ラブコメ馬鹿に予期せぬ一面を添えて! 3
ふと、アンニュイな雰囲気で他の女子陣を見つめる雪丘の表情が、少し幼く、そしていつもとは違う意味で冷えきった目つきをしているように見えた。
なんだか髪の色も茶色く見え、俺は疲れているのかなと、目を閉じて眉間を強めに押さえてみる。
なんだ、日が当たってたからか…。
再び目を開けると、明宮が無理やり雪丘を会話に参加させようとして駆け寄っているところだった。
表情の変化は日の陰りの具合のせいで、髪が茶色く見えたのも、元となる原因は同じだろう。
さて、と。
俺は盛り上がる女子たちに気付かれないように支度を整え、こっそりと後方のドアから部室を後にすることにした。
なぜって?
ラブコメ漫画を何冊も読まされた俺の推測にはなるが、恐らくこのままいくと、非常に心休まらない場面へと連れて行かされる可能性が浮上したからだ。
「賛成っ。それじゃあ早速片付けて出発しよう!」
ドンッ。
明宮から発せられた『出発』という単語に必要以上に反応してしまった俺は、ビクつきのせいでつま先を扉に強打してしまった。
そしてこれにより、静かにランナウェイ作戦は失敗を告げた。
「もうっ、一斗様ったら。準備が早いですわね」
「い、いや、これはそういうわけじゃ……」
俺は懸命に、しどろもどろな説明を繰り返す。
「そんなに気になるの?」
「その質問絶対わざとだろ柳本さんっ。それどっちに転んでも何か言われるだろ!」
「じゃあ私のは一斗君に選ばせてあげるね!」
「なんだよその不要な気遣いっ」
「そ、その私…男性の方とそういうところに行くのは初めてで…お手柔らかにお願い致します」
「(都華咲さん……。天然なんだろうけど、その言い方はマズイよ…)」
「わたし、じつはきやせしてるからすんごいよ」
「興味ねーよ!」
「女の子の水着姿が見たくて誰よりも早く支度を終えてるなんて……お店に着く前に交番に突き出してあげた方が良いんじゃないかしら」
「………」
誰も望んでいないのに、雪丘は締めくくりとして一番誤解されたくないことを平然と言葉にしてしまった。
そう、ラブコメで夏休みイベントとして定番なのはプールや海。
そしてそこに絡むのは当然水着。
となると必然的に水着を選ぶ回が挟まれるわけで、俺はあのいたたまれない状況に身を置きたくなくて先に帰ろうとしていたのである。
しかし残念ながら作戦は失敗、尚且つスケベのレッテルを貼られそうな誤解を伴うこととなり、状況は刻々と悪化する一方だ。
奇しくもここはラブコメを追求する部活である。
こうなることは最早運命だったと受け入れるしかないのだろうか。
「ところでさ、ここら辺だと、どこに買いに行くのが良いのかな」
柳本さんは気を遣ってくれたのだろうか。
話を元に戻そうとする、さり気ない一言である。
彼女がこちらに向けてきたウィンクは意味深だったが、恐らく『貸しだ』という合図だ。
「あ、それなら…」
何かを思いついたのは明宮だった。




