《ダンジョン》と《迷宮》
記念すべき?100話目です!
ここまで長く付き合っていただきありがとうございます。
これからも『現実にモンスター?ダンジョン?じゃあとりあえず狩りますね。固有スキルと称号で成長チート~サクサクレベルが上がってレベル上げが楽しいです~』をよろしくお願いします。
『種族レベルが上がりました。ハイヒューマン……
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レベル上がったからとりあえずゴブリンとの戦闘は終わりっていう認識でいいな……
それにしても、人がいても俺の正体がばれないように戦わなくていいっていうのは気が楽だった。
これまではこのダンジョンでしか普通に戦闘できなかったし、それ以外人がいたらはフードが外れて正体がばれないように警戒しながらだったからな。
まあ、今はそんなことどうでもいいか。
じゃあ……とりあえず【吸魂】してと……
「【吸魂】」
……ガンツさん達には聞こえないとは思うけど、一応呟く程度の大きさで言っておいた。
するといつもの感覚が体のに広がっていく。
『ゴブリンアーマーナイトの魂の吸収を確認しました……
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……よし。
【吸魂】してレベルが上がってステータスが上がったことや、スキルやらが成長したのを確認した俺はガンツさん達がいる方を向く。
すると、まだ口があんぐりと開いたまま固まっているガンツさん達が俺の目に映った。
「あのー……」
俺は恐る恐る声を掛けると、ガンツさんはハッとして正気に戻る。
そして、ガンツさんが代表して話し掛けてきた。
「お前は……一体何者……いや、まずはありがとう。お前のおかげで助かった」
「いえ、別に気にしないでください。えっと……俺は神山空です。皆さんは?」
「あ、ああ。俺はガンツだ。一応このパーティーのリーダーをしてる。それでこいつらが……」
そういってガンツさんが戸惑いながらも促し、サラさん達もハッとしてからそれぞれ名乗ってくれた。
「私はサラよ。よろしくね」
「リカよ。本当に感謝するわ。あなたがいなければ私達全員殺されてたかもだし……」
「ライオだ。さっきは助けてくれてありがとな」
「わたしはテトラです。ご助力いただき誠にありがとうございます」
バスタードソードを持ったガンツさん、赤毛のポニーテールの女性がサラさん、金髪ロングの女性がリカさん、顔を隠した男性がライオさん、シスターのような服装の女性がテトラさん。
うん、覚えた。
「はい、こちらこそ。ところで怪我は大丈夫ですか?」
「ああ、テトラが治してくれたから題ない。それにしても……くっそ!ゴブリンアーマーナイトども、なんだあの強さは!」
「それってどういうことですか?」
「それがね、私たちのパーティーは『宵闇の月』っていうBランクのパーティーなの。その中でもガンツとリカはAランクに近い実力があるはずだからBランクのゴブリンアーマーナイトにガンツの攻撃があんなに簡単に攻撃を止められるのはおかしいのよね」
「確かに、あいつらの動きは明らかにおかしかったな。動きが速すぎる」
そういうと、ガンツさん達は黙りこんでしまった。
……う~ん……覚えがあるぞ。
元のモンスターがさらに強くなる、その現象に。
「あの~」
「うん?どうした?」
俺はおずおずと話し掛けると、ガンツさんが反応してくれる。
「ゴブリン達が強くなっていた事に心当たりがあるんですけど……」
俺の言葉にガンツさん達の目が見開かれた。
そして、すぐに俺に詰め寄ってきて俺の両肩に手を置いて……って痛い!痛いって!
俺が痛みを訴えようとすると、ガンツさんが真剣な表情で俺を見ていた。
サラさん達を見回してもサラさん達も同じような表情をしている。
「詳しく教えてくれ!」
ガンツさんにそう言われ、俺は少しだけ話し始めることにした。
「えっと……あれはゴブリンが魔石を食べて、ステータスが上がっていたんだと思います」
元のゴブリンアーマーナイト達のステータスがわからないから推測でしかないけどこれで合ってると思う。
俺がそう言うとガンツさん達は目を大きく開いて驚いた様子を見せた。
そして、ガンツさんが確認するように聞いてくる。
「ゴブリンが魔石を……?だけど、そんな話は聞いたことがないぞ……お前らは?」
「私も聞いたことないわね」
「あたしもよ」
「俺もだ」
「わたしも……だけどいつからかわかりませんが、今まで発見されなかった未発見のダンジョンですからね。わたし達が知らない事が起こってても不思議ではありません」
「まあ、俺は実際に見てますから信じてくれとしか言えないですね……」
「そうか……正直このダンジョンがいつからあったのかわからないがどれだけ魔王軍が関わっているかによってはかなりやばいな……」
「……どういうことなんですか?」
「……おいおい、これって一応常識の範囲の話だろ?まさか……知らないのか……?」
「はい、全く知りません」
俺がそう答えると、ガンツさん達はまたもや固まってしまった。
そして、数秒後にガンツさんが復活して話し掛けてくる。
「たっく……世間知らずってレベルじゃねえぞ」
「ははははは……すいません……」
「まあいい。それじゃあ説明してやるよ。まず、ダンジョンっていうのは魔王軍が侵略のために作ったものだ」
「そうですね……」
……ちょっと待て……知らなかったんだけど……
とりあえず常識らしいしあんまり知らない事が多いと変に疑われそうだから知ってるようには言ってみたけどマジで知らない。
……後でエスカリアさん達に聞いておこう……
「おお、それはさすがに知ってたか。じゃあ話を戻すとだな、作るまでは魔王軍が関わってる事が確定なんだが、その後、魔王軍が侵略に使うために管理してる《ダンジョン》とそうでない魔王軍以外の種族を妨害するためだけに作った《迷宮》があるんだ。まあ、迷宮は逆に利用して迷宮都市なんてものもあるくらいだからな」
「そうなんですね」
「それで、俺たちが今いるここが迷宮だったらギルドに報告して終わりなんだが、ダンジョンだったら魔王軍が侵略のために戦力、それもソラの話を聞く限り強化されているだろう戦力が来ている事になる。その場合、魔王軍との本格的な戦争になる可能性もあるんだよ。だから初めてダンジョンに入るときはその事を考えてはじめから迷宮とは考えないでダンジョンって考えて行動するんだ」
「なるほど……」
……なるほど……これは結構重要な情報だな……
あの東京に出てきたばかでかい塔、あれはまず間違いなく魔王軍が管理してるダンジョンだろう。
なんの意味もなくわざわざこっちの世界に迷宮を置く意味がないからな。
なんでダンジョンができてるかはわからないけど……思っていたより状況が悪そうだな……
しかもあの大きさだしボスの強さも相当なものになってるはずだ。
……やっぱりレベル上げとスキルレベル上げが課題だな……
「ソラ、お前はこれからどうするつもりだ?」
「ガンツさん達はどうするんですか?」
「俺達はまだここに残って調査をー「そんなわけないでしょ!ここの事も報告しなきゃいけないんだから一回街に戻るわよ!私達ソラくんがいなかったら危なかったんだから!」」
「そうね、それがいいと思うわ」
「サラに賛成だ。一度退却した方がいい」
「わたしも賛成です。確かに調査も大事ですが命の方が大切ですよ」
「……というわけだから俺達は一旦戻ることにするぜ。お前さんにもさっきの説明のためにもギルドに来てほしいんだがな……無理なら仕方ないが……」
「そうね。ソラくんにもまた詳しく説明してもらいたいから一緒に来てくれると助かるんだけど……」
ガンツさんとサラさんは俺に気を使ってくれてはいるけど、ついてきてほしそうな顔をしている。
それはリカさん達も一緒だ。
……いまここで街に行くのも正解だとは思う。
だけど、ダンジョンの事とかがわかった以上、一回家に帰ってエスカリアさん達に詳しいことを聞いておきたいんだよなぁ……
ダンジョンについてはだいたいガンツさんが説明してくれたからほとんど知れたとは思うけど一応ね。
それにガンツさん達と出会ってしまったから、これからもエスカリアさん達以外の異世界人に出会う可能性もあるから異世界についての常識やらなんやらがあんまりないのも俺が困るし。
というかこのままついていったらどこかでボロが出てきそうで怖い。
「誘ってもらえるのはありがたいんですけど……すいません。俺は一度家に戻って仲間達と詳しい事を話し合いたいんで今回は遠慮させてもらいます……」
「そうか……残念だが仕方がないな。それじゃあ俺達は街に戻らせてもらってもいいか?」
「はい、もちろんです」
「よし、それじゃあお前ら、街に帰るぞ。それじゃあな、ソラ。よかったら仲間と話し合ったらその仲間と街にも来てくれよな」
「またねソラくん」
「さようなら、ソラ」
「じゃあな、ソラ。街に来たら飯ぐらいなら奢ってやるからな」
「それではソラさん。お元気で」
「はい!皆さんもお元気で!」
そして、ガンツさん達は異世界に繋がっている出入口から『ゴブリンエンプレスの巣』の外へ出て行った。
俺も『ゴブリンエンプレスの巣』から出たら少し休憩して帰るかな……
そう思いながら俺は『ゴブリンエンプレスの巣』の外に繋がっている方の出入口から外に出た。
……ガンツさん達戻ってきてないよな?大丈夫だよな?
今『ゴブリンエンプレスの巣』に戻ってこられてたら困る!
俺が別れたばかりなのに俺がいないのを見られでこっちの出入口を確認されて進めないのを確認された後に俺が『ゴブリンエンプレスの巣』に入る時に鉢合わせたりしたら面倒だ。
……まあ、いいか。戻ってきていた時は戻ってきてた時だな。
なにかあったら言い訳は任せたぞ、そんな事が起こっちゃった世界線の俺。
そんな下らない事を考えながら『ゴブリンエンプレスの巣』の入り口付近の切り株に座って戦闘の疲れを癒してから家に【飛翔】スキルを使って帰ったのだった。
……うん。肉体的にも精神的にも疲れたわ……