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不死の魔王と不治の姫  作者: 言狐
第一章
9/21

魔王の勘違い

次は早く……

書きたかった……orz

ちょっと、気に食わなくて書き直したりしてたらこんな事に。


話は前回から直接続いておりますが、

魔王城に場面が切り替わりましたし、ここからほんとのスタート……とゆー考えもありまして章分けしましたー

 突如として、苦悶の表情で気を失った月姫を抱えて自室に戻ると、その小さな身体をベッドに横たえ、元々白い顔が更に色を無くしている事に舌打ちをした。


 〈プシュケ、今すぐ俺の部屋に来い!〉

 〈……魔王様?どうされたの?〉

 〈いいからさっさと来やがれ!〉

 〈んもぅ、今じゃないとダメなの?〉

 〈ダメだ〉

 〈はいはい、支度整えたらすぐに行くわ〉


 それでは間に合わない。

 浅く微かな呼吸で冷たい汗を流す姿に死神の影がちらつく。


 〈今すぐ、と言ってるのが、分からないのか!〉

 〈そんな事言われても──〉

 〈文句は俺の前で言え〉


 問答無用とばかりに、テレパシーの感覚を使って位置を掴むとそのまま引き寄せる。

 焦る気配を感じるが、知った事ではない。


 〈──え?ちょっと、ダ〉


 抉じ開けた空間から、引っ張り出した水妖が抗議の声をあげながら

 ベチャリ

 と絨毯に転がった。


「ひゃ!」

「さっさとこっちに来い」


 素っ裸で俯せに倒れた水妖の頭を

 ベチャリ

 と掴み上げてベッドに引き摺っていく。


「いいいたた!?痛いってバカちょ見えて痛いってば!」


 ギャーギャー喚くのをそのままに、掴んだ頭を無理矢理捻って月姫が見えるように向けてやる。


「診ろ」

「いたっ!今変な音鳴ったって!死んじゃ……あら?」


 青白い顔で苦しげに微かに息を吐く少女を見ると、さっきまでの抗議も忘れて自ら手を伸ばし、額にそっと添えた。

 ベチャリ

 と。


「この子、どうしたの?死んじゃうわよ?」

「……急に苦しみ出したと思ったらこの通りだ」

「で、私を呼んだと……」


 水に濡れた身体を、後ろに立つ魔王のマントをひっつかんで拭きながらじっと少女の様子を見る。


「何よコレ、全然水気が取れないじゃない……使えないわねー」

「水を吸い取ったらマントの意味が無いだろう」


 それもそうねと、軽く相槌を返しながら、改めて少女の額に手を添えて、魔力を緩く弛く血流に沿って流していく。


「…………ダメね、これは……」

「何がだ」

「この子、生まれつき……だと思うけど身体が弱すぎるんだわ、成長して大きくなった自分が支えきれないみたい」


 憐れみ、悼む沈んだ声で告げる水妖にそうかと一言返して、少し考える。


「……ねぇ、一応、発作を起こしてたのは、調整しておいてあげたわ。でも──」

「あぁ、分かっている。根本的には治せない。そういう事だな?」

「えぇ、心臓を取り替えでもしない限り、この子は長くないわよ」


 調整したといった通り、先程までの白かった顔色には赤みが出ていて、呼吸も穏やかに安定している。


「とりあえずさ」

「何だ」

「何か着るもの寄越しなさいっての!いつまで人の裸を見るつもり?」


 手で胸元などを隠しているが、隠しきれるものでもなく、扇情的な姿を晒したままだ。


「これを着ておけ」

「私がさっき使ったマントじゃない!」

「お前が着るような物はないからな。見えなければ大丈夫だろう?」

「そんな訳ないでしょ!このバカ!」


 そうは言いつつも、とりもなおさずマントを羽織って、前を手で閉じながら辺りにもう少しまともなものがないかと物色する。


「少し用事が出来た。後は任せる。ウニ達は使って構わん」

「はいはい、もう勝手にしなさいよー。後ウニ呼ばわりは止めたげなさいってば」


 ひらひらと手を振って再び帝国に向けて転移する。


「そのお前で濡らした所はちゃんと拭いとけよ?」

「私のせいじゃないでしょ!?」


  ※ ※ ※ ※


「……つまり、全て織り込み済みで俺の所に寄越したという事か?」

「そうだ」


 眉間に皺が寄るのを抑えきれない。

 内心は知らないが、表情は平静そのものだ。

 これが、皇帝としての顔なのかもしれないが、気に食わない。


「国を守る為とはいえ、正気とは思えんな」

「どうとでも言うがいい。魔王よ、そなたが自身を人よりも清廉であると、約定を違えぬと云うなら、月姫も丁重に遇するであろう」


 冷徹な物言いは、自制心の賜物なのかどうか。

 そんな事はどうでも良かった。

 親としてではなく、皇帝としての顔を優先すると、そう宣言しているに等しいのだから。


「幼子に重苦を科すのが皇帝の度量だとするなら度しがたいな」

「アレも成人の儀は済ませた一人の大人である。皇族の一翼を担う覚悟も、責務の重さも、承知の事だ」

「バカを言うな!あんなガキが、大人だ?言い張れば済むとでも抜かす気か!」


 我知らずに瞳を金色に染め上げて、怒りに沸騰する頭がくらくらとしたが、睨み付ける先で皇帝はそっと瞳を閉じて、溜め息をついた。


「本当の事だ。娘は、月姫は今年で十七だ。信じられぬと申すなら、何でも納得するまで調べて貰って構わぬ」

「………………」


 自身が男で、背は高い方であるとしても。

 胸元に頭が届かないような娘が、女だとしても、成人を済ませた大人?


 生け贄と伝えて、寄越されたのが小娘で、何も知らされてはいないだろうと思っていたのに、全て承知で捨て石だと割り切ってついてきた?


 何で、あんなにただの街並みに喜びを表した?

 分からない。


「……一つ、追加で願いを聞いてはくれないか」

「願いによるな。……随分と下では欲張られておるからな、安易に首肯はしかねる」


 苦笑を僅かに浮かべながらも不敵に笑ってみせる皇帝に、


「では──」



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