4 かんころ餅と孤児
次の日、俺はあのお寺に行くべく駆け出していた。
雪はすっかり止んでいて、夕暮れ時で辺りは一面オレンジ色に染まっていた。
夕日に当たった黄金色の稲穂がさざめく。
父は仕事で朝から出かけていているが、戻って来るまでには帰ろうと思う。
お寺に着くと5人の子供達が焚き火を囲んでいた。
顔は純粋な日本人のそれとは違った感じの子が多かった。
伊織がこっちと手招きをする。
「かんころ餅焼いとるんよ。食べる?」
パチパチと焚き火が音を立てている。煙がこっちにきたので少しむせた。
「かんころ餅ぃ?ゴホッ」
むせながら返事をする。
「ほい!これ」
枝に引っ掛けて渡してくれた茶色い餅の様なものをハムハムすると、とっても甘くて美味しかった。
「なにこれ、すごく美味しい!」
目がついハートになってしまった。
甘いものには目がないのだ。
「これはかんころ餅と言って、サツマイモから出来とうとよ。美味しかろ?」
「うん、すっごくおいしいよ」
俺がそう言うと、伊織は嬉しそうに目を細めて笑った。
ふと見渡すと、異国風の少年少女たちはハムハムとかんころ餅を食べていた。
その中に、昨日の黒髪の少年はいなかったが、金髪の少女がいたので声をかけてみることにした。
「こんにちは、また会えたね?美味しい?」
隣に座って、妹に話しかけるのと同じ様に優しく声をかける。
少女はこくりと首を振ったが、かんころ餅一点を見つめるだけで反応が薄かった。
「ありゃ、元気ないね?」
俺は助けを求める様に伊織を見た。
「うん、フェリシアはちょっと色々あったとよね。」
と伊織が言う。
「フェリシアっていう名前なの?可愛い名前だねぇ。」
俺は懲りずに話しかけたが、フェリシアはプイッと俺の元から離れてしまった。
「ちょっと知らん子が苦手っちゃんね、気を悪くせんでね?」
「お、おう、大丈夫だ・・・。」
俺は内心ちょっと傷つきながら、引きつった笑顔を見せた。
どの子供達も俺に話しかけようともせず、フェリシアと同じく反応が薄かった。
とりあえず伊織と世間話をして、程なくして自宅へと帰ったのであった。
家に帰ると「おかえり」と父の声がしたが、
父は元気がなく、心ここにあらずの様子だった。
いつもの優しい笑顔がそこにはなく、胸がざわついたのを覚えている。
拙い文章を読んでくれてありがとうございます。
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