考えとこれから
鋼鉄の片手剣を全部【アイテムボックス】に入れた後、考えるために一旦その場で落ち着いて考える。
さて……ドワーフの職人達がここにいるのはわかったけど……どうしよう。
助けに行くのはもちろんとして、問題はその後なんだよなぁ。
まず、ドワーフの職人達がどこに捕まっているのかわからない以上動きようがない。
それに加えてもし救出に成功したとしても、今俺がいる階層は五階層。
ここまでドワーフの職人達が居そうな場所や怪しい場所は一個もなかった。
つまり、ここからさらに下の階層にドワーフの職人達がいるということになる。
そうなってくると……
「どうやってドワーフの職人達を見つけて、助けるかってことになるよな~……」
ドワーフの職人達を見つけるまでは下の階層に降りていきながら【気配感知】を使えばそのうち見つかると思う。
だけど問題はその後。
ドワーフの職人達を見つけたとしてもそれからが問題になる。
ドワーフの職人達を見つけてもこの『ゴブリンエンプレスの巣』から逃げ出せるとは限らない。
俺も努力はするけどまず間違いなくドワーフの職人達は職人と言われる程に物作りに精通しているから戦闘はできないだろう。
そんな人達を複数人、それもドワーフ王国の王女様もいる可能性だってあるんだ。絶対に守らないといけない。
となると、助けた後最低でも五階層分は戦闘できない複数人をゴブリンアーマナイト達から守りながら『ゴブリンエンプレスの巣』から脱出させる?
……なんて無理ゲー?
そんなことしたら普通に全滅確定だぞ?
一人二人ならまだしも、そんな大勢の職人を守りながら戦うなんて絶対無理だ。
「どうするかな……」
とりあえず助けた後の脱出方法を考えてみる。
一つ目。俺がゴブリンアーマナイト達を一階層まで片っ端から倒して殲滅する間、職人組にはどこかに隠れていてもらい、ゴブリンアーマナイト達を殲滅した後一気に『ゴブリンエンプレスの巣』から脱出する。
だけどこれは実際、ドワーフの職人達がどこにいるか現時点ではわからないから殲滅するのがどれだけの階層になるかわからないから却下。
二つ目。俺がドワーフの職人達が居るであろう場所を探し出して、ゴブリンアーマナイト達に見つからないようにドワーフの職人達を連れてくる。
……これも却下。
ドワーフの職人達が何人かもわからないし、見つかったらその時点で戦闘が始まってドワーフの職人達を庇いながら戦闘しなきゃいけなくなる。
下の階層から来たゴブリンアーマナイト達に背後を取られてまたドワーフの職人達も連れていかれるかも知れないしな。
三つ目。……正直一番やりたくない、本当にやりたくないけど脱出するだけならこれが一番確実だ。
……それは、先にゴブリンエンプレスのいるボス部屋を見つけ出してからドワーフの職人達をゴブリンエンプレスのボス部屋の前まで連れていく手段。
これなら『ゴブリンキングの巣』と一緒だったらという前提がつくけどボスを倒したら魔方陣に乗ってドワーフの職人達と脱出できる。
先にボス部屋から二階層分ぐらい殲滅しておけばドワーフの職人達が襲われることはない……はず。
「……今思い付くのはこんなところか」
うーん……でも結局、ゴブリンエンプレスを殺さないとダメなのか。
ゴブリンアーマナイトでさえあんな強さなんだ。
ゴブリンエンプレスがどんな強さになってるか正直考えたくもない。
だからといってドワーフの職人達がここにいるのがわかってて見捨てることもできない。
というか絶対にしたくないし、万が一、億が一にもそんなことをすれば俺は一生後悔することになるだろうし。
だからやるしかないんだけど……
「……よし!とりあえず、その方向で作戦を練っていこう!」
途中で他にもっと良い方法が見つかったらその時はその時に考えればいいしな!
そうと決まれば……
「まずは情報集めからだな」
作戦を練るにも、ドワーフの職人達を助けるのにも、まず情報が足りなさすぎる。
今必要なことは、ゴブリンエンプレスの居場所とドワーフの職人達の位置、そして俺のレベル上げに最適な階層。
それらを早く把握しないと。
前半二つは勿論、最後の俺のレベル上げに最適な階層はドワーフの職人達の位置ぐらい重要なことだ。
作戦通りドワーフの職人達を助けてボス部屋の前で待ってもらっていたとしても、俺がゴブリンエンプレスに勝てなきゃ意味がない。
そうじゃなくても、もし仮に俺が負けた場合、最悪そのままドワーフの職人達が殺される可能性もあるわけだしな。
今回ばっかりは油断も慢心も絶対にできない。俺が負けると俺だけじゃなくてドワーフの職人達の命に関わるんだから。
だから必ずゴブリンエンプレスと戦うとしたら俺の全力が必要になる。
そのためにレベルを上げておいて損はない。
「……よし。それならまずはゴブリンエンプレスがいる階層を把握しないとな。……この階層じゃないだろうからとりあえず次の階層に行くか」
そう決めた俺はまた【マップ】と【気配感知】を使ってゴブリンを倒しながら下の階層に続く階段を探すのだった。
ちゃんと余力を残すために戦闘を避けてな!