フレアの懺悔と……
なんか空くんはっちゃけちゃった。
「それじゃあ、行ってきます!」
受け取った魔鎌『月影』を持ちながら最下層の扉の前に立つ。
「おう!頼んだぜあんちゃん!」
「俺達もここから応援してるぜ!」
扉を開こうとしている俺にダンケルクさん達が声をかけてくれる。
だけど、その中にフレアはいるけどフレアはなぜか神妙な顔持ちでこっちを見てくる。
「……どうかしたか?フレア」
「……いや、そのじゃな……すまん皆、ソラを借りるぞ。ソラこっちに来てくれ」
「え?」
俺は訳がわからないままフレアに連れられて扉から離れる。
そして、ダンケルクさん達から少し離れたところに連れてかれてそこでフレアが俺に声をかけてきた。
「すまぬソラ、どうしても話しておかなければいけないことがあるのじゃ」
「?……何の話なんだ?」
「お主が今から戦うこのダンジョンのボス。ゴブリンエンプレスについてじゃ」
「ゴブリンエンプレスについて?」
ゴブリンエンプレスについては情報が何一つないから何か少しでも情報がもらえるかもしれないのは助かるけど……
「ああ。細かく言うとそのゴブリンエンプレスの持つ武器についてじゃな」
「武器?」
「そうじゃ。ゴブリンエンプレスの武器じゃ」
ゴブリンエンプレスの武器か……
俺が以前戦ったゴブリンキングは鉈と盾を使って戦っていた。
そして、強大な力を使った力任せな攻撃、それに加えてゴブリンメイジの魔法、ゴブリンクレリックの【回復魔法】と【付与魔法】。
ゴブリンキングだけじゃなくてそんな支援してくるゴブリン達もいてかなり厄介だったな。
「それでその武器がどうしたんだ?」
「それは……」
フレアはそこまで言うと一度大きく息を吸って吐く。
そして、決心がついたのか俺の顔を見て言葉を続けた。
「……実は、そのゴブリンエンプレスの大剣を作ったのは……妾なのじゃ!」
「ふ~ん……で?それがどうかしたの?」
な~んだ。
フレアがめちゃくちゃ神妙な顔持ちをしていたからどんなことなのかと思ったら、武器作ったのはフレアでした。
まぁ、そりゃそうだよね。
俺の武器をあれだけの高クオリティで作り上げてるんだから、フレアが武器を作らされてないわけがないんだよな。
ダンケルクさん達だってゴブリンアーマーナイト達の装備を作らされてたっぽいし。
確かにランクは高そうだけど問題ないだろ。
「……ふぇ?」
「いや、だからそれに何か問題があるのか?」
「い、いやいやいやいや。妾があやつの武器を作ってしまったんじゃぞ!?その事についてなにもないのか!?」
「別に?だってフレアは武器を作っただけでしょ?それならなんの問題も無いじゃん」
「えっ!?そ、そうなんじゃが……妾が作ったということに何も思わないんじゃな!?」
「うん」
「即答!?」
むしろ何を思う必要があるんだ?
「そもそも武器を作るってことはなにも悪くないだろ?ましてやこんな状況だろ?」
「じゃ、じゃが妾は魔王軍の……それもソラがこれから戦うゴブリンエンプレスに武器を……」
そういうとフレアは指を絡めて俯いてしまう。
ああ。なるほど。
フレアはこれから俺が戦うゴブリンエンプレスに武器を作ったことを気にしてるのか。
「はぁ……フレア、そんなことを気にしてたのかよ」
「な、なんじゃそんなこととは!妾はお主に謝らないといけぬと思っておったというに……」
俺の言葉を聞いてさらに落ち込んでしまう。
あーもう!
「フレア!」
「な、なんじゃ!?」
俺が突然大きな声を出したせいか、ビクッとなってこちらを見る。
「そんなに俺は弱そうに見えるか?」
「……いや、妾が見た限り最高峰の強さを誇っておる」
フレアは首を横に振りながら答える。
それを見て少し安心する。
どうやら俺の実力はフレアに認められているみたいだな。
「そっか……それじゃあフレア、お前が言ったこの月影は過去最高の出来というのは嘘だったのか?」
俺は月影をフレアに見せながらそう聞く。
「いや!これは間違いなく妾の鍛冶師人生の中で最高傑作じゃ!」
すると、フレアは勢いよく顔を上げて大声で叫ぶ。
それを見て俺は思わず笑ってしまう。
そして、俺はそのままフレアに話しかける。
「ほら、どこに心配することがある?俺はフレアが認める最高峰の力の持ち主だし、武器だってフレアとダンケルクさんが最高傑作だという月影だぜ?」
「う、むぅ……うむ」
まだ納得していないようだが、それでも先程よりかはマシだな。
だけどマシなだけであの鍛冶が終わったあとの笑顔は今のフレアにはない。
「……おし!フレア、作った武器は何個だ?」
「え?な、なんじゃいきなり……」
「いいから答えてくれ」
「わ、わかったのじゃ……ゴブリンエンプレスに作った一つじゃ。これから四天王の武器を作るという時にソラに助けられたからの」
一つか……よし!
それもゴブリンエンプレスに作った武器だけなら……
「それじゃあさフレア、その武器必要?」
「……いや、あれは妾の罪。正直あれも愛してやりたいがあの武器は残してはいけない」
フレアは目を瞑り拳を強く握る。
その表情には後悔の色がありありと浮かんでいた。
「そう……ならさ、俺がもらう!」
「!?話を聞いておったか!?あれは妾の罪!残してはおけぬのじゃ!」
「それがどうした!フレアの罪っていうのは魔王軍に武器を作って渡したことなんだろ?だったらそれを俺がもらえばなんも問題ないじゃん」
「……そんな無茶な……」
フレアは呆れたようにため息をつく。
おいおい。
これくらいで諦められると困るんだけど。
俺はまだフレアを説得するために言葉を続ける。
今から言うことは、かなり恥ずかしいけどこれは言っておきたい。
俺はフレアの肩を掴んで、真剣な眼差しでフレアの目を見ながら話す。
「フレア……無茶でも何でもいいんだよ。そんなに魔王軍に武器を渡したのが罪だと思うならその事実をなくせばいい」
「ソラ……」
「俺はフレアの鍛冶をしている姿が好きだ。あの燃え盛る炎で部屋がオレンジに光る中汗を流しながらもひたすらに槌を振るい続ける姿が好きだよ」
「う、あ……」
「それに、俺はフレアからこの月影をもらった。だから俺からお礼をさせてくれないか?だから俺はフレアの作った武器を受け取る。それでどうだ?」
「……妾は……妾は……っ!」
フレアは顔を赤くしたかと思うと、次は目尻に涙を浮かべて、両手を口に当てて震えている。
「……ふぇ?」
え?なにこの状況?……ってああ!なんか俺めちゃくちゃ臭いセリフを吐いてなかったか!?
やばい、死にたくなってきた……
「ソラ……ありが「よーし!ダンケルクさん達もの所に戻るぞ。フレア!」あ……」
俺は話を遮るようにしてダンケルクさん達のところへ戻ろうとする。
フレアは一瞬ポカンとした顔になったが、すぐに笑って俺を追いかけてきた。
……うん。やっぱりフレアにはあの笑顔が一番似合うわ。
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