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⑥ 白水 雪という少年

 お寺でよく話すのが、最初に会った雪の中の少年だった。


名前は白水雪シラミズ セツと言う。

長い黒髪に白い肌、黄金色に緑がちりばったような瞳が特徴の少年だ。

モスグリーン色の瞳と形容した方が早いかもしれない。


柔和な雰囲気を持つ彼は、いつもにこにこしているのだが、たまに何を考えていのるか分からない様な不思議な雰囲気があった。


それでも、凛太朗がバカをやったりボケたりすると、淡々とした様子で突っ込んでくれるのであった。


彼は二年前に初めて会った時から姿が全く変わらない。

凛太朗は20cmも身長が伸びたのに対し、雪は1mmたりとも伸びていない様子だった。


昔は凛太朗の方が低かった身長も、今では10cmも追い越した。

同じ男として少し哀れに思ったが、人の成長はそれぞれだ。


雪に年齢を尋ねたが覚えていないと言った。

この寺には自分の出生が分からない様な子供が集まるので、凛太朗は悪い事を聞いてしまったと、バツが悪そうな顔をした。


雪はその顔を見て吹き出しながら、

「慣れない気の使い方をするもんじゃないですよ。」

と言った。


この男は常に誰に対しても敬語なのだ。

寺の子供達に対してもだ。


「それにしても、慣れない気の使い方をするもんじゃないとは失礼な奴だな。日頃どう言う目で俺を見てるんだ?」

心外そうに凛太朗は言う。


凛太朗は天真爛漫に育ち、行動の一つ一つが大雑把で細かいことを気にするタイプではないのは誰の目から見ても明らかだった。


そう思ってから、雪は吹き出してしまった。


なんで雪が笑っているのかは凛太朗には理解不能だった。


「ったく、本当にわけわからん男だぜ。」

凛太朗は呆れた様に言う。


普段はひょうひょうとしていて、憎たらしい時もあるが、雪が笑うとなんだかほっとして凛太朗は幸せな気分になるのであった。


雪も色々苦労して来た様で、頼れるところがこの寺しかないのだと言う。

伊織が言うには、三年前に伊織の父がどこからともなく連れて来たのだと言う。

伊織が仕事に出ている間は、寺の仕事や掃除・洗濯、子供の世話、勉強を教える事さえもした。


雪は学校へは通っていないが、"書"は見事なものだったし、どこで覚えたのか計算もとても早かった。

朝は子供達と一緒に書道の練習をするのが日課で、お寺から楽しそうな笑い声が響いた。


雪はいつもにこにことして、叱るときでさえも

「そんな事をしてはいけませんよ。」

と優しく諭すだけだった。


子供たちからも大変好かれていて、フェリシアも雪にべったりだったので、凛太朗は少し嫉妬していた。


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