3 出会い
少年は雪の中、元気に外へ駆け出した。
小さい小道の坂を駆け上がると、広々とした田んぼと数件の家屋が見渡せる場所に出た。
田んぼ沿いを少し歩いていると林の中に石で出来た長い階段が見えた。
よし、ここを登ってみよう。
その間も雪はしんしんと降っており、石畳と木々の葉にうっすら雪化粧をほどこした。
しばらくすると大きな建物が見えて来た。
大きくて立派なお寺だった。
その広場にポツリと一人の少年が立っているのが見えた。
空を仰いで雪を眺めている様だった。
引き寄せられるように近づいて行く…。
雪の中の少年は長めの黒髪を後ろで結っていて、顔は白かった。
男…だよな?
雪の中に立つ姿がサマになっていると言うか、男にしては綺麗だと思ったのだ。
年齢は俺より少し上の15~6歳くらいだろうか。
そう思いながら凛太朗はさらに近づくと、その少年の瞳の色に驚かされた。
黄金色に緑が混じったような不思議な色をしていた。
目が合ってしまい、凛太朗は急に気まずさを覚えた。
お参りをするふりをしようと思い、とぼとぼと建物に近づくことにする。
すると、一人の少女が先ほどの少年の元へ駆け寄る姿を目の端でとらえた。
何気なく振り向くと、少女は妹と同じ8歳くらいだったのだが、髪は黄金色をしており目も青かった。
二人とも着物姿ではあるが、異国の者なのだろうか?
そういえば父さんに、長崎は異国と交流が盛んで多くの異人が住んでいたと聞いていた。
今は戦争でその大半は自国へ引き上げたと聞いていたけども、まだ残っているのだろう。
気をとり直しお参りをする。
お賽銭はないが…。
すると、お寺の回廊から袴姿のすらりとした長身の女性が現れ、異人の子供に話しかけているのが見えた。
ほどなくして、その女性が俺に近づいて来るのが見えたので、俺はその女性を見て、軽く会釈をした。
女性も会釈して、朗らかに話しかけて来た。
「こんにちは、ここへはよく来るん?」
「いえ、この近くに今日引っ越して来たばかりで、ここはさっき偶然見つけたのです。」
「初めて見る顔やなと思っとったとよ。私はここのお寺に住んどるっちゃけど、白水伊織って言うっさね。ご近所さんならよろしくね。」
長崎弁に気圧されつつ、ふわりと笑う姿は、まだあどけなさが残っていると思った。
ぱっと見は大人の女性だと思ったが、齢16~18くらいだろうか。
彼女はまっすぐな長い黒髪で、いかにも日本人だという出で立ちだった。
長く真っ黒なまつげで縁取られた目の中に黒い瞳が煌めく美人さんだった。
「あっ、僕の名前は神山凛太朗です!今日お賽銭忘れたので、明日お賽銭持って参拝しに来て良いですか?」
愛想良くにっこり笑って見せる。
「ふふ、もちろん。明日学校の後ここに来て?いいもんあげるけん。」
「えっいいもんってなんだろ?じゃあ今日と同じ時間に来ます!」
〈俺、まだ学校に行けてないけど〉そう思いつつも元気に返事をした。
「うん、来て来て~。いいもんはいいもんったい。」
少女はいたずらにケラケラと笑う。
明日も会えると思うとなんだか嬉しくなった。
感じの良い人に会えて良かったと思った。
知らない土地に馴染めるかどうかがずっと心配だったのだ。
「じゃ!」
凛太朗はご機嫌に手を振り、その場を離れようとすると、異国風の少年と少女がこっちを見ていたので、ついでに二人にも手を振った。
妹と同じくらいの年齢の少女が可愛く思えたのだ。
金髪の少女は戸惑っていたが、黒髪の少年は軽く会釈をしたので少女もそれに習ってペコリと会釈をした。
その姿がすごく日本人ぽいと思ったのであった。
拙い文章を読んでくれてありがとうございます。
初めての執筆活動で、右も左もわかりませんので、
レビューやアドバイス、何でも良いので反応を頂けると有り難いです。