休憩と逃走と出会い
久々にこっちを投稿しました。
よかったら読んでってください。
「ふぅ~……疲れたぁー!!」
俺は戦闘が終わった瞬間、地面に大の字になって寝転ぶ。
本当に今日の戦いはヤバかった。
いつもなら問題ないゴブリン達だけど、今回は全体的な強さもそうだが、連携のうまさ。
完全に俺のペースを崩された形になってしまった。
「ま、でも勝ったからいいんだけどね」
俺は起き上がって、【水魔法】で水を出してから一気に飲み干す。
ゴブリン達は弱いモンスターだから、そんなに強くはないんだけど、今回みたいに進化してレベルアップした個体に連携されるとやっぱり厳しいものがあるな。
「とりあえず、今日は帰ろう。もうさすがに無理だ」
俺はゴブリン達が落としたアイテムを回収して【吸魂】をしてから帰路につくことにした。
レベルもかなり上がった。
【吸魂】もこれからすればスキルのレベルも上がるし、さらに経験値を取得できる。
それに今回の戦いは得られる経験値にも期待ができる。
「【吸魂】」
俺は早速、【吸魂】を使ってステータスを確認する。
『ゴブリングラップラーの魂の吸収を確認しました……
・
・
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うん……すごいね……こっちもまた結構レベルが上がってるな。
まあ、レベルが上がったのも嬉しいけど一番嬉しいのはゴブリングラップラーから吸収した【柔術】のスキル経験値かな。
今回の戦いは連携も厄介だったけどなにげにゴブリングラップラーの【柔術】スキルにかなり邪魔された。
あれはゴブリングラップラーと俺のステータスにかなり差があったはずなのに両手鎌の攻撃をずらされたり、鉄球の【投擲】をずらされたりと、かなり、いや、めちゃくちゃ厄介な存在だったのは間違いない。
それでもうまく隙をついて倒せたから良かったけどさぁ……
これまで意識して【柔術】のスキルをそこまで使ってなかったけど今回の戦いで近接攻撃主体の敵にはかなり有効なスキルだとわかったし、これからも積極的に使っていくことにしよう。
というか使わないと本当にもったいないレベルで有用だと思う。
「よし!それじゃあ帰るとする……か?」
俺は帰るために地面から立ち上がると、【気配察知】でこっちに近づいてくる反応があることに気づいた。
……あれ?多くね……?
俺が【気配感知】で感じた気配は一つや二つといったかわいい数ではなく、パッと数えられるだけで少なくとも百体近い数のモンスターの気配を感じた。
……どう考えてもおかしいだろ……
しかも感じられる気配の大きさからして全部普通のゴブリンじゃなくて進化した進化種、それもゴブリングラップラー達と同等だと思う。
てかこの通路での広さで感じるだけで百体?しかももっといるっぽいし……
……やっぱり多すぎない……?
さっきの戦闘音で気づかれたか……?
……う~ん……いやな予感しかしない……
というかあの数はさすがに無理だ。
さっきのゴブリングラップラー達だけでここまで疲労してるんだぞ……
今の状態でこんな数のゴブリンとまともに戦えるわけがない。
てか、戦ったとしても物量で押しきられる未来が容易に想像出来る。
……よし!逃げよう!
魔石とドロップアイテムが回収できないのは痛い、いや、魔石を食べられて強化されるのも含めて痛すぎるけど命には代えられない。
それに、どんな進化種がいるか気にはなるけど、あんな数を相手するのは絶対に無理!
俺はそう結論付けてすぐにこの場を離れようと踵を返して来た道を戻る。
幸い、俺が先に気づけたからゴブリンの進化種達とはまだ距離があるから今なら見つかっても俺の速さならこの場を立ち去れるだろう。
「!?ゴブゥッ!!!」
……なにか距離はまだあるけど後ろから聞こえた気がするけど……後ろは見ない。
今は前だけを見て走る。
……後ろからの声、というか叫び声は気にしな~い気にしな~い。
俺はそんな感じで後ろから聞こえてきたゴブリンの叫びを全力で無視しながら全速力で駆け出すのであった。
***
「……ふぅ……さすがにここまで戻ってくれば大丈夫か……」
俺は息を整えながら周りを見渡す。
出入口辺りまで来たらさすがにもうゴブリン達の気配はしなかった。
きっともう追い掛けては来てないだろう。
「……はぁ~……結局なにも収穫は無かったか……」
俺は少し落ち込んでしまう。
一応、今回の探索と戦闘でゴブリンに更なる進化種がいたのを確認できたのと、レベルが上がったのが収穫と言えば収穫だけど……
「……ゴブリン達の強さと連携が予想以上に厄介だったな……」
俺のペースを完全に崩されてしまってかなりきつかった。
これは今後も油断出来ないな……
それにここのボスがゴブリンエンプレスということは俺が以前戦ったゴブリンキングよりも強いはずだから、ゴブリングラップラー達だけじゃなくて、ボスであるゴブリンエンプレスにもさらに注意が必要になる。
ゴブリンキングがゴブリンメイジやゴブリンクレリック達と連携してたことを考えるとゴブリンエンプレスも連携を、それもさらに進化してるであろう進化種としてくると想定するとかなりきつくなるな……
「ま、今回は仕方ないか。これから情報を集めればいいし……それにしてもエスカリアさん達には悪いけどさすがに一緒にここには入れないよな……」
正直、今の俺でもまだ見たことのないゴブリンエンプレス以外のゴブリン達に勝つことはできると思う。
でも、さすがにあの数をエスカリアさん達を庇いながら相手に戦うのはしんどい。
てか、そんなことしたら確実に死ぬわ。
「さてと……うん?」
『ゴブリンエンプレスの巣』から出ようとしようとした時、出入口の方から音が聞こえる。
……しかも、その音は異世界に続いている方の出入口から聞こえてきている……
ゴブリンかと俺は考えてすぐにでも攻撃できるように両手鎌を構える。
「おい!本当にこっちであってるのか!?」
「間違いないわよ!こっちにゴブリンが来てたの!」
「でも、ここまで全くゴブリンを見てないよ?やっぱり別の場所なんじゃないの……?」
「いや、確かにこの洞窟に向かってゴブリンの足跡が続いてた。だからここで合ってるはずなんだ」
「……皆さん、気を付けましょうね?調査の依頼とはいえ、戦闘の可能性がある危険な場所であることに変わりはないのですから」
声が聞こえてくる。
さっき聞こえてきた音は声だったらしい。
……良かったまだ俺が見たことのないデカイモンスターの足音とかじゃなくて……
その声がゴブリンみたいな知性の欠片もないような声ではなく、ちゃんとした人間の声だったので俺は警戒を解いた。
まあ、この声が悪人だった場合を考えて両手鎌は一応構えたままにはしておくけど。
そして、そのまま少し待機していたら一人目が現れた。
現れたのは身体の要所要所を金属の防具で守った男性だ。背中にはバスタードソードに分類されるような大剣を装備している。
そんな男性のあとからも人がどんどん異世界に続いている出入口から人が姿を表す。
弓を背負った赤毛のポニーテールの女性、木製の杖を手に持っている金髪ロングの女性、ローブを着て短剣を腰に差している黒髪で短髪の顔を隠した男性、いかにもシスターですといった服装の銀髪を三つ編みにしている女性の総勢五人が異世界に続いている出入口からこの『ゴブリンエンプレスの巣』に入ってきていた。




