空手クラブ
両親の説得に成功し、最寄りの空手クラブに入った。
自慢の縦ロールロングヘア―をツインテールのお団子型にひっつめる。
白い空手着を着た私を見て、雪之丞麗子と気づく人はまずいないだろう。
空手クラブは走ることから始まる。
やっぱり脚力か、走るのは苦手だが。頑張ろう。
頑張れ、走るんだ私。見つけろ原石の男。初恋カモーン。
走る白ずくめの軍団を遠巻きに見ている人の中にクラスメイトが居た気もするけど、気にしない。
翌日、私は筋肉痛で寝込んだ。
兄が「本当にこれからも頑張るつもりなの?」と何度も聞いてきた。
不純な動機で私は頑張った。
今日も水筒に3倍に薄めたポカリスエットを詰めて練習に向かう。
成金の節約術ではなくってよ。
100人もいるのだ、1人ぐらいはいるだろう。
ヒロインハーレムに加わらない原石イケメン、カモーン!
出会いが無いまま、初恋もないまま時間が過ぎていく。
どうして?私、美少女、美少女、美少女なのに!
小4の2学期、クラス委員に指名された。
ヒーロー苛めをやめた事で評価が上がったらしい。
問題児だったのね。
授業もまじめに聞いてなかった自覚はある。
先生を観察して癖を覚えて、休み時間に披露して笑いを取ってた。
時々見つかって、めっちゃ怒られた。
そういえば原作でも、ヒロインが転入してきた時にクラス委員だった。
これも原作補正なのだろうか。
小4の1年間でヒーローは変わった。
背が伸びた、力もついてきたようだ。
カッコいいとクラスの女子に注目されるようになった。
今年のバレンタインはチョコ禁止令が出るかもなあ。
ヒーローと目が合った。ギッとにらまれる。
「いぢめない?」「いぢめないよ~」と脳内アテレコしてみる。
小5の春、ヒロインが転校してきた。