問題篇
「聞いてちょうだい、探偵さん。私、事件に巻き込まれたのよ」
マダム蘭子はお茶請けのマドレーヌを口に運びながら、そう切り出した。巻き込まれたという割には喜々とした声色だ。
「ほう、どんな事件でしょう」
「先週ね、高校時代に仲良しだった同級生と6人で長野の別荘に宿泊したの。事件が起きたのは滞在2日目の夜よ。同級生のひとりが意識不明に陥ったの」
「持病でもあったのですか」
「至って健康体よ。数時間前にみんなでバーベキューをしたときも、特に異常なし。寝室に戻って寛いでいたら、突然苦しみ出したみたいで。そのとき、彼女――あ、女性なんだけどね、彼女の部屋にはほかに誰もいなかったの」
「考えたくないことですが、バーベキューの際に何者かによって毒を盛られた可能性は?」
「そう、そこなのよ」マダム蘭子は食べかけのマドレーヌをじっと睨む。
「バーベキューでは、私たちみんな同じものを食べたわ。彼女だけ毒に当たるのは変よ。バーベキューの前に、誰かが食事に毒を仕込んでいるような不審な様子もなかったし」
「では、その女性だけが行った、何か特別な行動はありませんか」
「特には。部屋でアロマキャンドルを焚いていたことくらいかしら。キャンドルにピンクの花びらを閉じ込めたお洒落なものだったわ」
「ピンクの花びら……それは殺人事件の香りがしますね」
Q:マダム蘭子の話が殺人事件である根拠は?




