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事の発端2

ヒロインが出てこないわけで(爆)

次に出る予定ですのでもうしばらくお待ち下さい。

恋愛ジャンルでヒロインが出てこないとか。

このままだとジャンル詐欺にっ!w

 その日、大帝国ソルヴィエールの帝都では、皇帝であるソルス二十世を筆頭に皆顔を強張らせていた。

 魔王自らが謁見の間に姿を見せたからだ。

 魔王の要求は一つ。


『魔族を刺激するな』


 誰も

 何も

 言えなかった。


 魔王は、先遣隊の一人を捕虜とし、残りを殲滅。

 続く本隊も同様に殲滅すると、総隊長の首と書状を捕虜に持たせて帰した。

 書状には短く

『謁見を申し入れる』

 とだけあり、それに眉を潜めた次の瞬間、謁見の間に魔王が現れたのだ。


「久しいな、ソルヴィエールの皇帝よ」


  ※ ※ ※ ※


 謁見の間にいる全てのものが等しくポカンとした表情でしばし突然現れた紅髪黒衣の男をみやっていたが、武官の一人が不審者であると気付くと皇帝と男の間に割って入った。


「ぶ、無礼なっ!陛下の御前ぞ!」

「無礼、だと?」


 皇帝に目を向けていた魔王は、間に飛び出してきた武官に視線をずらすとうろんげにそう問い返した。

 次第にざわつく周囲に構わず漆黒の瞳をすがめ怒気を発した。


「人界では、他の領域を侵犯する事は無礼に値しないとでも言うつもりか?」

「何だと?人界……?」

「控えろ、下郎。俺は今皇帝と話をする為にここにいる」

「っ!」


 突如何かに頭を押さえ付けられた様に膝を屈し、額を床面に擦り付けた状態で動けなくなった武官に興味は無くなった、とでも言う様に皇帝に視線を戻す。

 誰も、動けない。

 身体が、石になったかの様に。

 そんな中で魔王は尊大に胸を張り、


「さて、まずは俺への謝罪から頂こうか?」


 言った。


「ぬ……そなたが魔王だと申すのか」

「そうだ」

「だが、魔王の容姿は褐色の肌に、血の様な紅の髪、金色の瞳を持つと伝え聞く。そなたの瞳は漆黒であろう」

「なんだ、そんな事か」


 魔王が苦笑と共に二度、瞬きをすると、漆黒だった瞳は綺羅と金色に光った。


「コレは、俺にとって戦闘向けのスタイルなんでな、普段から使ってる訳じゃない。今日は話し合いに来たつもりだからな、戻させて貰うぜ」

「うむ。それで、話と言うのは……」

「そっちから吹っ掛けて来た戦争だろう?まさか知らなかったとは言わせないぜ」

「無論」


「なら話は早い。俺への謝罪と降伏を受け入れろ」


 途端に周囲から怒号が走った。

 バカな。

 あり得ない。

 だが、そんな声など聞こえないとばかりに嘲笑い、

 天井に手を向けると、ぐっと手を握った。


 それだけで天井が無くなった。


 どうだ?

 とばかりに回りに目をやると青褪めた表情で視線を逸らした。


「…………分かった。謝罪しよう」

「話が早くて助かるぜ」

「……この度は、我が帝国の行いにより、魔王領へ多大な迷惑をかけたことを心よりお詫び申す」

「受け入れよう」


 これで終わったのか?

 そう誰もが弛緩したが、これだけでは終わらなかった。


「じゃ、後は賠償だな」

「ば、賠償?」

「なんだ?人界の戦争だと、勝った方は負けた方から損害の埋め合わせが出来る、そんなシステムがあったろう?」

「埋め合わせ……」


 何と言っていいのか、金魚の様に口をパクパクさせながら必死に頭を巡らせた。

 今回の魔王領侵犯での損害。

 魔王サイドには、思い付かない。

 帝国は三万からの戦死者(?)が出たが、魔王サイドの人的被害は0だ。

 更に、魔王領に入ってすぐに殲滅された為に何かを破壊したなどもない。

 つまり、補填すべきモノがないのだ。


「魔王よ、我には、そなたらには大して損害と呼べるものが無い、と思うておるがどうか?」


 これは、何やら人界の戦争にかかる賠償や褒賞については聞きかじりと思われる魔王に対して、多少なりとも有利に働くのではないか。

 そう考え、さも困ったと言わんばかりの表情で魔王に問うた。


「……む、言われてみれば」


 魔王にしても、思い付いた事を言ってみただけだ。

 さて、どうしたものか。

 口から出した手前、己の矜持にかけて引っ込めるわけにはいかない。


「ふむ、ではそうだな、国と国ではなく俺一人への賠償としよう」

「魔王個人と、であるか」

「まず、二度とこの様な間違いが起きぬ様に王は己の子から贄を出せ。その者の命を預かる事で枷とさせて貰おう。あまりに無礼な者は俺の手が滑るかもしれんからな、よくよく考えろよ。いなくなれば替わりを出してもらう」

「…………っ」

「後は、そうだな、王の持つ宝物庫より何品か頂こう。何、無理は言わないさ。俺がこの手に持てる範囲だけでいい。但し、その中で一切の妥協はしない」


 絶大な力を持つ魔王からしてみれば、戯れ程度の内容であれど、自らの身内をわざわざ生け贄といって憚らない相手に委ねる事に躊躇しないワケがない。

 だが、王としての矜持が、冷徹に判断を下す。

 これは、ひとまずの時間稼ぎが出来る、と。

 宝物庫に手を付けられるのも痛くないわけではないが、魔王自らが手に持てるだけと言っている。


 ならば、これで手打ちならば、現状では仕方ないと言えるだろう。

 娘には、辛い事を告げねばならないが、これも帝国あっての事。

 政略結婚が、魔王の玩具へと変わった。

 それだけだ。


「……分かった。全て飲ませて貰おう」


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