早く攻略してくれないかな
私の名前はエリー。特異なのは料理、洗濯、家事、炊事くらい(同じ意味が二つあるけど)しかないどこにでもいる少女である。まあ、人より不愛想で感情表現が苦手なだけで特別なことなど何一つない、ただの18の小娘でしかない。
けれど、私はこんな若年でこの町、エクルーデ…その郊外で宿屋の主人をやっている。
え? どうして郊外で宿をやってるかって? それには事情がある。
それは、私の住んでいる宿の地下に、ダンジョンが…それも、国全体でも稀にみる超大型ダンジョンが存在しているからだ!
ダンジョンには、たくさんの財宝、作物、鉱山、薬草があり、このどれかのうち財宝と、三つのうち一つしか手に入らない。だが、私の家のダンジョンは驚異的なことにこの全てが取れるのである。そしてダンジョンには魔物が徘徊しており、極まれに魔物が入口から出てきて外の世界を徘徊することもあるのだが、うちのダンジョンの入口には何やら魔除けの結界が自動で張ってあるようで魔物も逃げ出すことはない。
それゆえに、発見された時は大騒ぎだった。
国の大臣がこの宿を寄越せと言ってきて私を追い出そうとしたが、その大臣は私を追い出すだけ追い出して新しい家の手配もせずに強引にしてきたのだ。だから私は断固拒否して裁判にまで訴えたのだ。そしたらどうやらその大臣の独断での行動であったのと、大臣のもとからの悪評があり裁判で大臣は負け、その地位を追われたのだ。しかし今度は今度で迷宮を管理する人物がいないという話になる。なので国王は私を宿屋の店主兼、迷宮管理人にすることで国家の費用も掛からず、そのダンジョンから得られる資材や素材を手に入れられるようになるはずであったが、ここで横やりを入れたのは冒険者ギルドである。
冒険者ギルドは文字通り冒険者にここのダンジョンを教え、そこから出る素材や何やらを流通させるのだがそれでは国家に一門も入らないのである。それでまた揉めに揉めて、結局冒険者にダンジョンの地図を定期的に渡すことと、取れた素材やらを国に流通させること、そしてギルドはこの宿に出張所を構えることで話がついた。出張所を置くことになんの意味があるか。それはギルドがダンジョンに入れる人材を絞ることができるからだ。ついでに、私の護衛である。
長々となったが、ここ、宿屋アルトークは宿屋兼ダンジョン管理事務者兼冒険者の店というなんとも意味不明な立ち位置になったのである。
それゆえ、来る客もまた、冒険者であったり国の騎士であったりするのだが…。
「…で、ダンジョンに行くの?それとも行かないの?」
「もーすこししたら」
「それはもう二時間前に聞いた」
そう、冒険者やらがくだを巻いてグダグダしてるだけでお金を払わないのが多いのである…。
「はあ…誰か…うちを攻略して…」