一人になる日1
この物語は完全なフィクションです
間違った知識、おかしな点がある場合はコメントにて指摘をお願いします。
季節は変わって世間ではもう夏になっている。
外では蝉の鳴き声がうるさく鳴いて、ジリジリと日差しが暑くなっていた。
そんな蝉のの鳴き声で目を覚ました私は時計の針をみる。
5時43分
もうこの時間に起きるのにもなれてきちゃったな…
私はベッドで少しごろごろとして6時頃にリビングに向かった。
あいつももう起きてる頃だろうな…
そんな事を思ってリビングに向かうと謙治の様子がいつもと違っていた。荷物をまとめていたのである。
「あ、おはよう。」
「なにしてるの?」
「ちょっと用事でさ、3日位顔見せらんないんだ。ご飯とかはちゃんと用意出来てるからさ。」
突然の事だった。
「なんで…そんな急に、もっと早く言ってくれなかったの!?」
私は声を荒げて言ってしまった。
「ほんとごめん…。でも」
「言い訳なんて聞きたくない!!」
自分でも抑えられなかった。
この時私は謙治に執着してたんだと思う。
「悪い…でも絶対帰ってくるから」
私は返事をしなかった。そしてそのままベッドに逃げ帰るように走っていく。
あいつにも事情があること位わかってる。今まで一緒に居てくれたこと事態が奇跡みたいなものだってことも…でももっと早くに言ってほしかったし詳しくも話してほしかったのに…
そんなどうしようもない感情が溢れだしそうでどうにかなってしまいそうだった。
「じゃあ…行ってくる。」
そう言い残して謙治は家を出ていった。その声にはいつもの元気はなかった。
謙治が出ていったあと、リビングに向かい冷蔵庫をみると今日の分の朝昼晩ご飯が入っていた。
そしてメモが一つ一つの料理のラップの上に張ってあった。
なんだろ?
料理名をわざわざ張っているのか?何のために?
そう思い一皿取ってみると
"昼用:桜えびとレタスのチャーハン。レンジで温めて食べろよ"
と書いてあった。もう一皿の方は
"朝用:きなこバナナヨーグルト。よく混ぜて食べてくれ"
最後の一皿には
"夜用:豚ニラモヤシ炒め。肉食べたいだろうからこれね。でもご飯は炊飯器の中のさんま炊き込みご飯を食べるように"
と書かれてあった。
なんだよあいつ…ほんとお節介…また魚使ってるし…
私は朝用の皿を手にとり、食器棚でスプーンをとった。そのガラスに反射していた私は微笑んでいた。
朝用を食べ終わり、部屋でごろごろする。
静かだ…誰もいない…元々一人暮らしだからそうだけど、でも急に一人になると寂しい。
ふとさっきの事を思い出す。
強く言い過ぎちゃったな…あいつは私のために色々してくれてるのに…あいつ…愛想つかして帰ってこないかも…
そんな不安が次第に強くなる。
不安は徐々に膨れ上がり私はリビングで丸まるようにちいさくなる。
あいつがいなくなっただけでこれか…動くきすらおきないんだもんな…
一人でいるのがこんなに辛いように感じたことこれまでなかった。
明日からずっとこれか…ご飯も作んなきゃな…
気が付くとお昼になっていた。
ああ、寝ちゃってたのか。
私は携帯の電源をいれる。すると謙治からメールが来ていた。開くと
"朝はほんとごめん。お前の事だから強く言い過ぎたとか思ってそうだから言うけど悪いのは俺の方だから。だからあんま気にすんな。帰るまで待っててくれ。"
と書いてあった。
なんだよあいつ……全部お見通しじゃん……
泣きそうになる。不安が少しずつ減っていくのがわかった。
私は"待ってる"とだけ返信し昼御飯を食べた。
夏になったからか7時になってもまだ外は明るかった。
あのあと少し外を散歩し体を動かすことができた。ほんの少し動いただけで疲労を感じてしまっていた。
ほんとに治るのかな…これ…
それから家に帰り、少し寝て今に至る。
ご飯食べて横になろ…
私は冷蔵庫から夜用のものと炊き込みご飯をよそって食べた。
どうつくったらこんなに美味しくなるんだよ…
そんな事を考えながら晩御飯を食べてしまい、食器を流しにいれる。
洗うの明日にしよ…
流しはそのまま放置して私は携帯を手に取る。
するとまた謙治からメールが来ていた。
"ありがとう。そうそう戸棚に食後用にハーブティー買ってあるからお湯沸かせるなら飲んでみな。落ち着いてよく寝れるかもよ"
至れり尽くせりかよ…
私は戸棚を開けてみる。ほんとに入っていた。
私はメールで"ありがとう"とだけ送った。
あいつ…ほんとなんでこんなにしてくれるんだ…?そもそもなんで分かったように準備したりして…
そんな疑問が頭に浮かんできた。
しかし、ハーブティーの香りでそんな疑問が薄れていく。気持ちが落ち着いていくようだった。
私はハーブティーを飲むとすぐに寝ることができた。