番外編 あの日の公園にヒーローを添えて!中編
「いきなり呼び出したわりには、困ってなさそうですけど」
「まぁまぁ、そんな怒るなよ鏑木。取り敢えず座れって2人とも」
「別に怒ってないですけど…」
怒ってはいないが、険しい顔をしていると言われたら頷いていただろう。
だがその理由を聞かれたとしても、この場では答えられない。
「あっつーい。せんせーい、私にもなにか飲み物を…」
「悪いな明宮。この保健室にはコーヒーしかないんだ」
粒木の別荘に行って以来のことだ。
俺にはこの夏の暑さより困っていることがあった。
「……一斗くんも座れば?なんでいつまでも突っ立ってんの?」
「あ、すんません…」
思わず敬語になる。
「なんだお前ら、喧嘩でもしてんのか?」
赤木先生の問いかけには2人とも返事をしなかった。
それはそうだ、別に喧嘩をしているわけではない。
ただ別荘から帰って来てから明宮の俺に対する態度が明らかに変なのである。
幼馴染かつ家が隣ということがあり、彼女とは夏休みであろうとほぼ毎日のように顔を合わせる。
午前中。やることがなく散歩していれば犬の散歩をする彼女に。
お昼すぎ。妹の千花と自分の分の昼飯を買いにコンビニに向かえば、私服で遊びに行こうとする彼女に。
そして夜。明宮のことが好きな千花が夕飯に誘ったことで、食事を共にする彼女に。
しかしどの時も、明宮の態度が冷ややかなのである。
散歩をしているときにすれ違えば気付かれないフリをされ、コンビニ途中に鉢合わせると電話をしている風を装い、夕飯時には千花としか話をしない。
「ま、私には関係ないことだから何でも良いんだが。それよりそろそろ本題に入ろう」
ドサッという鈍い音と共に机に置かれたのは、夥しい量の資料だった。
「なんですか、これ?」
「実はさ、この前大学の頃の知り合いからゼミの同窓会をやろうって話が出たんだが、面倒うなことに連絡係に任命されてしまってな。代わりに一銭も出さなくて良いって条件で安請け合いしたのが間違いだったよ。なんせ連絡先が見つからないから連絡のしようがないんだ」
「えっと…まさかとは思うんですけど…」
「悪いが2人とも、この紙束の中のどっかしらに、ゼミが一緒だったやつらの連絡先がメモしてある紙があるはずなんだ。社会人として1回引き受けた以上、放棄するわけにもいかんからな」
タダ酒目当ての話をされている時点で、社会人云々の語りは響かないのだが。
「社会人なら、ちゃんと自分の尻は自分で拭くべきなんじゃないですか?」
「そうしたいのは山々なんだが、私はこれから夕方まで会議なんだよ。報酬は弾むから期待しておいてくれ」
「いやあの、まだ引き受けるとはーー」
「あー、社会人は大変だな。皆んな夏休みなのに、こんな暑いのに働いて」
わざとらしく、棒読みでそんなことを言いながら先生は保健室を出て行った。
どちらかが彼女を追い掛けるわけでもなく、2人は仕方なく、紙の山を上から順番に調べていくことにした。




