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武器と王女

 ドワーフの王女様がいる部屋に入るために思い付いた案、それは壁をぶち壊すこと。


 扉に鍵がない?扉が固すぎて壊せない?


 それがどうした。


 扉がダメなら横の壁を壊して入れば良いじゃない!


「って事で……みなさん!しっかり離れててくださいねー!」


 俺は後ろにいるドワーフ達に呼びかけて距離を取るのを確認して両手鎌を構える。


 魔法で壊しても良いんだけどそれだと威力が強すぎて部屋の中にいるらしい王女様も巻き込んでしまう可能性があるからな。


 だからーー


「ふぅ……ハァァァァアアアッ!!!」


 ーー完全に壁を粉々にして穴を開けるしかない。


 両手鎌を縦に、横に、斜めに振り回す。


 厚いな……


 壁が想像してたより遥かに分厚かった。


 だけど少しずつ少しずつ確かに壁は削れていっていている。


 よしよし!これなら行けるぞ!


 しばらく壁を削っていると【気配感知】が感じている気配がかなり近くなってきた。


 ここまで近づいてきたら……


「全力で!」


 さっきよりもギアを上げて両手鎌を縦に、横に、斜めに振り回す早さを早くする。


 するとさっきまで削れていた壁一部は形が残っていたけどギアを上げると粉々になって形も残さなくなった。


 そしてついに……


「ッ!よっしゃあ!」


 土の壁を崩すことに成功した。


 流石に衝撃なんかは緩和できなかったからまあまあの衝撃が部屋の中に入り込んだと思うから王女様が無事か確認したいんだけど……


「……」


 いた。


 炎のような真っ赤な髪と赤い瞳を持ち、顔立ちも整っていて、見た目は幼いがかなりの美少女が呆然とした表情でこちらを見つめていた。


 よかった……怪我はないみたいだな。


「あ〜えっと……大丈「そうか……死神が罪人である妾を殺しに来たのか……」……うん?」


 俺が大丈夫ですかと聞こうとしたら少女は何を思ったのか目を閉じて俯きながらそんなことを呟いていた。


 ……てか死神?


 ……ああ、俺の事言ってんのかな?


 確かに俺の今の見た目は壁に穴を開けるために使ってた両手鎌を肩にかけてるし短いけどローブを着てる。


 ……なるほど、俺だわ。


「ならばいっそのこと……一思いに」


「ちょっ、ちょっと待ったぁああっ!」


 俺は何かを諦めたように呟く彼女に慌てて声をかける。


 このままじゃまずいことになる予感しかしない。


「……なんじゃ……最近の死神は話しかけてくるのじゃな……」


「いや、そもそも死神じゃないですしそれに死ぬわけでもないんで落ち着いてください」


「……どういうことじゃ……」


 彼女は困惑した表情をしながら俺の方を見る。


 とりあえず話を聞いてくれそうだ。


「それは「「「お嬢~!!!」」」……」


 彼女が落ち着いたところで説明しようとしたら、後ろからドタドタと足音をたてて何人かのドワーフ達が走ってきた。


「みんな!」 


 彼女の方を見ると安心したような嬉しそうな顔をしていて、周りにいる人達も泣いて喜んでいる。


 ただ説明する前に来ちゃうんだもんな……


 ドワーフ達や王女様の様子を見る限りしばらく落ち着かなそうだししばらく待つか。


 ***


「す、すまぬな!まさか本当に助けに来てくれるとは思わなかったもので……」


「いえいえ、気にしないで下さい」


 あれからしばらくしてようやく全員落ち着きを取り戻し、今は彼女ーーフレア・アルバス・エルザ王女と向かい合って話をしている。


 ちなみに他のドワーフ達は静かにその場に座って成り行きを見守ってくれていた。


「改めて名乗ろう。妾の名はフレア・アルバラ・エルザ。ドワーフの国、アルバラの王国の第二王女じゃ」


「俺の名前は神山空。見ての通り死神ではなく人間ですよ」


 自分で言いながら若干悲しくなってきた。


「それではソラと呼ばせてもらうのじゃ。妾のことはフレアと呼んで欲しいのじゃ。そして敬語はいらぬぞ?どうにもむず痒くて仕方がないのじゃ」


「わかりまし……わかったよ。それなら俺も普通に接しさせてもらうよ」


「うむ!それでよい。さて……話はダン爺に聞いたが妾達を助けていただき感謝する。それでこれからなのじゃが……」


「それならもう決まってるよーー」


 俺はこれからの脱出のプランについて話す。


 それを聞いたフレアは最初は驚いていたがすぐに納得してくれた。


 いや~本当に良かった。


 これでもしダメだったらどうしようかと思ったよ。


「なるほど……正直不安もあるが妾達が今助かるにはそれしかないのなら従うしかあるまい」


「信じてくれるのか?」


「もちろんじゃ。お主が悪人ではない事はすぐにわかるからのう」


 そう言って微笑みかけてくれた。


 いや〜こんな可愛い子に笑顔で見つめられられると照れますな~


「ん?どうかしたのか?」


「ああいやなんでもない!それより早速行こうと思うんだけど準備はいいか?」


「……いや、行く前にソラ、お主の武器を一度見せて欲しいのじゃ」


「ん?別に良いけどなんでまた急に……」


 俺が疑問を口にするとフレアは真剣な表情をしてこちらを見てくる。


「理由は後で説明する。とにかく頼むのじゃ」


「……わかったよ」


 そこまで言われたら断れないな。


 俺は【アイテムボックス】に仕舞っておいた魔鉄の両手鎌を取り出して手渡す。


「……なるほど。魔鉄製の両手鎌か……むっ?これは不味い……」


「うわっ!これはかなり……」


「……おぉう。こりゃとんでもねぇな」


 俺が両手鎌を渡した後、フレアはなぜか驚いた表情をしていたのだがさらに今度は焦りだしてブツブツと独り言を呟き始めた。


 さらに周りで見守るだけだったドワーフ達も集まって意見を交わし始める。


 ……てか今不穏な言葉が聞こえてきたんだけど……なに不味いって?


「ふぅ……待たせてすまんのう」


「いや、それは良いんだけど……なにか問題でもあったのか?」


 俺の問いにフレアは困ったように苦笑いをする。


 ……うん。この反応はかなりヤバい気がしてきた。


「実はな……その鎌なのじゃがな、かなりガタが来ておってな。誤魔化されてはおるがつかの芯にもガタがきておるし、よく見たら刃の方にも歪みが出ておる。このまま使ったら武器として使えなくなる可能性が高いのじゃ」


「……マジですか」


「ああ、マジじゃ」


 ……マジなのか~……


 まあ、俺よりも遥かに長い間武器や防具に関わってきたドワーフの職人達が意見を交わした結果がこれなんだ。


 フレアだってこの部屋にある道具なんかを見れば武器や防具を作るために鍛冶をしたきたことだってわかる。


 そんな人が言うんだから間違いないだろう。


「そっか……それは残念だけど仕方ないな」


「う、すまないのう。せっかく助けてもらったというのにいきなりこんなことを言ってしまって……」


「気にしなくていいよ。むしろ今までずっと使ってたんだから手入れはしたとは言え、ここに来てから急に品質の高い武器や防具と打ち合わせちゃったちゃったんだし無理もないさ」


 本当に気にしないでほしい。


 こんな状況になってからずっと一緒に戦ってきた相棒なんだ。


 愛着もあるから大事にしたい気持ちはあるけからまた一から作り直したいけどそんな余裕も無さそうだし。


「そうか……ならば妾達にお主の武器を鍛えさせてはくれぬか?」


「え?それはどういう……」


「うむ。ソラの脱出のための作戦を聞くにかなりの時間がありそうじゃ。妾達が総動員でこの魔力炉に魔力を込めれば十分に武器を鍛える時間は取れよう」


 そうか……どうするかな……


 確かにこの状況で少しでも戦力が上がるのならそれに越したことは無いだろう。


 とてつもなくそれはありがたいんだよ。


 ……まあ、愛着はあるけど仕方ないか。


「わかった。それじゃお願いするよ」


「うむ!任せるのじゃ!」


 俺の言葉に満面の笑みを浮かべるフレア。


 うん。やっぱり女の子の笑顔は良いもんですな~


「それじゃさっそく取り掛かるのじゃ。皆の者!準備に取りかかるのじゃーー!!」


「「「おおぉぉぉ!!!」」」


 こうして俺の新たな武器造りが始まった。


 ドワーフ達は雄叫びと共に部屋においてあった金属や鉱石などをかき集め、フレアが魔力炉と呼んでいた炉に火を入れていく。


 そしてどんどん炎が燃え上がっていき、熱風が吹き荒れて少し暑いくらいだ。


「よし!ソラ、準備ができたのじゃ!今から作業に入るからの~……そうじゃな……五時間!それだけもらえれば十分じゃ!」


「わかったよ。それじゃあ俺は作戦通り、ゴブリン達を殲滅してくる。後は頼んだよ」


「うむ!必ず完成させるのじゃ!」


 フレアに見送れて俺はその場を離れる。


 さてと……これから忙しくなるぞ。


 エスカリアさんの事を一切話していないのにこんな初対面の俺を信用してくれたし武器も作ってくれるって言ってくれたんだ。


 それだけ信用されたら全力を尽くさないわけにはいかないな。


 まあ、最初から全力なんだけど。


「さてと!まずはゴブリン達の殲滅だ!」


 俺は自分に気合いを入れるため声を出して走り出す。


 ヒャッハァッー!!!ゴブリン狩りじゃい!!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。

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