確認とヤバい戦法
今回ちょっと長いです
光が収まるのと同時に、俺は自分の身体を確認する。
「……うん、特に問題なし」
職業が変わったからといって見た目が大きく変わったりということはないんだから当たり前と言えば当たり前なんだけどな。
さてと……スキルの方は……
「ステータス」
------
名前:神山 空
性別:男
年齢:16歳
種族:ハイヒューマンLv.79
ゴースト(亜種)Lv.76
職業:死霊魔術師Lv.1
賢者Lv.1
体力:10345/10345 魔力:28365/28365
攻撃:8975
防御:4365
俊敏:7680
器用:5430
知力:21435
幸運:1765
所持SP1225
魔法スキル:【風魔法Lv.7】【火魔法Lv.7】【付与魔法Lv.5】【回復魔法Lv.3】【水魔法Lv.1】【死霊魔法Lv.1】
取得スキル:【暗記Lv.4】【速読Lv.2】【柔術Lv.8】【鑑定Lv.6】【看破の魔眼Lv.5】【飛翔Lv.6】【怪力Lv.6】【跳躍Lv.3】【斬撃強化Lv.5】【頑強Lv.5】【吸収Lv.9】【アイテムボックスLv.6】【錬金Lv.6】【鍛冶Lv.3】【絵画Lv.4】【マップ】【気配感知Lv.7】【拳術Lv.7】【隠密Lv.6】【投擲Lv.3】【武器術Lv.5】
種族スキル:【魔力操作Lv.9】【魔力増加Lv.7】【物理攻撃耐性Lv.5】
職業スキル:【知力強化Lv.8】【魔力消費減少Lv.6】【魔法威力上昇Lv.6】
【並列魔法Lv.2】【首狩りLv.6】【無詠唱Lv.1】
固有スキル:【吸魂Lv.6】【デスサイズLv.3】
称号:境界の管理者の協力者
無慈悲なる者
首狩り族
------
なるほど……【死霊魔法】に【無詠唱】か。
……【鑑定】!【鑑定】!
【死霊魔法】
・魂を使役し、死者や魂自体を操る事が出来る。
【無詠唱】
・イメージを鮮明に思い浮かべる事で、魔法を詠唱しなくても発動できる。
・威力は下がり、消費MPは上昇する。
・スキルレベルに応じて威力は上昇し、消費MPは減少する。
……よし。
【死霊魔法】は俺の想像通りの効果だな。
まあ……これはちょっと使ってみないとなんとも言えないけど、まあ、これに関してはおいおい検証していこう。
【無詠唱】は予想通り、という感じかな。
……ちょっと、このスキル試してみたいからちょうどいい的いないかな?
***
移動してきて現在、俺は三階層にいる。
二階層から【マップ】を使って三階層までゴブリンを探して移動してたんだけど……
……ゴブリンがいねぇ!!
昨日来るなって思ってたタイミングで来てたのにこういう来てほしいって思ってる時に全然こないな~
まあ、仕方がない……今日は諦めよう。
そう思って踵を返そうとした時だった。
「お?」
ゴブリンを探すために使ってた【気配感知】のスキルが反応を捉えた。
「おっ!ラッキー!」
気配の大きさと数からして、強さはゴブリンアーマーナイトレベルで、数は五体くらいだ。
とりあえずその気配が感じられる方へと向かう。
気配の感じる方へとしばらく走ると、少し開けた場所に出た。
パッと見は特に変な所はないように見える。
だけど、咄嗟に見えた存在から姿を隠す。
「……いた」
俺隠れながらこっそりと開けた場所を見ると、開けた場所にはゴブリンアーマーナイトが二体、ゴブリンアークメイジが二体、ゴブリンハンターが一体いた。
ゴブリンアーマーナイト達は立ち位置はバラバラだけど円になりながら何か話しているのか鳴き声を上げている。
何を話しているのかは俺には全くわからないけど、何となく言い争っているのはわかった。
……まあ、新しいスキルと魔法を試したいし、何言ってるかわからないゴブリンの言い争いなんて聞いててもわからないからさっさと倒す事にしよう。
「……ふぅ……」
息を整えて集中する。
……まずは【無詠唱】からだな。
気づかれてないんだから不意打ちでもした方がいいだろ。
【死霊魔法】を【無詠唱】で二つまとめて試そうにも【死霊魔法】は死体も魂もないんだから、【死霊魔法】の魔法を使う事ができないしな。
せっかく声で気づかれることもなく【無詠唱】のおかげで完璧な不意打ちもできるんだからこの機会にやってみたいと思う。
じゃあ早速……
……頭の中でイメージを固めていく。
イメージする魔法はいつも使っている【ウインドカッター】。
これならイメージがしやすい。
薄く、風で作られた刃をイメージする。
そしてそれを、今目の前にいるゴブリンアーマーナイトの首に向けて……
発射!
俺の掌から放たれた風の刃は狙い通りに飛んでいき、見事ゴブリンアーマーナイトの首に命中し、そのまま音もなくゴブリンアーマーナイトの首を斬り裂く。
すると、声を上げる間もなくゴブリンアーマーナイトは地面に倒れて身体は塵になって消えていった。
それを見た残りの四体は何が起こったか理解できていないのかさっきまでの鳴き声は止まって、ただ呆然としている。
だがそんな事は関係ない。
「【看破の魔眼】」
これから使う【死霊魔法】は説明にもある通りだから確実に魂に関係するだろうから先に目に魔力を流して【看破の魔眼】を発動させる。
すると、俺の視界に最近は見ることのなかった青白い色の魂が映し出されていた。
……ついでに声を出したからゴブリン達に気づかれた。
……まあ、いいや。
これで準備完了だ。
後は魔力を掌に行き渡らせて魂に掌を向ける。
今度の魔法は使ったことがないからイメージも糞もないし、しっかり魔法の名前を唱える。
「【魂操作】!」
俺は新しく覚えた【魂操作】をゴブリンアーマーナイトの魂に向かって発動させた。
俺の掌から発射された紫色のオーラに包まれた黒い球体がゴブリンアーマーナイトの魂を包み込む。
それからすぐに変化が起きた。
ゴブリンアーマーナイトの魂がゴブリンのような身体を形作っていく。
「……」
ゴブリンアーマーナイトの身体が作られるとゴブリンアーマーナイトの魂は何も言うことなく無言でその場に立ち尽くしていた。
ゴブリンアーマーナイトの身体は鎧や剣、大盾なんかはないけどその身体だけでも十分武器に使えるくらい筋肉質な身体をしていた。
「よし!成功だ」
そんな感じで魔法を試しているともうゴブリン達に気づかれているからなのか、ゴブリンアーマーナイトがこっちに走って向かってきている。
「……ちょうどいい」
俺は【魂操作】を使ったゴブリンアーマーナイトの魂に魔力を流す。
するとさっきまで何も言わずに立っていただけのゴブリンアーマーナイトの魂に繋がりのようなものが出来たのが感覚的にわかった。
そして繋がった事を確認すると俺は自分の意思を伝えるようにゴブリンアーマーナイトに命令をする。
「行け!」
俺の命令を聞いたゴブリンアーマーナイトは走りながら右手を前に出して手を開く。
「……!」
【魂操作】を使ったゴブリンアーマーナイトの魂は拳を握ってゴブリンアークメイジに殴りかかる。
ゴブリンアーマーナイトの魂は俺みたいな【看破の魔眼】がないから狙われてるゴブリンアークメイジにもゴブリンアーマーナイトの魂の居場所はわかっていない。
だけど、ゴブリンアーマーナイトの魂は俺の指示に従っているからそんなの関係ないとばかりにゴブリンアークメイジの胸に握りしめた拳を突き立てる。
「!?グ、グルァァア!!!」
俺に気づいて詠唱を始めていたゴブリンアークメイジだったが、詠唱を止めて胸を抑えながら叫び声をあげる。
でも、ゴブリンアークメイジの胸には傷は一つもない。
……ゴブリンアーマーナイトの魂に攻撃されたのに傷がついてないのと、痛がってるのから考えると、魂の攻撃は身体には作用しないで同じ魂に作用するんだろう。
それで魂に攻撃されたから身体に幻痛と同じような原理で痛みが感じられた。
まあ、俺の【デスサイズ】と同じような原理だな。
まあ、原理はわかったけど、とりあえずそれは置いておくとして……
「これじゃ倒しきれなそうだな……」
結局【デスサイズ】と同じように魂に攻撃する事で痛みを感じさせるだけで、倒せるわけではなく、ただ単に痛みで動きを止めるだけになっている。
そうなると【魂操作】を使うにはまずは相手を倒さなきゃいけないから【デスサイズ】より使い勝手が悪い。
これは取得したばっかりだから仕方がないところもあるかもしれないけど……
「……しょうがない」
考えてたもう一つの使い方を試すために俺は【並列思考】を使ってゴブリンアーマーナイトの操作とこれから俺がする行動を同時に行う。
まずはゴブリンアークメイジが突然苦しんだ事で俺が何かしたと考えているのか攻撃してくることのないゴブリンアーマーナイト達にゴブリンアーマーナイトの魂を近づけておく。
「【デスサイズ】」
そして、同時に俺も警戒してその場から動かないゴブリンアーマーナイト達に向かって黒い靄の纏わりついた両手鎌を構えて駆け出す。
「ゴブァッ!」
それを見たゴブリンアーマーナイトは慌てて持っていた片手剣を振り下ろす。
でも、遅い。
剣の刃が届く前に俺は両手鎌を振って両腕、両脚を肘から先、膝から先とそれぞれ切りつける。
すると、俺が切りつけた場所から先に力が入らなくなったのか、腕や脚がだらんと垂れ下がって地面に伏していた。
これでよしっと。
後は痛がってない方のゴブリンアークメイジとゴブリンハンターだけど、その二体は詠唱をまた始めたのと弓を構え始めたのを見た瞬間ゴブリンアーマーナイトの魂でまた痛みで行動を止めたからよし!
さてと……俺の予想が正しかったら……
「【魂操作】」
今度の【魂操作】は四肢に力が入らなくなって地面に伏しているゴブリンアーマーナイトに向けて使う。
さっきとは少し違うけど、黒い球体がゴブリンアーマーナイトの身体に入り込む。
そして、そこに魔力を流し込む。
すると、また魂に繋がりが四つ出来たのが感じられた。
確認のために出来た繋がりを通じて地面に伏しているゴブリンアーマーナイトに命令を下す。
……動け。
「ゴブ!?」
ゴブリンアーマーナイトは驚いたような声を上げているが、さっきまで動かなかったのが嘘のように起き上がっていた。
「……よしうまくいったな」
それも当然、ゴブリンアーマーナイトからしたら身体が勝手に動いたわけだし。
これはもちろん俺がやっているのだが……予想があってて良かった~
俺の予想と言うのは、まず、【デスサイズ】は魂に直接攻撃して一時的に機能不全にするもの。
そして、今回新しく覚えた魔法である【魂操作】は魂に干渉して操作するものだった。
この二つから、【デスサイズ】が魂に攻撃して機能不全にするものなら、魂は神経系のような役割も持っていると考えた俺は身体に命令をする頭の魂から切り離した場所なら倒さなくても【魂操作】で操る事ができるんじゃないかと考えたんだけど……
俺の予想通り、今みたいに生きていても【魂操作】で操作できるようになった。
まあ、魂と繋がったのが両腕両脚の合計四つだったのは想定外だったけど……
「まあ、結果オーライかな?」
そう呟きながらゴブリンアーマーナイトにゴブリンアークメイジ、ゴブリンハンターに攻撃するように指示を出す。
ゴブリンアーマーナイトの魂は死んだ後の魂に対しての【魂操作】と違って意識があるからか、俺の命令を聞いて勝手に動き出した身体を止めようとして身を捩っているが鳴き声を上げながらゴブリンアークメイジに殴りかかる。
ゴブリンアーマーナイトの魂はゴブリンアークメイジの顔面に右ストレートを叩き込み、ゴブリンアークメイジはそのまま後ろに吹き飛ばされていた。
「ゴブッ!?」
そして、ゴブリンアーマーナイトの攻撃はそれでは終わらず、ゴブリンアーマーナイトは次にゴブリンアークメイジが落とした杖を持つとそれをゴブリンアークメイジに投げつけようとする。
「ゴブゥッ!ゴブゥッ!」
だけど、ゴブリンアーマーナイトは泣き叫びながらなんとか止めようとしているのが伝わってくる。
「……」
……だからゴブリンアーマーナイトが行動を起こす前にゴブリンアーマーナイトも、ゴブリンアークメイジも、ゴブリンハンターもオレガノ両手鎌を使って首を切り裂く。
すると、ゴブリン達は塵になって消えていった。
『種族レベルが上がりました。ハイヒューマン……
・
・
・
ゴブリン達が消えていったのと同時にレベルアップのアナウンスが聞こえてくる。
……うん……
「後味わっる!!!」
ゴブリンだろ?とか思うかもしれないけど、とにかく今の戦法は罪悪感とかもろもろが俺の心にダイレクトアタックしてきて心が痛いし後味が悪すぎる!
確かに使えるからこれからもこの戦法は使っていきたいんだけど……
……うん、四肢じゃなくて今度からは頭狙おう……そうしよう。