ラブコメ馬鹿にボッチの決意を添えて!15
「皆さん、ご迷惑をお掛けしました。私事ではあったのですが用事が済みましたので、今日から私も練習に参加させて頂きます」
土日空け、つまり月曜日の放課後。
いつも通り劇の練習を始めようというとき、そこにはここ最近まともに姿を見ていなかった、凍てついた瞳を有する少女の姿があった。
「ごめんなさいね、倉科さん。でも安心して。台本は全て暗記してあるから」
正直このまま参加しないのではないかと思っていた。
あんなことを突然、しかも理由もなしに言ったのである。仮にそうなったとしたら、自分がクラスメイトに詫びる覚悟もしていた。
しかし、彼女は来た。
理由は分からない。性格上、与えられた役割を放棄することを単に嫌っただけかもしれない。
しかしそれでも、また放課後にこうして雪丘世那を含む国家促進部のメンバーが揃った状況に、なぜか一斗は安堵に似た気持ちを覚えた。
「え、もう覚えたの?まだ1週間はあるのに全部?」
「むしろこの時期に暗記くらいしてないと役作りに専念できないわ」
一斗は思わず、付箋をほぼ全ページに貼っている台本を彼女から見えない位置に隠した。
「そ、それもそうだね。じゃ、早速練習しようか」
「あ、ちょっと待って由来」
「どうかしたの莉奈?」
「うん、あのね、確かにせなっち台本暗記してるから、内容もセリフもバッチリなんだけど…ほら、実践は初めてだから。最初は個別で慣らしてから、全体的に通した方が良いかなって」
ナイスだ明宮!と、オレの素直な心が折れ叫ぶ。
あの日、オレが退部を告げてから雪丘と顔を合わせるのは初めてだ。
それがいきなり劇の練習…ヘタレな自分にはあまりにもヘビーだった。
「うーん、でも…」
「由来、莉奈の言うことは一理あると思うよ。まだ時間はあるんだし、まずは劇に慣れるべきじゃないかな?僕も鏑木くんと2人で練習したい場面があるし」
え、そんなシーンあるか?
「まぁ、雅樹がそう言うなら」
そんなこんなで、ヒロイン役の世那、莉奈、和水、華絵、恋、都華咲は6人だけで練習を始めた。
そしてなぜか一斗は立岡雅樹と2人だけで練習をすることに。
「そんなに2人で練習するのは嫌かい?」
「別にそんなこと言ってねーだろ」
「顔が言ってるよ。あの6人ばかり見て、やけに不機嫌そうだ。仲間外れにでもされた気分とか?」
「ねーよ」
自分でも知らないうちにそんな顔をしていたのか。
一体なぜ?
「君が関係しているのか?」
「あ、何にだよ? それより練習するんじゃなかったのかよ」
「たまに君は言葉遣いが少し荒くなるね。練習は、ただの口実さ。彼女が練習に参加するようになったのは、君が関係しているのかなって聞いてみたかったんだ。ただのミーハーさ」
「オレは何もしてない。勝手に気が向いて来たんだろ」
しかしそれにしては、やけに雪丘以外の5人の受け入れが早い気がする。まるでその前から来ることが分かっていたかのように。
「じゃあ…」
「まだあんのか」
「もともと彼女が練習に参加していなかったのは、君の影響かな?」
「………」
「もちろん黙秘権はアリだ。正当な人権だからね」
「知らん。だが、もしかしたら、そうなるきっかけの1つにはなったかもな」
「あくまでも彼女の意思だということか」
「そんな言い方はしてないだろ」
「でも側から見たらそう見えてしまう」
「だったら?」
「君はたぶん、正しいんだろう。でもそれだけが正解とは限らない」
「相変わらずな言い回しだな。バカにも分かりやすく説明してくれるとありがたいんだが」
「言うまでもなく、本当は分かっているんじゃないか?まぁ強いて言うなら、これは現代文の問題と似ている。決して数学のように答えが1つじゃないってことだよ」
「余計に分かりにくくしやがって…。逆に教えておくが、数学だって答えは1つだが、そこに辿り着く方法は1つとは限らない」
言われっぱなしのような気がして、ついついキャラでもなく下手な比喩を使ってしまった。




