逃げ道
この物語はフィクションです
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うつ病と言われてから1ヶ月がたとうとしていた。謙治は今でも私の家にいる。ただ徐々に顔をあわせる頻度が減っていっているような気がしていた。その事を言う度に謙治はちょっと用事がとか仕事がとかではぐらかしていくる。
それでもはじめの頃よりは私自身は良くなってきていると思う。そう思いたかった。
つい最近職場に復帰した。つい一週間前の事だ。私が働いている所はIT系の会社でうつ病になった私のことを気遣ってくれている人も多かった。
しかし久しぶりに働いただけあって分からないことも増えていた。周りは気を使って色々してくれた。でもどこかで何か言われてるんじゃないかと思うと誰も信じれなくなってしまっていく自分が分かってしまう。
異変があったのは復帰して6日後の事だった。帰り、夕焼けが綺麗な筈だったのにどこか曇っている。帰路への足取りが重たい。明日が何日なのかも分からない。ここに何を買いに来たんだっけ?
そんな事がありまた職場を休むことになったのだ。
治ったと思ったんだ。そんな希望が砂のようのさらさらと消えていく。
辛い…消えたい…もうこんな思いをするくらいなら死んだ方がマシなんじゃないか…そんな考えがだんだん強くなってくる。
私が死んだって誰も悲しまないし、この苦しみから早く解放されたい…そんな事を考えていたら朝の4時に目が覚めてしまった。
眠れない…最近はずっとこうだ…
何度か屋上にのぼり飛び降りることも考えた。でも怖い…死ぬ事に対しての勇気もわかないなんて…
惨めな自分に泣きそうになる。
気が付くと私はキッチンで包丁を持っていた。
やっぱり痛いのかな…痛いんだろうな…でもこの痛みに耐えれば楽になれるんだろうな…
そう思い無意識に私は包丁の切っ先を首もとに向けていた。
その時
「何やってんだよ!!」
大きな怒鳴り声が聞こえてきた。その声は今まで聞いたことがないほど大きく、そして悲痛に満ちた声だった。
私は驚いて包丁を床に落とした。
謙治は私の側まで寄ると私の頬を叩いた。
「お前今何しようとした!!」
「……………死のうと…」
それ以上声がでなかった。
「バカ野郎!!死ぬ事で楽になろうとなんて思ってんじゃねえよ!!」
それを聞いた私はどうしていいのかわからずただ感情をぶつけるしかなかった。
「私がどんなに辛いかも知らないくせに!!役立たずな私なんていなくなったって誰も困らないんだ!!謙治だって私の面倒みないでよくなるんだよ?こんな私なんて生きる価値なんて…!!」
言い切る前にまた頬を叩かれた。そして強く抱き締められた。
「俺はここに居たくているんだ!!面倒見たくて見てんだよ!!いなくなったって誰も困らないだと?ふざけんなよ!!こんなに近くにいるのに分からないのかよ!!もう2度と生きる価値なんてないなんて言わせないからな!!お前が治るまで何度だって止めてやる!!覚悟しとけよ!!」
そう言う謙治の顔は暗くて分からなかったが抱き締めてくる体と声は震えていた。
「なんなのよ……ほっといてよ……」
私は静かに謙治を抱き締め静かに泣いた。
「バカ…ほっとけないから一緒にいるんだろうが…」
そう言って謙治も静かに泣いていた。
どうやら私にはこの病気と向き合うしかないみたいだ。そう思い知らされ私はいつの間にか寝てしまっていたようだ。
気がついたのはその日の11時前だった。
この頃から私は徐々に悪化していったんだ。
そして一番謙治の存在に救われた時期でもあったんだ。