森と鹿
「おぉ……」
俺は迷宮みたいなダンジョンを抜けてやっと上の階に向かう階段を見つけることができた。
本当に広かった。
多分だが、この階層だけでどれだけの広さがあったんだろう。
少なくとも現れた塔に恥じない広さだった。
「よし、行くか!」
俺はそう言って階段を登る。
階段も迷宮のように大きく、長かった。
というかこれはさすがに長すぎないかな?
階段は螺旋階段になっているのだが、余裕で一階の通路の高さが2階層分くらいある。
まあ、別にどうでもいいんだけどさ。
階段を登り始めてから30分程経った辺りでようやく階段の終わりが見えてきた。
やっと終わりか……そこまで疲れてもいないけどさ。
「…………あれ?」
俺は階段を登り終え、ダンジョンの2階層に入ったのだが、目の前に広がる光景を見て首を傾げる。
「森?」
2階層には木が生い茂っていたのだ。
「なんで?」
確かに『ゴブリンキングの巣』でも草原のような場所だったり、洞窟みたいなところもあった。
だけど、ここは森の中なのだ。
しかも『ゴブリンキングの巣』と同じように太陽がある。
ただ、俺がいるのは森の中だから『ゴブリンキングの巣』の時みたいに直接日を浴び続けるわけではなく、木々の間から木漏れ日が差していて多少暗い程度だ。
それにしても……
「視界が悪いな」
木漏れ日が差しているから明るさ的にはまだ大丈夫なのだが、最初に受けた印象の通り、木々が生えているせいで見通しが悪く、木の根っこもあるから足元も悪い。
こんな自然の中だから罠の類はないだろうと思うけど、一応気をつけながら進もう。
俺は警戒しながらゆっくりと進んでいく。
すると、少し開けた場所に出た。
「……なんだこれ」
そこには大きな湖が広がっていた。
「……綺麗だ」
俺は思わずそう呟く。
俺は今までこういった森の中というのは『ゴブリンキングの巣』から出てきていたゴブリンを倒す時や、『ゴブリンキングの巣』に向かう時に通るだけだったから、こういう景色を見るのは初めてかもしれない。
「ん?」
【気配感知】が俺の前方から近づいてくるモンスターの接近を知らせる。
数は1、2、3……15匹だな。
数が多いな。
湖を挟んだ対岸とはいえ一応警戒はするべきか。
一階のモンスターだったらダンジョンの外で戦ったモンスターばかりだったから不意打ちの必要もなかったから【隠密】の必要がなかったけど、今回は2階層で初めてのモンスターだからな。
とりあえず【隠密】を使って姿と気配を隠さないとな。
俺は湖の近くに生えている茂みに身を隠して【隠密】を発動して姿と気配を隠して対岸の様子を伺う。
すると、俺のいる場所から対岸の茂みがガサガサ揺れだし、モンスターがその姿を表した。
そのモンスターは鹿のようなモンスターで体長も3メートル程もあり、ツノもご立派だ。
そんな鹿のようなモンスターが15匹。
そして、茂みから姿を表した鹿のモンスターはこちらに気づくことなく湖の水を飲んでいく。
「飲めるのか?あの水」
俺は思わずそう呟く。
しかし、モンスターって水を飲むんだ。
まあいいか。
それよりも、今のうちに倒しておくべきだろう。
今あのモンスター達は完全に無防備の状態だ。
そのためにも……
「【鑑定】」
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名前:なし
性別:♂
種族:ワイルドディアLv.25
体力:1050/1050 魔力:300/300
攻撃:350
防御:330
俊敏:255
器用:80
知力:100
幸運:25
所持SP50
魔法スキル:なし
取得スキル:【突進Lv.3】【連携Lv.6】【集団戦闘Lv.2】【危機感知Lv.3】
固有スキル:なし
称号:なし
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おお! ステータスが高い。
それに【突進】と【連携】、【集団戦闘】【危機感知】のスキルを持ってるぞ。
【突進】はその名の通り、突撃する際に威力が上がるスキルみたいだ。
【連携】は以前にもワイルドウルフで見たスキルで仲間と連携して戦うことができるスキルみたいだな。
【集団戦闘】は……よくわからないな。
おそらく【連携】と似たようなスキルで仲間がいると真価を発揮するスキルだろう。
まあ、確認すれば良いや。
これも【鑑定】っと。
すると、スキルの詳細が表示される。
【集団戦闘】
・仲間との集団戦闘時にステータスに低補正。
【危機感知】
・危険を察知することができる。
こんな感じだった。
なるほどな。
ワイルドディアは仲間と一緒に戦うと強くなるタイプのモンスターなのか。
他のワイルドディアも全て同じ感じだった。
つまり、このワイルドディア達はみんなこのタイプということだろう。
だから先に1体でも減らしておきたいんだけど……【危機感知】のスキルがめんどうだな。
俺がこのまま不意打ちしたとしても避けられる可能性が高そうだ。
どうしようかな…… 俺は少し考える。
さっきの感じだと向こうはこっちに気づいていないようだ。
なら、この距離で奇襲できるか試してみるか。
俺は【隠密】を解除して茂みから出て、対岸まで自分の脚力だけで跳ぶ。
ワイルドディア達の方は突然現れた俺に驚いて固まっている。
俺はそのまま両手鎌を構えて、まずは手前にいた1体に斬りかかる。
「はぁ!」
確かに斬った感触はあった。
しかし、ワイルドディアは真っ二つにはならず、浅い傷を与えただけで致命傷には至らない。
「マジでか……」
これは俺が甘えてしまったな。
ワイルドディアと俺のステータスの差から【危機感知】のスキルがあっても大丈夫だろうと油断してしまったのだ。
ただ、こうなった以上は仕方がない。
すぐに次だ。
実際、ワイルドディア達は俺の姿を見て完全に警戒している。
俺はその場で飛び上がって、ワイルドディア達に襲いかかる。
ただ、流石にワイルドディアも反応して頭を振ってツノを当てて対空攻撃をしてくるため、俺は空中で身を翻してワイルドディアの背後に着地する。
そして、後ろから思いっきり鎌を首に向かって振り抜く。
ワイルドディアはなんとかそれを避けようとしたがステータスの差からそれは叶わず俺に首を刈り取られる。
これで1体……
残りは14体だが、ワイルドディア達は俺を警戒したのか、俺の周りを囲むように動いている。
さて……どうしようかな……
魔法は一定の速度だから俺の攻撃を1回は避けたから魔法は期待できないな……
まあ、なんとかなるでしょ!




