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これは小さな恋物語  作者: ココココ
第一章:遊戯の章
6/64

6.楽しいお出かけ

色々あって先週は投稿できなかったので、今週は二回更新となります

ブラウニーが食べたい。 

自力で作って食べたい。 

焼きたてにホイップクリームとイチゴをたっぷり乗せて、ガツンとくる甘さを心行くまで堪能したい。 多分吐きそうになるだろうがそれも一興。


久しぶりに手作り欲が出てきてしまった。 でもキットなんて買い置きしてないし、本格的に作るには材料が微妙に無い。 卵とか小麦粉、牛乳は厨房のを貰えばいいけど、無糖のココアパウダーなんて普段使わないから置いてないのよね。 市販の物は手作りしたいからそもそも論外。 

ではどうする? 買いに行くしかない。 そのためのお金は?

そりゃユウリさんにおねだりしにいくしかないだろう。 ポケットマネーなんて持ってないもの。 



運動も兼ねて、五階まで階段で上がる。 少し息が上がるなぁ、最近サボってたし、またなんか始めるか。 先日連れ込まれた仕事部屋の扉まで己の足で歩いていく。 持主様の物である証、八片の花弁がわかりやすく大きく、しかしあまり主張しすぎないような色使いで彫られているそれが目的の場所だ。

「失礼しまーす」 いつものようにノックせず開けた。

『どうした』 ユウリさんは居たけど、持主様も居られた。 

ソファに座ってタブレットを眺めつつ、お体にまとわりついている凄くでかい三つ目のムカデを撫でてらっしゃる。 そのムカデと目が合った。

「失礼しましたー」 全力で閉めた。 しかしやはり高級な扉。 ほぼ音がしなかった。

『こら』

さすがに怒られた。

『戻らせるから入ってこい』

たっぷり十秒待ってから恐る恐る扉を開けて、隙間から覗く。 もう居ないよね?

『まだ慣れんか』

「一生無理です」 最初に見た時の状況もあるけど、そもそも生理的に無理。 部屋に入って後ろ手に閉めた。 一瞬だけ部屋を見渡すも、どこにも居なかったので最低でも隠れては居るんだろう。 見えなきゃそれでいい。

『で、なんだ』 手招きされたので寄っていく。 横ではなく足元に膝をついて、お膝にしなだれかかった。 どうだ、この小悪魔的おねだり。 片眉が上がった。 今は男だし蹴られるかな?

簡潔にさっき思いついた事を全部話した。 「なのでお小遣いくださいにゃーん」 もちろん完成品の献上はしますよ?

『急にどうした』 予測に反して撫でられた。 男の時は基本的に鬼畜対応なのに、珍しい。 

「先日可愛く媚びてみろと仰られたじゃないですか。 なのでやってみました」 キリッ。

『……まあいいだろう。 ほら』 呆れた顔をされつつシックな財布を丸ごと渡された。 また新しいのに変わっているけれど、表面に彫られている花は健在だ。 こういう所は拘られない方だし、ユウリさんの趣味だと思っている。

無言でお顔を見あげる。

『そのまま持っていけ』

「ええ……」 面倒くさがりにも程があるでしょう。

『他に何かあるか?』

「ないです」

『そうか、気を付けて行け』

「はい、では失礼します。 ユウリさんまたねー」 手を振った。

「ああ、またね」


部屋に帰って準備する。 そろそろ結構寒くなって来てて、防寒具なしじゃ歩けなくなってきた。 昏い緑色のセーターにスカーフを巻いて、肩掛けバッグに借りた財布を入れる。 結び目の形を整えて、完成。 特になんの問題もなく一番近い勝手口から出ようとしたら、予測通りジェーンと予測に反してナサニエルさんが待っていた。 手で挨拶しあう。 

「珍しいですね」 美少女が腹にアタックしてきたので撫でつつ聞く。

「いやー、ジェーンが出てこうとしてるから聞いたらさ、お前と買い物行くって言うじゃん? あたしが荷物持ちしてやろうと思ってさ!」 第七位ナサニエル。 仕事嫌いの長髪女子、能力はあるのに反抗しまくりのサボり魔。 そんな彼女がばさぁとさらっさらのそれを翻して演説をぶちあげる。 この人はほんとにもう…。

「お酒は買いませんよ」

「ご主人サマから許可は貰ってるぜ!」 鋭い雰囲気の顔を跡形もなくとろけさせて喜んでいる。

『一缶だけな』 思わず顔をしかめて見上げたら、正定の言葉が降ってきた。 マジか。

「一缶だけならって言ってますけどね、貴女もうお酒やめましょうよ」 昨日も潰れてたと聞きましたよ、飲みすぎですよ。

「アクアヴィタエだから無理ー」

「横文字使っても毒は毒ですよ」 命の水だから、じゃねぇよ。

「ま、それはそれ、これはこれ」 ああ言えばこう言う。 「お前の監視もあるし二人居た方が何かと楽だろ。 もう世間は休み入ってるから人多いしなー」

「さすがにもう迷いませんよ」 二回目の後、携帯電話買ってもらったし。 地図アプリさん本当に有能。 

「いや誘拐防止」 ジェーン居るしいいじゃん。

「どちらも自力で帰ってきたでしょうに」

「まずついてくのがおかしいんだよ」

「助けてって言われて断れる盾役は居ませんよ?」

「普通は途中でおかしいと気づくんだYO」

「普通とか知りませんYO」

なぜかラップ調になった。

「ねぇー」 腕の中でつまらなさそうにしていたジェーンがさすがに文句を言い始めた。 「もう行こうよ! お腹空いたし」 ふくれてるのかわいい。

「あーそっかそろそろお昼か」 よしよし、良い子良い子。

「あたしいいとこ知ってるぜ! そこいこ!」

「「酒場?」」 ハモった。 

「ちげーよ」

違うらしい。


全く違った。

「最近できた人気の店なんだって! テフナから聞いたんだ」

「ナサニエルさん、こんなとこ来るんですか……」 値段も決して高くはない、若者向けかつ落ち着いた雰囲気のイタリアン。 失礼だけど、物凄く、意外だ。 今見てるメニューもオシャレで見やすい。 時間としては早めなんだけど、すでにほぼ満員。 確かに人気なんだろう。

「あたしだって花の22歳だぞ」

そういやそうだった。 そうか、今は私が一番年上なのか。

「なんだその顔」

「……大人の貫禄がにじみ出てらっしゃいますので、本当はとてもお若いのを忘れてました。 大変失礼いたしました」

「口車失敗してんぞー」

ですよね。 自分でも苦しいと思った。

「私ボロネーゼとオレンジジュースとチョコレートケーキー」 一人我関せずと選んでいたジェーンが言った。

「あー、じゃあ私はキノコのガーリッククリームとティラミスにしますか」 飲み物は水でいい。

「あたしはバーベキューチキンのサラダにするわ。 デザートいらないけどコーヒーは欲しいな」お酒大好きだから、普段の食事は健康的にしてるんだっけか。 腐っても切り込み隊長。

「あ、コーヒー良いですね」 頼むか。

「あんな苦いのよく飲めるよね」

「ジェーンはお子ちゃまだからなー」

ジェーンがナサニエルさんを睨みつけた。 だからからかわれるのにね。


気になるお味の方もかなり美味しかったのでチップを少し弾んで、会計を終えて外に出た。 二人が雪降るかなーなんて他愛もない話をしているのが聞こえてくる。 近づいていくとどちらも振り返ってくれた。 

「じゃ、次どこいく?」

「もう買い物して帰りましょうよ」 他の事する許可は貰ってないから、安全策で行きたい。

「私、お散歩したい」

「しましょう」 ジェーンが言うならそうしよう。 文句言われたらユウリさん直伝の土下座を披露してやる。

「おい」

「未成年と成人済みの差ですよ」

「同じ年下だろー」 指でつつかれる。

「お酒飲める人はもう対等に扱う主義なんですー。 で、どこか行きたいとこあるんです?」 まあ13、14歳ぐらいからほぼ一人前の扱いするけどね。 子ども扱いってする方も結構めんどくさいし。

「ああ、ちょっとこれを見てくれ」 ナチュラルにどこからか若い子向けの雑誌を取り出された。 「ここの近くにな、いーかんじのショッピングストリートがあるんだ。 んでな、最近新発売のこれとこれ」 一ページを見せられる。 確かにナサニエルさんに似合いそうかつ動きやすそうな服が載っていた。 プラス、可愛めのデザインと色だけど、ちらりと見せる大人っぽさが光ると煽り文句の服も一緒に指さされる。 「一目ぼれしてな! 買おうと思ってたんだー」

「あーいいですね、この二つ絶対似合いますよ」 センスいいなぁ。 ……得意げな顔にちょっと萌えてしまった。 不覚。

「ジェーンも新しい服欲しいだろー?」 

「欲しいけど……」 

「けど?」 なんかがっかりしてる顔だ。 なんだなんだ。

「お小遣い、少ないから、いい」 あー、買い食いしてるもんなぁ。 若くて成長がすさまじいし、あんなに食べてるのにほそっこい。 むしろもっと食べるべきだし、仕方ないよね。

「ヨルの財布でいいじゃん」

「せやせや」

「んーん、つまりご主人様のじゃん、別にいいよ」 

「んー」 丸ごと渡してきたのって、このためか。 「多分予見してたと思うよ、丸ごとお財布渡してきたし。 気にしなくて良いんじゃない?」 

「でも」

「てか服の1,2枚程度を気にするお方じゃないでしょ、ほら行こ行こ」 そもそも私は丸ごと持主様の管理下にあるから、持ち物も含めて全部あの方の物。 だから逆にお金もよほど変な物でない限り好きに使って良いと言われている。 持ち金がないのは単に一本化した方が楽だから、話し合って決めた。 

「そーだそーだ、どうしてもあれなら後で見せに行きゃいいんだし」

「あ、いいね! ファッションショーでもやるか!」

それはとてもお喜びになるだろう。 というかこんな事を気にするのなら、今頃私はここに居ない。 尚も渋る彼女の手をとってナサニエルさんの後を追った。


二人でキャッキャとはしゃいでる彼女達を見てるだけで、結構楽しい。 誰かが楽しそうにしているのを見るのは好きだ。

でも、少し居心地が悪い。 今の性別は男だし、ポジション的には私が荷物持ちに見えてるんだろう。 女性服エリアに居るとジロジロと、同情または同調、そして多少の邪魔くせぇんだよてめぇ的な目で眺められる。 私は二人よりずっと知名度低いからなぁ、パシリに使われてる信徒とかに見えているのだろうね。 というか本当に荷物持ちになってるよねこれ、トータル4袋全部を持っているもん。 だからなのか少し離れているといろんな人が話しかけてくる。 なんだ、カモに見えるのか?

「ヨルー、会計ー」

「はーい」 助かったけど、もはや財布そのものだ。 私に言ってくるという事は、ジェーンの服か。 なんか橙色のワンピースっぽい。 服の素材と質量からして冬用だろう。 落ち着いたデザインみたいだ。

「七千六百円になります」

「はい」 諸々を見るに、商品に似合った妥当な値段。 良い店だなここ。 

「楽しみにしとけよー? ちょー可愛いからな!」

「何言ってるんですか、ジェーンは存在自体が可愛いんですよ」 服はオマケ。

「ヨルこそ何言ってるのよぉ」 

「あはははは」 口尖らせて照れてるの凄い可愛い。 声が高くなってて動揺してるのが良くわかる。

「ありがとうございましたー」 店員さんも笑ってる。 

「ざいました」 袋を回収しつつお礼を言った。

「よっしゃ次だ!」

「もう帰りましょうや」 何軒回ったと思ってるんだ。 疲れたわ。

「「えー」」 そうか、これが世の中のお父さんの悲哀か。 「せめてこの通りは制覇しようよー」

「まだ半分も行ってないですよ、行きたいならお二人でどうぞ。 私どっかで待ってますから」 千円だけ抜いて財布をジェーンに渡した。

「じゃああそこのカフェが良いよ、全部美味しかったし」 斜め向かいのそこそこ大きいカフェを示される。 店内は照明を落としているらしく、昼下がりのこの時間でも中がほぼ見えない。

「ならそうします、できるだけ早く戻って来てくださいね」 制覇したんか。 若い子って凄い。

「「すぐに戻ってくるから!」」 

「はいはい」

これだとあと2-3時間は戻ってこないだろう。 寒さはあんまり好きじゃないし、ラッキー。 のんびりしてよう。 本持ってきといてよかった。


カフェオレとチョコレートのパウンドケーキを買って隅の席に座った。 入れ代わり立ち代わり、早いペースで人が入れ替わるとはいえラッキーだった。

こう仄暗い店内だと、人の見分けがつきにくい。 黄昏時だったか、だれそかれ。 生者と死者の境が曖昧になる時。 ここはそれと似ている。 適当に暇つぶししながら読んでいたら、向かいの席に誰かが座った。 誰だ?と見上げると、髪を短くして、服も今時のにした持主様が居らっしゃる。 多少認識阻害をかけてらっしゃるとはいえど、私の心臓の跳ねようを想像してほしい。 さっき思った事がフラグになったのか?!

「そう驚かんでもよかろうに」 声も普通の人間のそれだ。

「な、なんでいらっしゃったんです?」

「少し暇ができてなぁ」 気分転換ついでに様子を見に来たという事か。 とりあえず食いかけのパウンドケーキを差し出すと、受け取って食べてくれた。 「うん、悪くないなぁ」 お顔が綻ぶ。 こういう人間くさいところは少し可愛いと思う。

「ナサニエルさん一押しらしいですよここ」

「ああ、あいつが好きそうな所だ」

そうなんだ。 栞を挟んで本を閉じる。 静かな喧騒に飲み込まれながらカフェオレを飲んだ。 蜂蜜も砂糖も入れてないから、牛乳の甘味が仄かに漂っているだけ。 強い苦みの中にちりっと甘さがあるのが好きだ。 ケーキを返してもらって食べて、また一口。 強い甘味と油分がさらさらと流されていく。

手を出された。

カフェオレを手渡す。 今度はべたりとしたケーキの味だけフルに感じた。

「食物の趣味は悪くないなぁ、本当に」

「は、ってなんですかー」 なんで強調されたし。

「服のセンスはないだろう、目を離すとすぐ変になる。 毎日考える俺の身にもなれ」

「色を合わせればいいんでしょう? 知ってますしできますよそれぐらい」 というか、普通は人形ってそういう物でしょう。 自分の好みで飾り付けたり遊んだりする物じゃない?

「そこがまずおかしいんだ。 少しは勉強しろ」 カフェオレが帰ってきたから一口。 そのまま回し飲みしつつ回し食い……って言うのだろうか。 とりあえずシェアした。

「ほぼ引きこもってますし他人に見せる事もほぼないですもの、気にする必要性がないんですよ」

「俺は他人じゃないのか」

……そもそも他人とはなんぞや。 物理的には別の存在だし、生まれも育ちも違う。 けれど夫婦や友達は他人と言えるのか? 兄弟は? 親子は?

「黙るな」

怒られた。 「他人の定義ってなんですかね」

「そこからなのか……」 呆れられた。 「どうしてそう斜め上に行くんだ?」

「さあ」 そう生まれついたとしか言いようがない。 「でも、貴方様へのこの愛は本物ですよ?」 全力で最高の笑顔を振りまいてみる。

「ジゴロかお前は」 彼の方の表情は、もはや無だ。

「楽しんでやってるのは否定しません」 遊びでやってたら、いつの間にか本気で博愛気味になっていた。 でも後悔はしていない。 「というか、なんか今日優しいですね」 三回目だけど、私今男なのに。

「ああ……まあ」

あら、言いよどまれた。

「何かあったんです? 私に何かできますか?」

少し見つめられた。 「……いや、いい」

「そうですか」 そう言うのならそうなんだろう。 「必要とあらば、いつでも使って良いですからねー☆」 あえて若作りな笑顔で言う。 漫画ならきゃぴるん的な擬音がついている事だろう。

人形は主のために在るんですから、ケアだってするんですよ。

「……」

「なんで無言なんです?」 ウィンクがだめだったのだろうか。

両肘をついて顔を隠されたと思ったら、くっそ長いため息が漏れてきた。 心外だ。

「いや、うん、もう色々どうでもよくなった」

「心外だ」

鼻で笑いながら彼が立ち上がった。 「もう戻る」

「あれ、お帰りですか」

「少しと言ったろう。 昏くなる前に帰ってこい」

「はーい」 一瞥くれて立ち去った直後、店内の陰に隠れてすぐ見えなくなった。 そもそも本当になんで来たんだ?

本の続きを読むか。


二時間弱。 思ったよりは早かった。 けど。

「なんで五つも増えてるんですかねぇ」 全部私が持つ羽目になるというのに。

「つい」 つい、と言いながらも顔は満足そうなナサニエルさん。 

「ごめんなさい」 反省しつつも嬉しそうなジェーン。 かわいい。

ため息が漏れた。

「まあ、しょうがないですね。 満足しました?」

「「うん!」」 良いお返事だ。 こう言われちゃもう何も言えない。

「そうですか。 じゃあ、もう目的のお買い物して帰りましょうね」

「「はーい」」

途中のスーパーに寄ってから帰った。 一缶だけのはずを一セット買われかけた事以外は特に何も問題はなかった。 時間的にはもう夕食時なので、作るのは明日にしようか。


次の日の昼食直後、三人で私の部屋に集まった。 ジェーンのエプロンで仁王立ち姿がかわいい。 意外とナサニエルさんがこなれた主婦感あって驚いた。

卵、中力粉、ベーキングパウダー、バニラエッセンス、バター、イチゴとブルーベリーはくすねてきた。 ついでに調理器具も借りて来た。 砂糖と無糖ココアパウダーは昨日買ってきた物もあわせて自前の物がある。 ホイップクリームは買ってきた。 レシピはリリーさんの肩を叩いて貰ってきてある。 総量としては、小振りに切ったそれを10人が2つずつ食べれるぐらい。 食べたくない人が居たらその分私達の量が増える仕組みとなっている。

「全部あるよね?」

「ある」

「じゃあ始めるぞー」

「おーっ!」

「おー」 ジェーンの真似をして拳を突き上げた。

「ヨル声小さぁい!」

「私ももう年ですからねぇ」弱弱しい声で咳真似をしてみる。 「老人は労わってくださいな若人」

「それ言ったらヘルドはどうなんだよ」 

「あー、あの人多分吸血鬼かなんかですしカウントしなくて良いんじゃないです?」 眷属になる前から50代超えてるんだっけ? どう見ても30代なのにね。 今となっちゃ何歳なんだろうね、もう老いないからさらに剥離が進んでるしよくわかんないわ。

オーブンの予熱を開始しておく。 ボウルを二つ出して、粉類と溶かしバター含む液体類を個別に混ぜる。 ちなみに砂糖は液体類扱いだとどっかで聞いたので、なんとなくそれに従っている。 その勢いで粉類のボウルに液体類をそっとぶっかけ、小さなダマがそこかしこに残るぐらいまで優しく織り込んでいく。 それが完成すると、ベーキングシートを引いた二つのケーキパンに均等に流し込む。 終わる頃には予熱が終わってるという寸法だ。

オーブンを開けると、むわっと嫌じゃない熱気が顔を打った。 ハラハラしながら二人がオーブンに型を両方入れ終えるのを見届けると、さっさと扉を閉める。 これであと30分から40分ぐらい待てば完成だ。

「結構簡単なんだな」

「量りいらないし、混ぜるだけだからねー」 キットなら量る工程すらいらないから、まさに混ぜて焼くだけ。 しかももう少し高いのだと、美味しいのにグルテンフリーのが手軽に作れる奴が売っている。 世界の進歩というのは本当にめざましい。

「待ってる間何しよ?」

「地味に中途半端ですよねぇ」

「ゲームでもするか」

「モノポリありますよ」

「30分で終わらねぇだろ」

「そりゃそうか」

「イカやるー」

「そうしましょうか」

「いいな」

そうなった。


三人だからフェアじゃないんじゃないか、と思われるだろうが、私がゲーム下手だからつり合いは取れているのです。 なので二人がガチンコしてるのを横目に一人楽しく散歩塗りしてる所を外プレーヤーに倒されたり逆に倒したり。 かなり楽しかった。 ぴぴぴっとタイマーが聞こえて来たので、年下二人が頑張っているのを横目にキッチンに行く。 規定通り竹串が大体奇麗に出てきたので、調理は終わり。 型を取り出して、シートごと二つを取り出し適当な台の上に置く。 後は粗熱が取れるのを待つだけなので、またゲームに戻った。 

良い感じに時間がたったとこで、二人をたして仕上げと分配に入ろうか。


皆、喜んでくれるといいね。


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