このショタが
ヒーローが、真剣な目をして私をみていた。
”なぜ苛めるか”と私に聞くか。ここはまじめに答えるか、ふざけて答えるか
本来の人と人との関係であれば、常に真剣になる必要があるのだろうが…
今の私は雪之丞麗子を演じているのだ。
「さあね、そんなの自分で考えなさいよ」と口の端を釣り上げて意地悪そうに言ってみる。
彼の眼が怒りに煌くのが見え、次の瞬間唇を奪われてた。
ショタにキスされた事に唖然とする。
少女漫画でヒーローがファーストキスじゃないと言ってたけど…
あのシーンは少女心に「えー」と思ったなあ。
最初に奪ったのは私だったのか。
「麗子ちゃんかわいそう」とクラスの女子が騒いでいる。
相手がブサイク上司ならぜひとも訴えたいところであるが、
こんなかわいい美少年。これって役得?そういう事だな。
大した事ではない、騒ぎを収める為に私は彼女たちにこういった。
「大したことではありませんわ。兄とおはようとお休みのキスを毎日していますもの」
「あのカッコいいお兄様?」とクラスの女子の雰囲気が浮き立つ。
嘘も方便という。
先生に注意してもらうよう言った方が良いのでは?と言われたので、
先生が怒った時のモノマネをコミカルにやってみた。ウケた。
釣り目の美人なのにコメディー要員にもなれる顔、さすがだ。
家に帰ったら兄に怒られた。
怒られたけどバスケの練習には付き合ってくれた。
その後もクラスの女子がしばらくキャイキャイ騒いでたけど、人の噂も75日という。
放置していたらいつの間にか話題にも上らなくなった。
ただ、弱いなりに相手を傷つける方法を人って考えるんだなあと思って、
それからヒーローを苛めるのを少し控えるようになった。
あまり卑屈キャラに育ててもね、この後やってくるヒロインがかわいそうだ。