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宝物庫で略取

急に間が空いてしまいましてすみませんでしたー


おまたせしました。

また、魔王視点に……戻ってると言えなくもないです。

「さてと、この中から自由に持ち帰れるとなるとワクワクするものがあるな」


 地下に設けられた宝物庫に案内され、厳重な錠前を開けてもらい中に入ると、広い空間にところ狭しと様々な物が置かれていた。


「王よりの言伝てをお伝えさせて頂きます!」

「ん?」


 ふいに背後から声をかけられ、首だけ捻って続きを促す。


「宝物庫よりの持ち出しをすべて許可すると共に報告の必要は無し、とのことです!

 これは、魔王殿が手持ちの範囲で、と仰られた事を鑑みての采配となります!」


 脂汗を滲ませながら、役目を果たしに来たその兵士を何とはなしに眺めるが、伝え終えたはずなのに直立不動のまま動こうとしない。

 まだ何かあるのかと少し待つも変わらずで、どうしたものかと思ったが、


「王よりの配慮痛み入る。言伝ては確かに賜った」

「はっ、では、私はこれにて失礼させて頂きます!」


 一声かけてやると、やっと役目から解放されたと姿勢を緩めて、一礼してから去った。


「いや、ちょっとまて」


 去りたかった。

 明らかに緩慢な動作で振り向くが、声だけはしっかりとしている。


「はっ!何でしょうか」

「こいつらは、宝物庫の番だろ?」

「……は?」


 こいつら、と言いながら指し示したのは、確かに宝物庫の警備を担当している二人。


「そうであります!」


 思わず間抜けにも、ポカンと口を開けたままでいたが、目の前にいるのが誰なのか、そう思えばこそ、至極単純である問いには、至極単純に答える。


 ただ、それの確認だけであるはずがなかった。


 露骨に横を向く宝物庫の番その一。

 気まずそうに目を伏せる宝物庫の番その二。


 目の前に地獄の釜が蓋を開けているのが見えているのに、自身の意思だけで飛び込む事が急務だった。


「……何か、問題でもありましたでしょうか?」

「目録との照会要員が欲しくてな。さすがにこいつらを連れていったら、マズイだろ?」


 嗚呼、神よ!


 叫びたいのも、天を仰ぎたいのも、帰りたいという些細な願いすらも、届かないのは何故なのか。


「私で、宜しければ、お手伝い致しますが……」

「すまんな、宜しく頼む」


 気が変わっては大変だ、とばかりに、宝物庫に入ってすぐ横にある目録を取る為だけに駆け足になる宝物庫の番その一は歩いてくれても大差ない。


「今度飯を奢らせてくれ」


 魔王殿に聞かれない様にすまなそうに囁かれても、なんの慰めになろうか。


  ※ ※ ※ ※


 後ろを付いてくる兵士のどんよりとした空気に軽く苦笑を浮かべつつ、飾られた多くの武具を眺めながら奥へと進む。


 チラリと目を向けた先にあったのは、藍色の鮮やかな鎧、漏れ出る魔力の質からしてなかなかの一品ではあるが、足を止めようとは少しも思わなかった。

 鎧とか暑苦しい。


 そう。

 そういったものは端からあてにしていない。


 装飾の華麗な宝剣にも、優美な曲線も美しい戦斧にも、神木を依代にした霊杖にも。


「……よし、ここらへんのものを持てるだけではあるが、持っていこう」

「は?」


 慎ましやかな希望だ。

 手に持てるだけ。


 魔力の籠った宝石類に、加護の付いた宝具、リングにアミュレット、ネックレスも持てそうだ。


 俺は魔王として、一度口に出した言葉を違える事はあってはならないと考えている。


 正しいか否か。

 ではない。

 たとえ間違っていたとしても、それを押し通す。

 その程度も通せないのならば軽々しく口にするな。

 それが、矜持だ。


 だから、ネックレスもリングも、首や手指に通したりはしない。


 一方の手に乗せるには、当然、もう一方の手が必要だ。

 つまり、片手にしか持てない。


 わけがなかった。


 広げた両手に魔力を使って浮かせて乗せる。


 ひきつった顔をした兵士に向けて笑顔で言ってやる。


「行った通りに手に持てるだけ、確かに頂いた」

「………………」

「では、俺は挨拶も不要らしいからな、このまま一度帰らせて貰う。残りの土産は、支度が整い次第受け取りに来る」


 後の事は知らん。

 膨大な魔力を使って、居城に戻り、 形ばかりの賠償として持ってきた品を適当にしまうだけだ。



 宝物庫の管理をしていた官僚が、その日卒倒した。



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