手を差し伸べてくれた人
薄着で客引きをするガールズバーの女の子に同情して、お店に行く事になった公英。
さてその女の子の方はというと……。
どうぞお楽しみください。
十二月。
クリスマスに浮かれる街。
こんな季節はガールズバーにとって書き入れ時だと教わった。
彼女がいない男性が、飲み会の帰りに寂しさを紛らわせに立ち寄るのだそうだ。
ガールズバーに勤めるのが初めてな私は、そういうものなのかと頷くしかできなかった。
四月から就職に合わせて一人暮らしをするための資金を用意しなければと、始めたアルバイト。
私に務まるだろうか……。
「大丈夫! 梗子ちゃんは可愛いから! 前に立ってお酒作って、お客さんの話に相槌打ってればいいのさ!」
ママさんはそう言ってくれたけど、そんなものだろうか。
高いお給料をもらう以上はちゃんとしないといけないと思う。
私にできる事……。
「さて、そろそろ誰か店の前に出てくれないかい?」
「あ、私行きます!」
少しでも役に立たなくちゃ!
私は勢いよく手を挙げると、表へと飛び出した。
そう、飛び出してしまった。
「さ、さささ寒い……!」
オフショルダーでミニスカート。
十二月の空気が肌を刺す!
何か一枚羽織るものを借りた方が良かっただろうか……。
でもそうしたらガールズバーだという事をわかってもらえないかもしれない……。
お店の名前の入ったポケットティッシュ、持ってくれば良かった……。
とにかくお客さんを連れて戻らないと……!
「が、ガールズバー、いかが、ですか……? が、ガールズバー、でーす……」
声が震える……!
早く、早くお客さんを見つけないと……!
「あの、寒そうですね……」
「へ? あ、はい……」
男の人に声をかけられた!
お客さん!?
……でもその目は、同情と哀れみに満ちていた。
そりゃこんな寒空にこんな格好してたら、変に思うよね……。
通報とかされたらどうしよう……!
「……あの、もし僕がお店に行くって言ったら、君はお店に戻れるの?」
「え、あ、はい、あの、指名してもらえれば……」
「……じゃあ、その、お願いします……」
「あ、ありがとうございます!」
震える手で携帯を取り出して、お店に連絡する。
「あ、あの、お、お客様一名、お、お連れします!」
『あら梗子ちゃん、やるじゃない! 席用意して待ってるよ!』
良かった……。
お店の役に立てたし、凍えないで済む……!
「あ、あの、お店と、れ、連絡できましたので、い、行きましょう!」
「あ、うん」
何だか気乗りしてない顔……。
本当はガールズバーにあまり興味がないのかな……?
それなのに私が寒そうだからって声をかけてくれるなんて……。
少しでも楽しんでもらえるように頑張ろう。
読了ありがとうございます。
次回はまた公英視点です。
よろしくお願いいたします。