世に輝くもの
今日もまた日は昇り、朝が訪れる。
あの夜は僕にとってはそれなりに重要な日ではあったが日常はまるで変わることはなかった。
星が落ちてきた、となればそれは当然大ニュースになるだろうが結果としてそれは落ちてくることはなかったのだ。
あの瞬間、偶然にもあの川の近くを通っていた人がいれば、上空と地上を行ったり来たりしていた光の筋を目にしたかもしれない。
しかし、それらは時間にすれば一瞬のことできっと端から見た何も知らない人にとっては見間違いか何かとした思えない出来事だっただろう。
あの日の出来事と言えば予報通りの流星群が世間を少し賑わせたという程度のものだ。
あとは強いて言えば僕がほんの少しの擦り傷とあざをつくっただけである。
そんな出来事から一週間がたった。
「あれ、出かけるの?」
玄関で靴を履いていると後ろから姉に声をかけられた。
今日はバイトに行かないのだろうか。
いつもなら今頃姉も出かける準備をしているところだが今日はまだゆっくりとしていた。
「多分夜には帰ってくるよ」
靴ひもを結びながらそう答える。
「そうなんだ」
「昨日言わなかったっけ?」
「そうだっけー?」
「・・・なに?」
何やら不穏な姉についそう反応してしまった。
勘ぐられたくないのでなるべく素っ気なく答えていたつもりだったが失敗してしまった。
「女だね」
そして姉の観察眼には流石という他ない。
直球の言葉に吹き出しそうになってしまったが、下手にごまかすのもややこしくなりそうなので何も言わないでおく。
「そっかー葦人君もそういうお歳になったのねー」
「友達だよ」
「ま、いいんじゃないの」
姉は一人そう納得したようだった。
何かバカにされているようで癪だったがこらえて出かけようとすると
「葦人君さ」
そう、呼び止められたので振り返る。
僕を見つめる姉は何だかとても優しげであった。
「何か最近元気そうでよかったよ」
「そうかな」
「いいんじゃない?」
「・・・まあね」
何てことはない会話。
いつも食卓などで話しているようなことであるが、改めてそう言われると少しむずがゆいような気持になった。
「いってらっしゃい」
いってきます、と伝えてドアを開ける。
眩しい光が目に飛び込んできた。
*
これは正義の話だ。
――などと思ってもいたが果たしてそうだったのだろうか。
僕が僕なりの使命感らしきものを持って行動をしたのは事実ではあるが、それは”正義”などという大それたものでもなかったような気がする。
自分のことが知りたくて、
自分にできることが知りたかっただけの、何とも自分本位な話。
そうして、どうやら自分にもできるらしいことは見つかったがそう派手なものでもなく、ただぎりぎりで生きていくことができるだけのこと。
もう少しカッコいいものでも、とも思ったりもするが、しかしこれでいいのだろう。
多くの人や多くの何かを守ることは僕の手には余ってしまう。
僕と、僕の手でつかめる誰かだけでも守れればそれで僕には十分だった。
これから先、また同じことが起きた時に同じことが出来るかはわからない。
それでも同じことをしたいと思っている。
日差しの中に星が見える。
こうして街の中でその姿を見るのは思えば初めてだった。
僕に気が付いたのか、少女が小さく手を振っている。
思えば出会いや、これまで潜り抜けてきたことはそれなりに衝撃的だったがまだお互いに知らないことは多い。
時間がある限り、ゆっくりと話をしよう。
そういえばいつかどこかで宣伝がされていたのを思い出す。
今年は綺麗に見れるらしい。
――いつか夜には星を見に行こう。




