イチノスケ・タカシマ-01-
一之助は今日の開店準備をしていた
店内の清掃から始まり、その日の仕込みをしながら開店時間を待つ。
店の名前はハインド。
昼は飲食店、夜は酒屋、特定の人のみだが、泊まれる施設もある、この街では人気の店だった。
「今日も早いな、イチノスケ」
階段を降りてきたのは冒険者の1人だった。
「ああ、おはようさん。今日も頼んだぞ」
そう言ってカウンターにパンとサラダ、スープを並べた。
冒険者が待っていましたとでも言わんばかりにパンを頬張っていた。
「おっはよー!イチノスケ!今日もいい天気だねー!」
「階段で転ばないように気を付けてくださいね」
「大丈夫だってこのくらい!子供じゃないんだからー!」
賑やかな声と共にさらに男女が降りてきた。
一之助はさらにカウンターに食事を並べる。
「今日もおいしそう!イチノスケは料理が上手だよね」
「いつもありがとうございます。イチノスケさん」
「こっちこそいつもありがとうな。3人のお陰でいつも助かってるよ」
他愛のない会話をして、3人は上に戻って行く。
一之助は後片付けをしながら、自分も軽く朝食をとる
(昨日は大変だったなあ。あのあと3人が帰ってきて、片付けを手伝ってもらったし、何かお礼をしないとな。)
開店準備が終わるころに、3人が下りてきた。
リーダーは大剣。女性は弓、男性は杖を持っている。
近距離、遠距離、援護の理想的なバランスのパーティだ。
3人の胸元には冒険者の証であるプレートが輝いている。
リーダーは銅級、他2人は石級
駆け出しの2人をリーダーが経験でカバーしている感じなのだろう
「イチノスケ、準備できたぞ。今日のリストをくれ」
「ああ、今日のはこれだ。金はあとで渡す」
そういって冒険者のリーダーに紙を渡す。
そこには肉や魚、調味料などが書かれていた。
「いつも通り、調達の方法は任せるからよろしくな」
「ああ、じゃあ行ってくる」
リーダーに付いてあとの2人も店から出ていく
ひとり店に残された一之助は開店まで時間があることを確認し、店の奥に入った
「まだ開店まで時間はあるし俺も少し出てくるか」
店の奥にある自室に入り、比較的軽装で装備を整えた。
もちろん、顔は隠してある。
あとあと面倒な事に巻き込まれたくないからだ。
「今日は・・・弓でいくか」
弓矢を装備して、店の裏口から出る
その胸元には銀級のプレートが輝いていた。




