傷ついた体を引き()り、ミレーラに歩み寄っていく。


「ロジェ……」

 ミレーラもロジェに近寄る。


 近づいて行く二人。


 だが……ミレーラの目には、ゆっくり立ち上がるマリオンが映っていた。


「ロジェ、後ろ」


 叫ぶミレーラにロジェが振り返ると、マリオンから放たれたデーモンブレイドが、ロジェの胸に突き刺さった。

ホーリーレイ=光魔法 上級……光魔力を圧縮しレーザーのように放つ


火炎撃=攻撃結界……術の印から炎を吹き出す

地獄閻魔=召喚結界……地獄の扉を開き閻魔を召喚(炎の鎖が地獄へ引き摺り込む)


ホーリークロス=光魔法 超級……無数の光る十字架から光が放たれる

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