降り始めた雪
公英視点になります。
ガールズバーの経験は果たして……?
どうぞお楽しみください。
「ありがとうございました!」
「また来ます」
師走の冷たい空気が顔に当たるのが気持ちいい。
……楽しかった!
きーちゃんと言ったあの子、まさか『謀略戦隊ダーティアン』を知っているとは!
それに『桐川・雪舟・内藤!』まで知ってるなんて!
最初の不安が嘘みたいに楽しかった!
……四万円近く行くとは思わなかったけど、それでも十分満足できるお店だった!
また行こう!
何か差し入れとか持っていこうかな……。
「蒲、お前最近機嫌良いな」
「え、そ、そうですか?」
休憩所で先輩の江野古さんが、肩を叩きながらそう言ってきた。
……そんなに顔に出てたかな……。
「何だ? 女か? 彼女でもできたか?」
「か、彼女とかじゃないです、けど、気になる子なら……」
「お! いいじゃんいいじゃん! 一足早く春ってか!? 聞かせろよ!」
「えっと、その、忘年会の日に……」
「うんうん! んで!?」
「ガールズバーの呼び込みをしている女の子に声をかけて……」
「ん!?」
「そこですごい話が合って、その後も何回か飲みに行って、すごく楽しくて、それで」
「オーケー。蒲、落ち着け。それはガールズバーのお店でって事だよな?」
「はい! すごく話が合って、可愛くて!」
「……あー、その、盛り上がっているとこ悪いんだが、それは、その、……やめた方がよくないか?」
「え?」
何だ?
江野古先輩の反応が、急に悪くなった……?
「いや、、だからその、ガールズバーの女の子なんだろ?」
「え、あ、はい……」
「それはさ、どんだけ反応が良くても、その、相手もプロだからさ……。その、あまりのめり込まない方がいいと思うぞ……?」
その言葉で、先輩の言わんとしている事がわかる。
『お前は金ズルになっているから、早く手を引け』
それは正しいのだと思う。
でもそれに従いたくない。
「失礼します」
「あ、あの、蒲なら普通に良い子を見つけられると思うから!」
先輩の声が肩にのしかかる。
それは善意だからこそ白く、それでいて住む人の意思に関係なく降り積もる雪のように……。
読了ありがとうございます。
次回は梗子視点になります。
よろしくお願いいたします。