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 また、少女の困難は家の中だけではありませんでした。成長して、外へ出て仕事をするようになった先でも待っておりました。

 

真珠の涙を流す少女の話は、村中に広がっており、姉夫婦の羽振りのよさを知って、何とかおこぼれに預かれないかと、皆虎視眈々と狙っているのでした。

 

 流れる金髪も艶やかに、その頃既に美しい女性に成長していた少女でしたから、言い寄る男性は数多にものぼりました。ですが、その殆どは真珠を狙ったものでしたから、それを見通していた少女は、彼らを相手にすることはありませんでした。

 

 そのやっかみも含めてか、逆に女性は少女に大層意地悪でした。皆で畑に出て仕事をしていても、わざと仲間に入れないようにしてきたり、チクリと刺すような嫌みを言ってきたり、更には彼女の農具や持ち物を隠すという、子供じみたような真似までしてきたりと、涙を流させる目的もあって、底意地の悪い事をやってくるのでした。痛さに涙が流れるのを狙って、わざと目に入るよう土を投げる者までおりました。

 

 こんなふうに隙を見せれば意地悪をしてくるものでございますから、少女もたまらず涙を流すことしばしばで、そうなろうものなら、ここぞとばかり皆我先を争って、真珠の争奪が繰り広げられるのでありました。

 

 誰も彼もが真珠の事ばかりで、自分たちが酷いことをしているということに、思い至る者はありませんでした。欲に溺れて、少女の悲しみや苦しみをおもんばかるものは、殆どといっていい程いなかったのです。

 

 少女は思いました。自分が涙を流すから、人を騒がせてしまうのだと。そして誓いました。もう泣くのは止めようと……。

 

 少女はもう、悲しい話を聞いても、酷い意地悪をされても、泣くことはなくなりました。 姉夫婦にとって、泣かない少女に、何の価値がありましょうか、自分たちは世話をしてやっていると思っていましたから、涙を流すぐらいの恩返しは当然だと思っておりました。なのに、涙を堪えるという、恩を仇で返すような少女に、姉夫婦は憎々しささえ覚えるようになりました。

 

 そして姉夫婦が、そんな少女を重荷に感じ始めた頃、真珠の涙を流す不思議な少女の話は方々に知れ渡り、やがて、お城の方にまで耳に入ることとなりました。勿論そこの主である王にもその話は伝わりました。王は一度その不思議な少女を見てみたいものだと思い、姉夫婦のもとに使者を送りました。

 

 そして使者は姉夫婦のもとに到着しますと、こう申し上げました。

 

「王がその不思議な少女を見たがっておられる、城まで参られよ」と。

  

 使者の申し出は王の申し出です、勿論断れる訳がありません。涙を流さなくなった少女に一抹の不安を感じておりましたが、お城に行けるということは大層名誉なことでしたので、姉夫婦は喜んでその申し出を受けました。

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