担任
6年生の担任は…忙しい。ただでさえ行事が多い。修学旅行、卒業式、中学受験。
家庭訪問では中学受験について聞かれる事が多かった。
公立の中学は素行の悪い生徒が多くて不安だとか、
うちの娘は頭が悪いからお嬢様学校に入れて花嫁修業させたいとか、
学校の授業のレベルが低い、授業より家庭教師を雇って自宅で勉強させたい等
出席日数が少ないと、受験に不利ですよ…と言っておいた。
まあ、うちのクラスで受験して合格しそうなのはせいぜい5人ぐらい。
その5人全員が公立志望である。世の中そんなもんだな。
「雪之丞は中学受験しないのか?」と一応聞いてみる。
「そこまで勉強したくないです。兄だって公立で不都合感じてませんし」
雪之丞麗子…こいつには悪癖がある。
授業中にひたすら教師の癖を観察して、休み時間に披露するのだ。
面白いので授業が終わったらこっそりのぞいている。
時々、忘れ物をしたふりをして教室に戻った時の慌てた顔が更に面白い。
授業を聞くよりも、教師の観察に夢中な癖に成績は一番良い。解せぬ。
「先生、お願いがあります」
振り返ると、一条が廊下に立っていた。職員室で話を聞く事にする。
「修学旅行、キラちゃん、ランちゃんと一緒のグループは嫌です」
キラちゃんと言うのは、5年生で転入したあざと系美少女。
ランちゃんと言うのは、6年生で転入したお嬢様系美少女。一条の幼馴染らしい。
2人の一条争奪戦は、職員室でも話題になっている。
どちらが一条を落とすか、こっそり賭けている教師もいる。公には決して出来ないが。
一条にしてみれば、勝手によってきて、喧嘩を始める2人に迷惑をしているようだが。
さて、困った。
「2人からは、一条君と同じグループにしてほしいと言われてるんだが」
これは半分だけ本当。本当はこう言われた。
「キラと一条君を同じグループにして。ランちゃんと一緒のグループは嫌です」
「ランと一条君を同じグループにして。キラちゃんと一緒のグループは嫌です」
2人にはこう答えた。
「難しいなあ。希望は一つまでなら聞いてやる事も出来るが、二つは無理だ」
彼女たちは、悔しそうな顔をしてこう言った。
「キラと一条君を同じグループにしてください。」
「ランと一条君を同じグループにしてください。」
ここまで言われたらなるべく希望には沿わねばなるまい。
しかも、この2人の親は…結構うるさい。
教師は24時間、電話を受け付ける生き物だと思っている節がある。
コンビニか?
「一条、お前が犠牲になれば解決…」と言ってみる。
一条がじとっとした目で見返した。美少年の抗議の視線はなかなか痛い。
「犠牲者を2人にしよう。これでどうだ?」
修学旅行のグループ表に雪之丞麗子と書き加えると一条の目の色が変わった。
雪之丞にも修学旅行のグループ希望はあるか?とそれとなく聞くと、
「平和に女の子同士でキャッキャ話したいです」と言うので、残りのメンバーも決まった。
メンバーシップ力の高い男女二人を入れてやろう。
修学旅行で一条は雪之丞との距離を縮める事ができたらしい。
その後、一条の雪之丞へのアタックが続いた、大半は可愛らしいものであったが…
背中のブラの紐を引っ張る子供らしい、いたずらをした時には、こっぴどく叱っておいた。
まあ、肝心の雪之丞は「背中を触られると親の死に目に会えなくなる」言って、
一条の意図には全く気付いていなかった。
それ、どこの迷信だ?
本当は要視点で書きたいけど…難産でした。




