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明日への咆哮
街中に轟音が鳴り響く。
それは、投擲音、爆発音、その音源となる物を避けていく人々の、あるいは受けた人の悲鳴。
そして惨劇を生んだ、敵国への怨嗟の声、怒号。
灰と化していく生まれ育った街を見て、ある少年が一人、逃げもしないでその場に佇む。
その少年が抱きかかえるは、少年が愛した妹。
両手で優しく抱擁する少年、彼は片手で妹の頬を愛しそうに撫でる。
その顔、少年が撫でた側面は街一番の美少女と呼ばれた彼女の美貌を保っていたが
もう片方は焼けただれて、原型を留めていない。
見るからに痛々しい状況なのに、
当の本人は呻き声すらあげない。
彼女はもう、死んでいた。
彼女もまた、愛していた兄の腕の中で息を引き取った。
苦しかったはず、痛かったはず、怖かったはずだ。
なのに、彼女は最後まで笑っていた。
少年は、彼女の焼けただれた唇にそっと口付けをして、
何かを決心したように立ち上がる。
その歪な左手を、天に突き刺すように掲げた後
今日叫ばれたどんな悲鳴よりも
今日放たれたどんな怒号よりも
一線を画したけたたましい声で、少年はなにか叫んだ。
その日、人類は同じ過ちを繰り返した。